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第11話 独占欲は胸の奥へ*

「勇者、さま……? 勇者さま、あ、アァ……! ごめんなさい、申し訳ありません、ご覧くださいっ、あぁっ!」  勇者の名を聞いた途端、反射的にヒーラーは目を見開き、激しく腰を上下させ始める。床に固定された張り型の表面には僅かに血の色が混じり、彼が動くごとに鎖と鈴の音が扇情的に鳴り響く。 「ああっ、ごめんなさい、淫乱でごめんなさいっ! 勇者さま、ごめんなさいっ、みんなを殺して、ごめんなさいっ……! 許さないでくださいっ……! 僕は淫乱で、誰にでも股を開いて、邪悪で、性器を咥え込むことしか、能がありませんっ……ごめんなさい、ごめんなさいっ……!」  目の前にいるのが俺であることも理解できず、彼は涙ながらに勇者に謝罪を続ける。俺は、彼が身の内に抱えていた罪悪感をありありと見せつけられているような気分になって、何も言えなくなってしまった。  彼はパーティを半壊させた原因が自分にあると本気で思っている。確かにそれは事実の一側面かもしれないが、彼は意図してそれを為したわけではない。  そんな彼がこんな罰を受ける必要はない。そもそも謝罪すべき仲間も、勇者も、もうこの世にはいないのだから。 「あ、あぁっ、お許しをっ……! 勇者さまぁ、イかせてくださいっ……!」 「え……」 「イクための、許可をっ……くださいませっ……! どうか、お慈悲を……もう、くるしっ、ううっ……!」  激しく腰を動かしながら、事実として彼は快楽を得てしまっている。そして絶頂に達することすら彼は勇者に管理されていて、今はもういない主人に対して許可を求めている。 「あっ……んあぁ、勇者さま、勇者さまぁ……!」 「っ……!」  勇者はもういない。彼に命令できるのは自分しかいない。  彼が縋るように呼ぶ相手が、自分ではなく勇者であるということへのモヤモヤからは目をそらし、俺は苦々しく言葉を発した。 「き……許可する。絶頂していいぞ」 「あ、ありがとうございます、ありがとうございます、アァ、あーっ……!」  不本意な絶頂によって彼の全身は大きく痙攣し、そのまま硬直した後、崩れ落ちるように床へと倒れ込んだ。 「ヒーラーっ……!」  体の拘束が解かれ、俺は慌てて彼に駆け寄ってその体を抱え起こす。触れられた刺激でびくっと体を震わせてはいたが、彼の目は閉じ、その意識は完全に失われていた。 「すまない、すまないっ……!」  自分の迂闊さのせいで彼を傷つけてしまったという事実。そして、彼が勇者を求めて喘いだ姿を見て、抱いてしまった仄暗い感情。  思い上がるな。彼が自分のものだとでも思っているのか。自分は彼にとって、きっと勇者の代わりでしかない。体を求めてくるのが仮に、彼の本心からの行動だとしても、彼は勇者の代わりになる支配者を求めているだけだ。  俺という人間を求めているわけではない。好意を抱かれているだなんて、ありえない。 「ヒーラー……」  ぐったりと気絶する彼を、きつく抱きしめる。  彼が、他の奴を求める姿を見たくない。自分だけを見ていてほしい。  そんな傲慢な思いは、胸の奥底にしまい込んで鍵をかけた。

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