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第14話
政忠との行為に没頭すればするほど、彼の脳裏に思い浮かぶのは和音のことばかり。
諦めようとすればするほど、和音への想いは増していく。
和音を密かに愛しながらこの世界にいることは、飛鳥にとって辛いもの。
しかしこの遊郭に縛られている間は、和音と会わないことはないかもしれない。
飛鳥はそれに耐えることができるのだろうか。
物置部屋から解放されてからしばらく経ったある日、宗士が飛鳥に声をかけてきた。
「なぁ。お前に教えたいとっておきのことがあるんだ」
そう言う彼の表情は、何かを企んでいるに違いなかった。
飛鳥は思い切り警戒しながら、宗士を睨みつける。
「何だよ、とっておきのことって」
「知りたいか?」
にやけながら焦らす宗士に、飛鳥は苛立ちを覚えた。
「さっさと言えよ!」
「分かったよ。東堂さんに、お前たちのことを話したの、俺なんだよな」
宗士の言葉を聞いて、飛鳥は固まってしまう。
「え?どういう意味だ?」
「お前と和音、休みに客室に行っただろ?あの時、俺見てたんだよ」
もう罰を受けているから、今更知ったところで既に遅い。
それでも飛鳥は愕然とする。
「あの日、祭りに行ったんじゃないのか……」
「俺、祭りとかあまり興味ないんだわ。ちょうど水を飲みに行って炊事場から戻る途中で、お前らが出てきたんだ」
「何で僕たちのことを東堂さんに話したんだ?」
宗士が東堂に告げたのは、飛鳥に客を盗られた恨みがあったからだという。
とはいえ、飛鳥には宗士の客を盗った覚えなどない。
宗士が言うには、その客は「新しい子が入ったそうだな。可愛いみたいじゃないか」と言っていたのだそう。
その頃に入ったのは飛鳥だけのため、明らかに飛鳥を指していることが分かる。
宗士を指名しておきながら他の男娼の話をするその客も客だが、その客は本当に宗士を指名しなくなり飛鳥を指名し始めたのだ。
他の男娼に鞍替えすることを香煌楼では禁じていないものの、道義的にはどうかと思われる行為である。
「せっかくのお客さんだったのに、悪かったよ。でも、僕は知らなかったんだ」
「いいさ、俺には他にも上客がいるし、お前にくれてやるよ。で、お間は和音と本当に恋仲なのか?」
「え?それは……」
宗士の問いに飛鳥は答えられなくなる。
確かに飛鳥は和音に想いを寄せているが、別にその想いを告げてはいないのだから。
「そういうわけじゃないよ。あの人も、きっと気まぐれで僕を誘ったんだ」
「ふーん。あいつに本気にならない方がいいぞ?東堂さんが怖いならな」
「……」
飛鳥は返事に困ってしまう。
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