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第10話 傷跡の発露*

 氷のように冷たい声色で返事をしたヒーラーに違和感を覚え、慌てて彼の顔を見る。彼はフラフラと立ち上がり、俺に背を向けて荷物の方へと歩き出していた。  その表情はうつろなもので、よく見覚えのあるその様子に俺は自分が何をしてしまったのか、一瞬で理解する。  これは、首輪に支配されている時のヒーラーだ。俺の発した言葉に反応して、服の下に入れていた短剣が誤作動してしまったのだ。  念のためにと肌身離さず持ち歩いていた判断が裏目に出てしまったことを悟り、俺は過去の自分を強く責める。  そんな俺の後悔をよそに、ヒーラーは操られた人形のような動きで、荷物の前へと辿り着くと、その中から淫猥な道具を取り出した。  勇者の私物を確認した時にも目にしたが、直視できなくて見て見ぬふりをしたそれらを手にした彼は、俺の前に戻ってくると、床に膝を突いて俺に向かって平伏した。 「今から……自慰を、させていただき、ます……情けなく、腰を振って……乱れ狂う淫乱の、姿を……どうぞ、ご覧くださ、い……」  彼自身の意思ではない。本能による言葉でもない。これは、勇者によって教え込まれた下劣な挨拶だ。  息をするのも忘れて、俺はそんな彼を見下ろす。挨拶を終え、顔を上げた彼の目に正気の光が宿っていないことが、唯一の救いだった。  ヒーラーは俺の足元に膝立ちになると、胸を突き出してその先端に銀色のピアスを近づける。 「ふ、うぅっ……」  細く鋭いピアスの金具は、簡単に乳首の穴へと飲み込まれ、彼の胸には鈴のついたピアスが取り付けられる。 「ん、ぅ……」  艶めかしく腰をくゆらせながら、ヒーラーはもう片方の胸にもピアスをつける。二つのピアスの間には細い鎖が垂れており、彼が身じろぎをするたびにしゃらしゃらと鎖がこすれる音と、甲高い鈴の音がやけに大きく鳴った。  ヒーラーは無表情のまま、もう一つ持ってきた淫猥な道具を自分の体の下へと設置する。それは、太く長く、グロテスクな形状の張り型だった。  それが勇者が罰を与えるために用意させた拷問器具に近いものだと気づき、俺は張りついてしまいそうな喉を慌てて動かす。 「ダメだ、ヒーラーっ……!」 「アレクさま……淫猥な、性処理道具が……自分で、自分を慰め、ます……これは、僕の意思、です……望んで、やっています……」  ぽつりぽつりと吐き出される悪趣味な言葉には、一切の感情が宿っておらず、だけどそれに抵抗するように、彼の目から一筋の涙がこぼれて落ちる。  俺はそんな彼を止めようと、必死に身をよじって体の拘束から脱しようとした。 「ダメだ、ヒーラーっ……! 拘束を解いてくれ、頼むっ……!」 「僕は、望んで、これをやっています……痛いのも、苦しいのも……大好きな、変態で……ん、ぐぅぅ……っ」  彼の苦痛を無視した動きで、彼の腰は徐々に落とされて、暴力的な形状の張り型が内側へとズブズブと飲み込まれていく。ヒーラーの肌に生理的な脂汗が浮かび、虚ろな表情が苦しみで歪む。 「きもち、いいです……きもち、いい……うれしいです、ごめんなさい……」 「ヒーラー、もういいんだ! 勇者はもういないんだ! どうかやめてくれ!」

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