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第5話
夕方。
二人で近所を歩いた。
特別な場所へ行くわけでもない。
ただ、スーパーへ寄って、夕飯の材料を買う。
そんな何気ない時間だった。
「律」
「何?」
「手、繋いでいい?」
突然言われて、律は足を止めた。
「……ここ外だけど」
「うん」
「人いるけど」
「うん」
「……恥ずかしくないの?」
「ちょっと恥ずかしい」
「じゃあやめれば」
「でも繋ぎたい」
湊は笑った。
律はしばらく黙っていたが、小さく息を吐いた。
「……少しだけ」
「ほんと?」
「早くしろよ」
「うん」
二人の手が触れる。
ほんの一瞬だけ迷って、それから自然に並んだ。
律は前を向いたまま歩く。
心臓がいつもより少し速い。
でも、不思議と嫌ではなかった。
「律」
「何」
「昨日、帰らなくてよかった」
「……俺も」
「え?」
「何でもない」
「聞こえたけど」
「忘れろ」
「無理」
湊が笑う。
その声につられて、律も笑った。
夜。
昨日と同じように、街には静かな時間が訪れる。
けれど、もう一人ではない。
午前二時の街で始まった気持ちは、まだ名前をつけたばかりだった。
それでも。
何度も会って。
何度も笑って。
たまには喧嘩して。
それでも隣にいる。
そんな未来を、律は悪くないと思った。
「じゃあ、また明日」
「明日も来るの?」
「嫌?」
「……別に」
「じゃあ行く」
「勝手にしろ」
「うん。勝手にする」
湊が笑う。
律も笑った。
二人の距離は、昨日よりほんの少しだけ近くなっていた。
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