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第1話 焼き付いた記憶*
町全体が、ざわめきに包まれていた。
人々が口々に噂するのは、一人の男の無惨な末路だ。
「勇者が死んだらしい」
「ああ、あの乱暴者が」
「弱ってたところを魔物に食い殺されたんだと。あっけないもんさ」
「へえ、こうなっちまうと可哀想な話ねぇ」
渦中の人物である勇者の死体は、教会の棺の中に一時的に安置されている。噂によると、棺の中を覗きに行くのが若者の間で度胸試しになっているらしい。何しろ勇者の肉体は、一目見れば夢にうなされるほど徹底的に損壊されているからだ。
人々はそれを、飢えた獣に襲われたからだと思っているが、実際は違う。
勇者は死んだ。娼婦に殺された。そしてそれが損壊されるように仕向けたのは他ならぬ俺なのだ。
「はぁ……」
これからのことを考え、俺は大きなため息をつく。
勇者パーティーは壊滅し、残るのは剣士の俺と『ヒーラー』だけ。
俺はあの時、夜の女に殺された勇者の死体をそのまま王都に持ち帰るわけにはいかないと判断し、ヒーラーとともに偽装工作を行った。
そして、その過程で俺は――
「俺は、なんであんなことを……」
死体を埋める共犯者であり、勇者による度重なる陵辱の被害者でもある青年。『ヒーラー』という呼び名しか持たない彼は、勇者を殺した真犯人だった。
動機は分からない。俺が聞かなかったからだ。ずっと虐げられてきた彼には、勇者を殺す理由がある。あえて問い詰めるまでのことでもないだろう。
俺は、ごく個人的な判断でそんな彼の罪を見逃し、支配から解き放とうとした。その結果、不幸な偶然が重なって、俺が深傷を負い、それで――
「はぁ……」
深いため息をつく。今でも目を閉じればハッキリと思い出せる。
正気を失ったヒーラーが俺の上に跨って妖艶に腰を振る姿。それが本意ではないと泣きじゃくる彼を宥めておきながら、結局、彼の体を好き放題に蹂躙してしまった光景。
『あっ、あぁっ♡ きもちいいっ♡ ころして♡ このままころしてっ♡』
全力で奥を穿たれてよがりながら、死を懇願していた彼。どれほど恐ろしい思いをさせてしまったのだろう。町に戻って一日が過ぎた今でもハッキリと彼の足や手首には俺の指の跡が残っていて、それが服の裾から見えるたびに、消えてしまいたくなるほどの罪悪感に襲われる。
「どうすれば、償えるんだ……」
服従の首輪という呪具が彼につけられている以上、彼が勇者パーティーの問題から距離を取ることはできない。
そもそも解除方法も知らずに、首輪の鍵となる短剣を軽率に渡してしまったからこんなことになったんだ。
短剣は回収し、自分が肌身離さず持ち歩いているが、これをどう使えば彼を解放できるのかは見当もつかない。
もっと考えて行動すればよかったのだ。いくら考えても結局はその結論に戻ってきて、俺は臓腑を吐き出しそうなほど大きなため息をまた吐き出す。
その時、俺の居る宿屋の一室の戸が、コンコンと控えめに叩かれた。
「アレクさま」
鈴の鳴るような可憐な声で呼びかけられ、反射的に股間が熱くなる、昨夜目にした痴態が頭から離れない。何度も俺の名を呼んで、気持ちよさそうに身をくねらせていた彼。その本人がドアの向こうで返事を待っているというだけで、俺の腹の奥に勝手に熱が集まってしまう。
本当に、俺は最低だ。生きてちゃいけない。でも、為すべき事を為さない内は、死ぬわけにもいかない。
「……アレクさま?」
「な……なんでもない! 入ってくれ」
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