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第5話
静寂が戻ったラブホテルの室内。
チェックアウトまでまだ時間はある。
今はただ、この幸せな余韻を噛みしめていた。
「どうしよ、めっちゃ幸せだ」
「……俺は腰が痛い」
「大丈夫?タクシー呼ぶ?」
「いらねぇよっ」
清人はベッドに腰掛け、薄い布団にくるまった柊をそのまま膝の上に抱きかかえていた。
柊だって身長はあるはずなのにすっぽりと収まった体は、どこか小さく頼りなく見える。
「……そろそろ離せ、暑苦しい」
「まだ離さない。……それより柊の答えは、俺と付き合うでいい?」
「なんで決めようとするんだよ、別に」
「このままなんて、絶対許さないよ。俺」
狼の威圧に、柊の身体がびくっと強張る。
強がっても無駄だ。あんなにも…今も、こんなにも初々しい反応をする柊が、誰かに抱かれたなんて到底思えない。
「なぁ、マチアプで相手探すとか嘘だよな?誰ともヤッてないでしょ?」
「…はぁ。当たり前だろ。 誰が……お前以外の奴に許すかよ…」
「!!」
耳は限界まで真っ赤に染まり、ぎゅっと伏せられていた。
うわっ…やばっ。柊って、めっちゃ俺の事好きじゃん!!
「はぁ。最悪だ…。お前、マジで性質が悪い」
噂通り。彼女をとっかえひっかえする、ヤリチンだったらまだマシだったのに―――。
離れたくてもずっと離れられなかった。
「どこまでも質が悪くて鈍い俺相手でも、こうして待ってくれてたのか」
「俺の愛情深さに自惚れんな」
「~~~っ、柊ぅ」
あまりの感動に息を呑んだ。
目の前の幼馴染はどれだけの長い時間、自分という鈍感なβの狼のために―――そのプライドも身体も、すべてを捧げて準備してくれていたのだろう。
愛おしいという言葉だけじゃ足りない。
「お願い、付き合うって言って!こんな経験しといてお前を手放すとか無理っ、絶対無理ッ」
「お前な……」
「付き合わないって言われても、毎日好きだって告白しに行くから!柊が居てくれるんなら二度と彼女も作らない!」
「俺は猫じゃねぇぞ」
「関係ない!柊がいい!それに、俺の事好きって言っただろ!?」
‥‥‥‥。
愛が重いのはどっちだ、と深い溜め息を吐く柊。
「……ああ、分かったよ、付き合う」
「柊!!」
「でも清人。浮気したら去勢してやるからな」
「しないしない!!」
二人でいられるなら、番なんて関係ない!!
「俺はβだけど…、柊に見合う男になるから。見てて」
「期待しといてやる」
柊の腰を抱く手にぐっと力を込めると、愛おしくてたまらないというように何度もキスを落とした。
(おわり)
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