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18.貴方だけの勇者でいたい*

 唇を放し、二人で手を繋いで花畑に寝転がる。視界いっぱいに広がる色とりどりの花びらを眺めて、綺麗だねと囁きあう。  レスニカの鼻先に小さな花びらがひっついて、笑いながらそれをつまむ。  その手をそっと取られて指にくちづけをされた。  琥珀色の瞳と目が合う。見たこともないほどの、優しい眼差しだ。  身を乗り出してレスニカに覆い被さる。また、キスをする。  くちづけは段々と深くなり、今度は俺がレスニカの下に転がされる。  飽きるほど唇を重ねて息継ぎをすると、レスニカは続きのように俺の首筋に顔を埋めた。  柔らかい彼の唇が、ついばむような音を出してそこを吸う。  ぞくりと肌が粟立った。それがまた、気持ちいい。  いつの間にかシャツの下に潜り込んだレスニカの大きな手が、敏感な突起を探り当てた。 「ぁ……っ」  親指の腹で芯を撫でられてビクッと身体が跳ねる。その隙を狙うかのように、レスニカのもう一方の手がズボンのホックに触れる。  そこで我に返り、慌てて彼の腕を掴んだ。 「まって……ここでスんの?」 「嫌ならやめます。嫌……ですか?」  上目遣いに問われて、グッと喉が詰まる。  ジッと俺を見る琥珀色の瞳。  なんだその悲しそうな目は。ちょっと唇を突き出してるし、なんだか甘えたような表情だし。  なんだよレスニカ。   今までそんな顔したことなかったじゃん……。 「……嫌、じゃないし、するのも嬉しいけど」  カァ、と顔に血が上るのが分かった。  いや待て、なんなんだよ、これ!  大体こんなの慣れっこだし、なんなら自分からいくらでも誘ってたくせに、なんだよこれ!  でも、俺の答えを聞いて嬉しそうに目を細める勇者様を見たら、バクバクと心臓が脈打って変な汗が滲み出る。  恥ずかしくて今すぐ逃げ出したいのに、そうしたら後悔することが簡単に想像できて益々焦る。  いやいや、セックスって、こんなに恥ずかしいものだった? こんなムズムズする空気だった?  今までどうやってたんだ。  驚愕しながら必死に状況を飲み込んでいると、レスニカにズボンのホックを開けられ、反射的に腰を浮かしてしまう。  あああ、よくない癖が出た。見られたくないのに自ら差し出してしまった!  観念して、顔中が熱を持ってることだけはレスニカにバレなきゃいいと開き直ることにした。  そのまま下着ごと脱がされ、靴も投げ捨てられて、気を逸らすように宙に漂う花びらに視線を移す。  心臓が破裂しそうだ。 「んっ」  なのに、レスニカは躊躇もなく既に反応していた俺の熱を口内に招き入れた。  根元を肉厚な舌がぐるりと這い、その快感に息を呑む。  確認すると、レスニカの綺麗なつむじが見える。ミルクティー色の、サラサラの髪。  彫刻より綺麗な顔立ちの勇者様が、俺のものを愛しいものみたいに口に含んでいる。 「ぁ、ちょ、ま……、どこで覚えたんだよ……っ」  音が出るほど吸われて、にゅぐにゅぐと口内で絞るように先端を責められる。その快感に没頭していると、次には焦らすように付け根から舌をゆっくりと這わせられ、もどかしさに目を強く瞑った。  先端だけ口に含まれ、鈴口を小刻みに舐められると息が上がる。そのまま全体を飲み込まれ、温かい口内で擦られると一気に射精感に襲われた。  止めるようにレスニカの頭に触れ、どうにか逃れようと腰をねじる。  なのに、レスニカは余計に動きを激しくしてきて、深く強く吸ってくるので、情けない声が出てしまう。 「あ、あ、出ちゃう……っ、で……っ」  普段はこんなに早くないのに、堪えることなんて無理だった。  鋭いくらいの気持ち良さに為す術もなく、絶頂へと駆け上がる。勝手に浮いてしまう腰をレスニカは抵抗もせず受け入れてくれて、更に興奮してしまった。  そんなことをしてほしいわけじゃなかったのに、俺はレスニカの口内で射精した。  馬鹿みたいにドクドクと大量に出ているのが分かる。  息が止まるほどの快感に身を任せて、荒い息をついているとゆっくりとレスニカが顔を上げる。  満足そうに微笑んでいるが、そのままグイッと両膝を割られ、尻が浮くぐらい開脚させられた。 「ま……っ」  大きな手が、俺の両太股を支え、レスニカの顔が近付く。  うそ、とか、やめろ、とかそんなことを口走る俺を差し置き、まだ閉じている蕾にレスニカの吐息がかかった。 「ぁっ」  とろとろ、と生温かい液体が垂らされる。レスニカの口から出た、俺の精液。  その量はやっぱり大量で、尻の下まで滴り落ちる感触がして、ぶるぶると太股が震える。  そこへぬりゅ、と濡れた何かが這って、慌てて顔を上げる。 「やめろ、そんなとこ……っ、きたない」 「……シャワー浴びたでしょう? いい匂いがします」 「やだやだ、マジで……やめてっ」 「やめていいんですか? ここ、ヒクヒクして……ン、ほら……舐めると気持ち良さそうに震えますけど」 「あ、ぁ、あぁっ」  唾液と精液で濡れたそこをレスニカの舌が行ったり来たりしている。  くすぐったさとゾクゾクするような気持ち良さに襲われ足に力が入らない。一度の射精で力を失いかけていた中心も、それを繰り返されるだけで勝手に勃ち上がって、泣きたくなった。  なによりも、自分の性器が目に入るくらい尻を持ち上げられている状況に、恥ずかしくてどうにかなりそうだ。  こんな格好、レスニカには晒したくなかったのに。 「あぁ、やだ、恥ずかしいって……っ」 「ひらいてきた……」  ヌグ、と舌が内部に入ってくる。いたずらに縁をなぞられ、差し込まれ、力を込めて上下に舐められて、痒いような快感に全身の震えが止まらない。  やめてほしくて逃げようとすると、レスニカは両手に力を込めて太股を掴み、結局、彼が満足するまで責められた。 「れす、にか、そんなことしなくていい……って」 「ん……恥ずかしい?」 「うん、ン、ひっ、あ、やめて、やめ……っ」 「かわいいなぁ。でも、僕、してみたかったんです。我慢できますか?」 「むり、できない、できないよぉ……っ」  いつの間にか指も入れられ、その指が俺の内部を探り、敏感な箇所を見つけては無遠慮に擦られてしまうと、抵抗どころじゃなくなる。  さっきまでの快感は序の口だというような深い快楽に突き落とされ、声もままらなくなってただ喘いでいた。 「あぁ、イク、イク、い……っ」  ぞわぞわと大きな波が背筋を通り、ガクガクと腰が揺れる。強烈な快感が絶えず襲い、さっきよりも深い絶頂を味わう。  レスニカの指をちぎれるほどの力で締め付けて、射精のない絶頂に身を落とす。ビクビクと戦慄く俺をレスニカが見ている。そうしてまた指を動かされ、振り出しに戻ることを繰り返した。  もうやめて、と懇願するまで指で愛撫されたあとに、レスニカの大きな男根が俺を貫いた。  さっきまでの猛攻で身体に力が入らくなっていたのが幸いして、たいした苦労もなく根元までレスニカを飲み込めた。  あの前戯がなかったら怪我をしてもおかしくない大きさだ。  しつこかったのは気遣いだったのか、とか考えている余裕はない。  レスニカのペニスは、特殊だ。  根元は大きな膨らみがあり、なだらかな凸凹はカサに近付くほど細かく連なっていて、それで擦られるとひとたまりもない。  忘れていた。 「あああ、ひ……っ」 「……くっ、大丈夫ですか?」  応える余裕なんてない。  俺はまた、深い絶頂に襲われていて、ガタガタ震えていたからだ。  呼吸さえも忘れて、ただ内部のレスニカがそこに触れているだけでたまらなく気持ち良くて勝手に精液が漏れ出ている。  そんな俺を宥めるように腰や背中をさすっていたレスニカだが、少し呼吸が落ち着いたのを見計らって、腰を引き、そして突き入れられる。 「ミ……未来(ミライ)」  名前。  俺の、本名。    ゆっくりと腰を揺らされ、熱が籠もったような声音で呼ばれて、またつらいほどの気持ち良さに襲われる。  なんで名前を知ってるのとか、そういえばコイツはもう知らないものがないんだったとか、色んなことが頭を過ったけど、やっぱり俺は何も応えられない。 「未来。貴方のことが、好きです」 「……っ!」  だから両腕を伸ばして縋った。  すぐにレスニカが身体を倒してくれて、俺はその広い背中を抱き締める。  逞しい身体に包まれると胸の奥が熱くなって、皮膚と皮膚が重なるだけで、鼓動が高鳴った。  揺らされているようなストロークで中を擦られながら密着すると、なんだか一つの生き物になったみたいだ。  俺の気持ちが伝わっているかのように、レスニカが手も絡めてくれた。花畑に両手を押さえつけられるようにして手を繋いで、ただ一つになって波に揺れる。  こんなに近くにいられるだけで、嬉しい。  好きってこんな感情なのかな。  幸せってこんな感じなのかな。  繋がっている箇所があるだけで、気持ち良さそうな吐息を聞くだけで、俺の存在を肯定されているような気がする。  これが、好き? 「……っ、きつくしないで、もたない、です」 「ぅ、むり、ごめ……勝手に、な、るっ」  中のレスニカを感じるだけで、脳みそが馬鹿になるほどの快感が走るのだ。  内部の収縮は無意識だと首を横に振ると、突然レスニカが低い唸り声をあげて、身を起こし俺の腰を両手で掴んだ。  ズン、と腰を突き入れられる。ずる、とすぐに出て行かれて、また、ズン、と力強く入れられる。  その動きに、今まで手加減されていたのが分かったところで意味はない。  段々速くなる律動に声も上げられず、また絶頂して、死ぬほどの快楽に堕とされる。  気が付いたら自分のものから絶えず精液がだらしなく噴き出して、それでもレスニカの動きが止まらないからそのうちにそれは透明な液体に変わっていった。 「――出していいですか?」 「ン、うんっ……出して、いちばん……奥に……っ」  掠れたレスニカの声。  もっと奥深くに入ってきて欲しくて何も考えずに答えた。  レスニカの荒い息が頭上に降ってきて、そのままくちづけをされ口内を弄られて、口と中の敏感な部分を傍若無人なほど責め立てられ、あられもない声を上げてまた絶頂する。  一拍おいて一際深く突かれて、レスニカの動きが止まる。同時に最奥に感じる力強い脈動。びゅくびゅくと体内の飛沫も感じて、また悶える。  こんな風にレスニカを感じるだけで気持ちいい。幸せになる。  今までのセックスってセックスじゃなかった。  身体を繋げることって、こんなにも幸せなことだったんだ。 「……俺も、おまえのことが、好きなんだな」 「――はい。……はい」  疑問符を浮かべるような独り言に近い告白だったのに、レスニカは蕩けるような瞳で俺を見て、嬉しそうにはにかんで頷く。  その表情を見て、ああ、やっぱり好きってこのことなんだと分かってしまった。  好きって、凄いんだな。  ずっと胸の奥が熱くて、優しい気持ちになる。  それから俺たちは、繋がったままくすぐりあったり、くちづけをしたり、他愛のない会話をしてるうちにまた腰を揺らして快楽を貪った。  二回、三回、四回……。  最後の方なんてイキすぎて出るものもなくなったけど、ずっと気持ち良くて幸せで、終わって欲しくない時間を過ごした。  最終的にナギとの別れの時間が迫ってることに我に返って、慌てて来た道を引き返したけど。 「あれれ~? なーにしてたのかな~? 君たち二人とも花びらだらけだね~?」  用意された転移魔法陣の前で、ナギが俺たちを見るなり半目で言うのに、「あはは、いやほんとマジで、サーセン」と、頭を下げた俺。  ぎりぎりで見送る羽目になったけど、ナギを含め、みんなが穏やかに笑っている。 「いいよ~、ミキちゃんとは一昨日までいっぱい遊んだし。レスニカは……まあ元々話すことないしね? 強いて言うならミキちゃん泣かせたら許さないってことくらい?」 「はい。ナギ、本当に沢山、ありがとうございました」  ナギは、帰ることを選んだ。  帰らない道もあったけど、彼女はそうした。  だからみんな、それ以上は何も言わなかった。言わないようにしていたのかもしれない。  それから俺たちはそれぞれハグをして、俺は初めて、女性の身体を抱き締めてその華奢さに驚いたりした。  こんなに小さくて柔らかい身体でモンスターと戦っていたなんて、信じられない。  頑張ってたんだな。  頑張ってたんだ。  ああ、だめだ。涙が出てきた。 「なに~、やめてよもう! それじゃあみんな、元気でね!」  来た頃と同じミニスカートにブーツ。髪型もメイクも完璧な彼女は、笑顔で魔法陣の上に立った。  まばゆい光が彼女を包む。  レスニカと手を繋ぎながらそれを見ていると、不意にナギが目を見開いて俺に、 「そうだミキちゃん! 言おうと思って忘れてたんだけど、闇の王って続編出るんだって! 私たちがここに来る前、そんな発表があ――」  シュン、と彼女の姿が消えた。  残ったのは気まずい沈黙。 「……続編?」 「いやいや……続へ……。いやいや、違うだろ」  レスニカの問いに首を横に振って否定してみる。  周囲の仲間たちもしばらく黙りこくって考えたようだが、そんなことをしてもどうしようもないことに気付いてか、一人、また一人とその場を去って行った。    気を取り直したレスニカと俺もみんなと別れを告げてその場を後にする。  馴染みの車に乗り込み、助手席に腰を下ろした瞬間、ゴリッと尻に何かがあたった。首を傾げてポケットを探れば、出てきたのはいつだかの腕輪。  翡翠でできてるみたいに太くて立派なそれをなんとなく腕に填めてみると、運転席に乗り込んだレスニカが気付いて、そして目を瞠った。 「……それ、なんですか?」 「あ、やっぱ分かる? なんか城で偉そうなアフソナの人に貰ったんだよ。マナで作られてるものでめっちゃ高価だって」 「いやそれ……」  言って、レスニカはふう、と気を静めるように息を吐いた。それから俺に向かって、「僕に〝心眼〟って唱えてみてください」なんて言ってくる。 「いや、俺無垢(プレン)だからこんなの貰っても発動しないじゃん。はい、〝心眼〟!――わあああ!」  レスニカ・ブレイ/20歳/人族/男/保持者  属性:聖  レベル:149/HP49999/MP4999  弱点属性:闇  状態  :ふつう  思いっきりレスニカの真横に謎のステータスが空中に表示されて、びっくりして叫んでしまった。  なんだこれ! 「HPスゴッ! って、なんで見えるの?」 「僕も〝心眼〟で貴方を確認したら、無垢とは表示されてなくて……」 「え、じゃあなんて出てる……?」 「……継承者、と」 「――は? なにそれ?」 「可能性としてはその腕輪を継承されたから、でしょうか。アフソナ族の持ち物だったんですよね?」 「……あー、そういうこと?」 「変ですよね。保持者や無垢なら必ずそう表示されるのに、そのどちらでもないので、もしかしたらって思ったんです。実際今〝心眼〟も使えたとなると――その腕輪、なんかまずい物な気がしてきました」 「これつけると魔法使えちゃうかもってこと? 保持者じゃないのに?」 「そうです。貴方は今、属性も弱点属性も無と表示されています。属性のない保持者なんて、聞いたことがない。あるとしたらそれは……」 「それは?」 「アフソナ族です」  沈黙が広がる。  しばらく首をひねって考えたけど、そうしたところで何の意味もない気がして、俺とレスニカは同時に笑って、車を発進させた。 「まずは魔法が使えるかどうか試すのに、ハントしに行きましょうか」 「おしっ、いっちばん弱いモンスターのとこにしよ!」 「いいですよ、街を出てすぐのところです」  ぶっちゃけ自分が魔法を使えるかどうかなんてどうでもよかったけど、腕輪はその効果を見事に発揮してくれて、俺はレスニカと同じ、保持者(フィディン)のような力を手に入れた。  ついでに腕輪を外すと無垢に戻るのも分かった。  とんでもアイテムを置いていったあのアフソナ族のことを考えると、なんだか怖くなっていく一方なので、俺たちはそれ以上、深く考えないことにした。  脅威となるものはもういない。世界のことも考えなくていい。  ただ二人で過ごす日々に、少し変化が起きただけだ。  そして俺はというと腕輪をつけてもモンスターを狩るのに腰が引けまくってて、すぐ向いてないコレってなったけど。 「まあいっか! 明日はどこ行く?」 「ん~、海のモンスターから採れる貴重なアイテムがあるんです。潜水艇、乗ってみたくないですか?」 「そんなのあるの? いいね~面白そう!」  俺の答えに、レスニカが目を細めて笑っている。  それが嬉しくて、たまらない。  それから俺たちは手を繋ぎ、故郷と同じように醜くて残酷で、でも優しくて美しい、この広い世界を渡り歩いた。  飽きるほどに。  

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