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第6話 狂った独占欲

文化祭の後夜祭を兼ねた他校との合同祭。 色とりどりの他校の制服が入り乱れる喧騒の中、俺は最悪なタイミングで「過去」に再会した。 「……あれ? もしかして、零?」 聞き覚えのある声に振り向くと、そこには中学時代の友人・佐藤が立っていた。 「やっぱり零だ! 相変わらず綺麗だなぁ、お前。高校入ってから連絡取れなくて寂しかったんだぜ?」 そう言って、佐藤が親しげに俺の肩に手を回し、グイッと自分の方へ引き寄せた。 「あ、佐藤か。お前もこの合同祭来てたんだな。…… つか、離せよ。相変わらず距離感バグってんな」 苦笑いしながら軽く押し返そうとした、その時だった。 視界の端から、弾丸のような勢いで「何か」が突っ込んできた。 「──その汚ぇ手、今すぐどけろっつってんだよ」 低い、地這うような怒号。 阿久津が、佐藤の胸ぐらを掴んで力任せに突き飛ばした。 よろめく佐藤を鋭い眼光で射抜き、阿久津は俺の腕を乱暴に掴んで自分の背後に隠した。 「あ、阿久津!? いきなり何すんだよ! こいつは中学の時の───」 「うるせぇ。……お前は黙ってろ」 振り返った阿久津の目は、完全に「イッて」いた。 怒り狂っているというより、自分の大事な獲物を奪われそうになった獣の、それだ。 瞳の奥にどす黒い執着が渦巻いていて、直感的に「あ、これヤバい奴だ」と理解する。 「……零、こいつ誰だよ? 怖いんだけど」 怯える佐藤を無視して、阿久津は俺の手首をミシリと音がするほど強く握りしめた。 「ダチだかなんだかしんねーけど、コイツ俺のだから。気安く触んな」 「おい阿久津、やりすぎだろ! やめろって!」 叫ぶ俺を、阿久津は引きずるようにして部室棟へと連れ去った。 誰もいない部室。重い扉が閉まった瞬間、俺の体は冷たいコンクリートの壁に叩きつけられた。 「……っ、いってぇ! お前、マジで加減しろよクソゴリラ!」 「黙れって」 阿久津が俺の両手首を頭上で抑え込み、逃げ場を奪う。 至近距離で見つめてくる瞳は、嫉妬と独占欲でドロドロに溶けていた。 「お前は俺のもんだろ。……あんなチャラついた他校の奴に触られて、ヘラヘラ笑ってんじゃねーよ」 「わ、笑ってねぇよ……っ、て…んん、あ……っ!」 強引に首筋に食らいつかれる。 吸い上げられ、噛みつかれるような痛み。 これ見よがしに、誰の目にも触れる場所に、自分の所有物であることを示す刻印を刻みつけていく。 阿久津の執着は、もう正気の沙汰じゃなかった。 俺を独占したいという狂気じみた情動が、あいつの体温を通じて俺の中に流れ込んでくる。 (……はあ。最近のこいつなんなんだよ、マジで…本当に壊れてんな) 首筋に走る鈍い痛み。 恐怖を感じているはずなのに 自分だけに向けられるこの暴力的なまでの愛に、俺の身体は裏腹な熱を持っていく。 世界中で俺だけが、この阿久津奏多をここまで狂わせることができる。 その事実に、俺は震えるほどの充足感と、歪んだ快感を覚えていた。 「……なあ、阿久津…そんなにお前のもんにしてぇならもっと、はっきり付けろよ。消えないくらいにさ」 煽るように笑ってやると、阿久津の理性が再び音を立てて崩れたのが分かった。

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