23 / 24

第23話

飛鳥は、普段男娼たちが飯を食う食堂になっている広間に蘭を連れていった。 ご飯時ではないので、他には人がいない。 「あの物置部屋は辛かっただろう?」 飛鳥がそう問うと、蘭は不思議そうに目を瞬かせた。 「飛鳥さん、あの場所を知ってるの?」 「あぁ……。前に僕も入れられたことがあったんだ」 あれは、和音と客室で関係を持ったことが明るみになった時だった。 当然、蘭は「何で?」と聞いてくる。 「お前は知らなくていいことだよ」 過去のことだし言いたくなかったから、飛鳥はそう言ってはぐらかす。 蘭は目を瞬かせたが、「まぁ、いいか。でもあの時、飛鳥さんが俺のことを信じて庇ってくれたのが、凄く嬉しかった」と言った。 思わぬ蘭の発言に、飛鳥は戸惑い「そ、そうか?」と言うだけで精一杯だった。 そして蘭は、何故か顔を赤らめている。 それを見た飛鳥は調子が狂ってしまいそうになった。 すると蘭が、意を決したように言った。 「やはり、飛鳥さんじゃなければ駄目です」 それを聞いた飛鳥は、何のことか分からず「え?」と素っ頓狂な声を出す。 「俺、飛鳥さんのことが好きなんだ」 真面目な顔で言う蘭に、飛鳥は大いに驚いた。 確かに蘭は懐いてくれていたし、和音にも蘭には注意をしろと言われていた。 しかし、本当に好かれているとは思わなかったのだ。 「えぇと……それはつまり、恋慕の情ということで?」 飛鳥の問いに、蘭ははっきりと頷く。 「もちろん、そうだよ。俺はあなたに、恋慕の情を抱いてる」 真面目な顔で言う蘭に、飛鳥は何を言えばいいか分からなくなる。 自分には和音がいる。 だから、蘭の気持ちには答えられない。 そのことを伝えなければいけないのだ。 「僕は、心に決めた相手がいるんだ」 飛鳥が告げたことに、蘭はがっかりするだろう……。 そう思って蘭の顔を見ると、思いの外彼は平然とした表情をしているように見える。 「知ってると、そのくらい」 蘭の口から出た言葉に、飛鳥は意表を突かれた。 「な、何でそれを?」 飛鳥の問いに、蘭は何でもないことのように答えた。 「和音さんでしょ?」 その名前が出てきたことに、飛鳥は何も言えなくなる。 「……」 「隠さなくても、もう気付いてるよ。雰囲気で分かるし」 そう言われて、飛鳥は唖然とする。 まさか、周囲の者たちにも分かられてしまっているのだろうか。 「もしかして、他にも知っている人間がいるのか?」 飛鳥が問うと、蘭は首を横に振る。 「分からないけど。俺は、あなたが好きだから気付いただけ」 「そ、そうか……」 飛鳥は正直ホッとした。 もし二人の仲を藤堂に知られたら、どうなるか分からない。 そして飛鳥は、蘭ですら藤堂に密告しかねないと思い至る。 飛鳥に想いを寄せている彼が、そんなことをするはずはないが……。

ともだちにシェアしよう!