21 / 24

第21話

月日の流れというのは早く感じられるもの。 それでも普遍的なものはある。 それは、飛鳥と和音の仲だ。 二人は周囲の目を警戒しながらも、秘密の愛を育んでいた。 頻繁に好きな時に会えなくても、いつか一緒になれたら良いという思いが、二人を支えていたのだ。 そんなある日、部屋で宗士が喚いていた。 「何したんだよ。うるさいな」 飛鳥が聞くと、宗士は「金が無くなったんだよ!」と言う。 もしそれが本当なら、大問題だ。 香煌楼では、男娼たちに毎月稼いだ金の中から小遣い程度の金を渡している。 金は自己管理となっているが、他人の金に手を付けてはいけないという掟がある。 それは当然のこと。 しかし、そんな掟を守らない輩もいるということか。 飛鳥が「お前の管理が悪いからじゃないのか?」と言うと、宗士は「黙れ!」と怒鳴った。 さらに宗士は、「あいつだ!蘭が盗ったんだきっと!」とまで言うではないか。 「蘭が!?」 飛鳥としては、まさか蘭が金をくすねるなど、信じられない。 純粋無垢そうで、人のものに手をつけるなんて思えないからだ。 きっと、何かの間違いだろう。 「そうだ。あいつ、いつも金がないって騒いでただろ」 確かに、飛鳥も蘭に「金ないんですよ」と愚痴られていた。 しかし……。 「だからって、それだけで疑うのはどうなんだ」 そうだ、今のところ明確な根拠はない。 宗士は蘭のことを煙たがっており、どうしても犯人にしたいようだった。 「絶対あいつに決まってる!」 「だから、何でそう決めつけるんだ!」 飛鳥が叫んだ時、蘭が部屋に入ってきた。 何も知らない蘭は、「どうしたんです?二人共」と目を瞬かせて言う。 蘭の姿を見た宗士は、掴みかからんばかりの勢いで「お前!俺の金盗っただろ!」と食ってかかろうとした。 何のことか分からない蘭は、「何なんだよいきなり!訳が分からないじゃないか!」と言い返す。 「俺の金がなくなったんだよ!お前が盗ったに決まってる!」 「何で俺が人の金盗るんだよ!人のせいにするな!」 「それなら、お前の荷物を確認してみろよ」 宗士にそう言われた蘭は、すぐに自分の荷物を確認し始めた。 すると荷物の中から、身に覚えのない財布が紛れていた。 明らかに、蘭のものではない。 知らないものが自分の荷物から出てきて、蘭は愕然とする。 「何だよ、これ……僕のじゃない……」 蘭が手にしたのは、藍色をした小さめの巾着袋だった。 「どれ!貸してみろ!」 宗士がひったくるようにして蘭から巾着袋を取り上げる。 しげしげと袋を眺め、宗士は「俺のじゃないか。やっぱりお前がやったんだろ?」と決めつけた。 「東堂さんに突き出してやる!」 宗士はそう言うと、蘭を引っ張り上げると、どこかへと連れていった。 宗士の言葉に心配になった飛鳥は、宗士たちの後を追いかける。 きっと蘭は宗士の金を盗っていないと思ったからだ。 彼らが辿り着いた先は、やはり東堂の部屋だった。 蘭の首根っこを摑まえた宗士が部屋に入ると、怪訝そうな顔で東堂が「一体何があった」と低い声で尋ねる。 「こいつが俺の金を盗んだんです!」 宗士は怒りの感情のままに訴えた。 東堂は宗士と蘭を交互に一瞥して尋ねた。 「蘭がやったという証拠はあるのか?」 「こいつの荷物から、これが出てきたんです」 宗士は金の入った巾着を東堂の前にかざす。 蘭は絶望した顔で首を懸命に横に振った。 「僕は知りません!人様の物なんて盗りませんよ!」 蘭の訴えに、東堂は眉間に皺を寄せて言う。 「しかし現に、お前の荷物から出てきたと言っているだろう。観念しろ」 「俺じゃありません!ちゃんと調べてください!」 いくら訴えても、蘭は以前に飛鳥と和音が閉じ込められた物置部屋に、連れて行かれたのだ。

ともだちにシェアしよう!