13 / 33

2-5

「あれ、早いの珍しくね?」  政宗が部活の仲間とやってきて、紅に気づくとそのまま分かれた。二限開始まで時間があったので、紅はすいている学食でコーヒーを飲んでいる。 「次、一緒だよな」 「うん。……で、クロなんだけど」  不思議そうな顔で政宗が隣の席に座る。今朝あった、発情らしきできごとを伝える。 「やっぱ、どこかに相談した方がいいって。襲われかけたんなら、危険じゃん。本物の犬じゃねーことは確かなんだし」 「インプリ・ペットじゃないことも確かだろ?」  隣の席に座った政宗が、がしがしと頭を搔いている。 「けど、可能性はあるだろ。開発中の新商品が逃げたとかかもよ?」  小鉄と比べればほとんど違うのだけれど。まだ世の中に出されていないタイプだとすれば、あり得るかもしれない。 「卵が? 自分で動くか?」 「最大手企業に聞くだけ聞いてみろって。紅の代わりに連絡してやろうか?」  政宗も紅と似て、つい人におせっかいを焼く。きっと正しいしためになると思っての助言だろうけれど、紅はとまどってしまう。 「……そしたらクロ、連れていかれるだろ?」 「そうかもしれねーけど、調べてくれるってならいいじゃん。紅だってそんなことされて困ったんだろ?」  びっくりはしたものの、落ち着いてくると困っていないことに気づいた。  紅の全てを受けとめて、かわいらしくなついて一緒にいてくれる、癒しの存在なクロが理想だった。  理想像から外れかけ、クロに対して戸惑いてしまったことは事実だ。 「大型犬サイズになってんだし、飼う場所も大変になってるだろ?」  確かに1Kの部屋で、シングルベッドに一緒に寝るのは手狭だ。  子犬のようにかわいくて無邪気なクロが、急におとなになってしまった。昨夜までは、この距離の近さが落ち着くし安心できたのに。紅は寂しくなって混乱しているのかもしれない。 「もう少し、様子見てみる」 「早い方がいいと思うけどな」 「……ありがと」  言葉だけの感謝を伝え、残りのコーヒーをひと息に飲み干した。

ともだちにシェアしよう!