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第3話 夕子は消えた
ある日突然、夕子はいなくなった。同僚の一花がリキの頬をひっぱたいた。
「あんた、しつこいんだよ。
夕子は北の国に子供を預けて働いてたんだ。
帰ったんだよ、北へ。」
二十歳になった、と言っていた夕子には3才になる子供がいた。
(俺は夕子のことを何も知らない。
知ろうとしなかった。)
愕然とした。夕子を探し回った。
夕子の故郷が何処なのか、知る由もない。
「自分は世界一不幸な人間だ。
愛してくれ!慰めてくれ!」
夕子に対して、自分の事ばかりだった。
恭司が来た。ただ一人リキの親友と言える男。
恭司は一花から話を聞いていた。
「探しに行くか?
自分から出て行った女に帰って来てもらいたいのか?」
恭司の力でなら探し出せると言った。
まだ、駆け出しのヤクザでも、そのネットワークは侮れない。でも恭司の目が
(もう、無理だよ。)
と語っていた。たくさんの修羅場を見て来た恭司ならわかる世界だった。
酒に溺れた。切ないブルースを作った。
それが思いがけずヒットした。
(いつでもギターは俺を見捨てない。)
男の孤独を歌ったリキの声は最高だ。苦いものを口に含んだようなリキの声。
恭司の組のヤクザたちの共感を生んだ。
いや世界中の孤独な男たちの共感だ。
渋い男。背が高く男っぽい顔と声。若干20代で、男の孤独を背負ってしまった。
いつもそばに恭司がいた。
ストイックなリキの暮らし。恋に臆病になっていた。もう何年も恋をしていない。この頃自覚したのは自分がゲイだという事。
夕子以外の女を抱けない。
高校時代からリキを見て来た恭司。リキの変節に気付いた。
恭司はもっと前からリキだけを見て、リキだけを思って来た。プラトニックだった。
女を抱けない恭司に組の関係者たちは気付いていた。
「極道としてどうなんだ?
姐を迎えられねえな。」
神谷の叔父貴が笑って言った。神谷丈は、恭司の永田組を傘下に持つ斎田会の若頭補佐で、恭司を可愛がってくれる。
おふくろの昔の愛人だったらしい。
ゲイに理解のある叔父貴だった。
「俺の気持ちは一生身を結ばなくてもいいんです。」
陰になり日向になりリキを支えたい。
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