19 / 24
第19話
「う~ん……。それはまだ決めてないんだ」
これから、追い追い決めるということか。
「一緒に考えてくれるか?」
それは、ここを出た後に共に商いをしていきたいという気持ちも含まれているのだろうか。
「う、うん……。もちろんだよ」
飛鳥がそう返事をすると、嬉しそうな笑みを零す和音。
「やった!ありがとう。楽しみにしてるよ」
そう言って、和音は飛鳥の頬に口付けをした。
「そうだ。俺が飛鳥の生きる意味になってるんだろ?」
色っぽい視線で問われ、飛鳥は慌てふためく。
和音は飛鳥が贈った文のことを言っているのだろう。
「え?うん……そうだけど?」
「俺も、お前が生きる意味になってるよ。これから先も、ずっとお前と一緒にいたい」
「それは、ここを出た後もってこと?」
飛鳥の問いに、和音は優しい表情で頷いた。
飛鳥も、そうなったら良いと思う。
共に年老いて、生涯を共にできればどんなに幸せだろう。
けれど、それが叶う日は来るのだろうかと思う自分もいる。
ここでの生活からいつ抜け出せるのか、分からないのだから。
ただ今は、和音といられる幸せを噛み締めていたい。
「お前が傍にいれば、それでいい」
和音はそう言うと、飛鳥をふわりと抱き寄せた。
「僕も、和音さんがいれば生きていけるよ」
叶うか分からない日を夢見て、飛鳥は和音の温もりを感じた。
それから一年が経ち、飛鳥の後輩が香煌楼に入ってきた。
蘭と名付けらた少年は、飛鳥より一つ年下で、活発な子だ。
飛鳥と同室になった彼は、物憂じしない性格のようで、飛鳥に何かとくっついてくる。
他にも先輩男娼はいるのに、なぜ自分にくっついてくるのか、飛鳥には謎だ。
男娼の生活区域には食堂があるのだが、朝食の際にも飛鳥の隣を陣取る。
そんな彼が可愛いと思う反面、身動きが取りにくいとも感じてしまう。
「お前は何で俺にくっついてくるんだ?」
迷惑さを装い冗談めかして言うと、蘭は「いいじゃないですか」と笑顔でくっついてくる。
本当は和音と食事がしたいのに、それは叶ったためしがない。
秘めた恋なのだから仕方ないが、飛鳥には辛いところだ。
食事をしながら蘭が言う。
「同室の先輩で、僕に良くしてくれるの飛鳥さんくらいですもん」
「そうか?他の先輩もお前の面倒を見てるだろう?」
飛鳥がそう言うと、蘭はぶんぶんと首を横に振った。
「そうでもない。親身になって色々教えてくれたのは、飛鳥さんだけだ」
そうだろうか。
少し熱っぽい目で見られ、飛鳥は調子が狂ってしまいそうになる。
「そうか?ほら、早く食わないと時間なくなるぞ」
まだ食べ終わらない蘭に、席を立ちながら飛鳥が言う。
蘭は「待ってくださいよ!」と叫ぶが、飛鳥は「客が来てしまうだろ?」とだけ言い、その場を去った。
後輩に懐かれるのは良いのだが、飛鳥はただ懐かれているだけではないような気がしてしまう。
ともだちにシェアしよう!

