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第15話

和音に従い客室に行った自分が悪いことは分かっている。 しかし、なぜ自分が東堂に告げ口したことを今になって飛鳥に教えたのだろう。 「何で今さら僕にそのことを?」 飛鳥がそう問うと、宗士はにやりと笑った。 「お前が、政忠とかいう客とよろしくやってるみたいだからな。放っておいたんだ」 長く告げ口をしなかったのは、政忠と親密にしているのが何となく腹が立ったとの理由から。 盛んだったようだから、一気にどん底に突き落そうと考えたのだという。 「まさかお前、あの客とできてるのか?」 嘲ったように言う宗士の顔を見て、飛鳥は無性に腹が立った。 「そんなんじゃない!」と言って歯を食いしばり、握った拳を振り上げたところ、誰かに腕を後ろから掴れる。 そこにいたのは、眉間に皺を寄せた表情の和音だった。 「あっ……」 「やめろ、飛鳥。こいつを殴ってどうするんだ」 「和音さん……」 飛鳥は彼の顔を見た途端に、戦意を喪失してしまった。 和音の顔を見て、安心したというのもあったのかもしれない。 飛鳥は和音の胸元に縋りついて泣いた。 「おいおい、愛しい人の登場か?」 宗士がからかう言い方をすると、和音は彼にキツい視線を送る。 「飛鳥に手を出すな」 一言だけ言うと、和音は飛鳥を伴って部屋を出た。 和音に引っ張られていく飛鳥は、涙も止まり彼に尋ねた。 「ね、ねぇ。どこにいくの?」 「いいからついて来い」と和音が言うので、飛鳥は彼に引っ張られるままに歩いていく。 するといつの間にか建物の外に出ていて、さらに和音は飛鳥を引っ張っていく。 「一体どこまで連れていく気だろう?」と思った飛鳥だが、和音が立ち止まった場所を見て目を見開いた。 「うわぁ……」 そこに広がっていたのは、大きな池だった。 香煌楼の裏手にこんな場所があるなど、飛鳥はそれまで知らなかったのだ。 「いい場所だろ?俺のお気に入りの場所だ」 「そうなんだ。湖みたいだね。綺麗」 「ちょっと座れよ」と促され、飛鳥は和音と並んで座る。 「ここは、心を落ち着かせたい時とかに、1人で来たりしてるんだ。ほら、この仕事だから嫌になることもあるだろ?」 和音が自虐的に言いながら柔らかく笑みを作ると、飛鳥は「そうだね」と答えた。 すると和音は、真面目な表情になったかと思うと、「他の人を連れてきたことはない。お前が初めてだ」と言う。 重ねて「お前だから連れてきたんだ」とも言うではないか。 真っ直ぐに見つめられ、飛鳥はどうすれば良いか分からなくなる。 「そ、そうなんだ。それは光栄だよ」 和音から目を逸らして俯きながら言うと、彼が飛鳥の頬に手を触れて顔を和音の方に向けさせる。 「お前、最近俺を避けてただろう?」 「え?そんなことは……」 確かに気まずさから避けていたのだが、つい嘘を吐いてしまった。 「まぁいい。罰を受けたことは、悪かったと思ってる。客室に連れて行ったのは俺だからな」 それでも和音は、飛鳥と関係を持ったことを後悔していないという。 「お前は、後悔しているか?」 和音が問うと、飛鳥は首を横に振る。 「そんなことない」 飛鳥がきっぱりと言うと、和音はホッとしたような表情を見せた。 「あの時俺がお前を誘ったのは、お前を抱きたいと思ったからだ」 「何で僕を?」 飛鳥の問いに、和音は「お前が好きだからだ。どうしても止められなかった」と言う。

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