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第20話

日が暮れて、その日の営業が始まる。 飛鳥の元には、馴染みの政忠がやってきてくれた。 頻繁に通ってくれる彼は飛鳥の上客であり、信頼している客でもある。 凛々しく端正な顔立ちの政忠は、飛鳥が嫌がることは決してしないし、いつも優しく 扱ってくれるところも信頼できる点だ。 どこかの荒々しい中年客に抱かれるよりも、よほど良いと飛鳥は思っている。 それに、体の相性が良いことが一番の部分かもしれない。 飛鳥は、政忠に通ってきてもらえて有難いと思っていた。 政忠は定期的に通ってくれているので、飛鳥は行為の好みを熟知している。 いつもの通りに政忠への奉仕を終えて身支度をしていると、政忠が「あの……」と話しかけて来た。 「どうしましたか?」 改まった雰囲気で、政忠は正座をしている。 すると、彼は顔を赤くして告げてきた。 「君が好きだ」 「え、え!?」 政忠に突然告げられ、飛鳥は大いに動揺した。 「私は、君に恋慕の情を抱いている」 再度告げられ、どうしたら良いか分からなくなる。 客と恋仲になることは基本的に禁じられている。 そもそも、飛鳥が好いているのは和音だ。 「ありがとうございます。お気持ちは有難く頂戴いたしますね」 飛鳥は努めて優しく微笑む。 それだけしか言えないのだ。 しかし政忠は、飛鳥に近寄ってきたかと思うと、抱き寄せてきたではないか。 「すぐには叶わないが、君を身請けしたいと思っている」 「政忠さん……」 「君のためなら、何でもしてやりたいんだ」 その気持ちはとても有難い。 しかし、身請けしてもらい、その後はどうなるのだろうか。 政忠と共に生きていかなくてはならなくなるのだろうか。 飛鳥はそんなことはできないと思う。 ここにいる限りは誰のものでもないのだろうが、その後は描いている未来がある。 和音と生きていくことだ。 政忠には、曖昧なことを言っても駄目だと思う。 飛鳥ははっきりと言うことを決意した。 「ありがとう、政忠さん。僕はあなたに助けられています」 そう言って、飛鳥は政忠の手を握った。 「でも、僕には心に決めた人がいます。だから、あなたの申し出を受けられません」 心が痛んだが、仕方ない。 これを機に彼は、通ってきてくれなくなるかもしれない。 すると、政忠が尋ねてきた。 「その、心に決めた人とは誰なのです?」 「それは、内緒ということで」 「そうですか……」 政忠は寂しそうな顔をした。 「分かりました。でも、あなたの元にはこれからも来てもいいだろうか」 堅物な男は、真摯な目で問いかける。 飛鳥は頷き「こんな僕でも良ければ、これからもよろしくお願いします」と微笑んだ。 このくらいしか、飛鳥にはできないのだから。

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