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雪月紅(ゆづきこう)は深夜、灯りを消した自室でひとりベッドへ寝ころびながら、なんとなくスマホを眺めていた。
再生動画に挟み込まれたCM動画では、インプリンティング・ペットの紹介が流れ、つい目が止まってしまう。
『ひとめであなたに懐いて、寄り添ってくれる。ずっとあなただけのことを想って慕う、インプリンティング・ペット。あなたの人生に、かけがえのないパートナーを』
何年か前からはやりだした、ペットの代用品のようなものが、インプリンティング・ペット、通称インプリ・ペットだ。
CM動画には、本物の犬や猫と変わらない姿のAIを組み込まれた人工動物たちのかわいらしい姿が映る。表情も動きも、生き物と何ら変わりがない気がする。
体温を感じられ、しかも飼い主の好みをAIが自動収集しそれに合わせて甘えたり慰めたりしてくれるというので、紅は惹かれていた。
体質や年齢、環境などが理由で生きたペットを飼えない人だけでなく、しつけや散歩などの世話を面倒と思う層から特に人気を集めている。
(かわいいなぁ……俺にもこんなふうに懐いてくれるかな)
CM動画では、バスケットボール大の卵から、犬の形をしたインプリ・ペットが誕生するシーンが流れた。目の前の女性に一目散に駆けていき、抱きあげられるとちぎれんばかりに尻尾を振っている。
インプリ・ペットは、卵から孵化したとき最初に見たものを親と思う習性をプログラミングしてある。
卵に入った状態で届き、ひと晩添い寝をすると、翌朝孵化し初めに見た相手に懐くシステムになっている。
全身で飼い主を信頼し愛してくれて、飼い主がたっぷりと愛情を注いでも応えてくれる。この上ない存在だ。
(人間タイプが出ないかな)
紅はため息をついて、動画サイトを閉じる。スマホをベッドの脇へ置いて仰向けになり、天井を見上げた。
眠れるようになるどころか、最後に見た広告動画のせいで目がさえてきてしまう。
(買いたい、けど高いんだよな)
インプリ・ペットは今のところ、犬や猫が主流で、たまにうさぎなどの小動物も登場する。人型の製作は倫理面から禁じられているけれど、紅はひそかに登場を待ち望んでいた。
自分に懐いて甘えてくれて、大切にすればするほど喜んで慕ってくれる。世話のしがいがあるし、愛しすぎても傷つかずにすむ夢のような存在だ。
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