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第41話
寝不足が続いたある日、店で帳簿の確認をしていると、小平から声をかけられた。
「旦那様、お体は大丈夫ですか?目の下のクマが酷いですよ?」
そういえば、このところ和音の夢を見て明け方に目を覚ます日が続いている。
その後はそれきり寝られなくなってしまうのだ。
「少し寝不足なんだ。そんなに酷いか?」
「何かお悩みがあるのでしょうか。お体が心配です」
「今は君たちが来てくれて大分楽にはなったが、それまで大変だったものだから……。無理が今になって祟ったのかもしれないな」
飛鳥はそう言って、自嘲気味に笑った。
周りの人を心配させてはいけない。
そう考え、より一層気を引き締めることにした飛鳥だった。
佐吉からの資金援助などにより、飛鳥の店も何とかやっていくことができるようになった。
この地域の中の大物である佐吉との交流も、続けている。
佐吉は良い兄貴や父親のような存在であると、飛鳥は思っていた。
信用していた佐吉と、界隈の商店の会合に参加した飛鳥。
五十名ほどが集まる、料亭の座敷を借りての会合だ。
飛鳥は初めての参加であったため緊張していたが、あまり交流のなかった商人との会話も楽しむことができた。
和やかに続いた会合は一時ほどで終了し、それぞれ散会する。
すると佐吉が、ややほろ酔いになっている飛鳥に声をかけてきた。
「どうだい?これから二人で飲みにでも行かないか?」
「ん?佐吉さんとですか?」
「あぁ、そうだ。費用は私が持つよ」
大店の主である佐吉とサシで飲むなんて、若輩者の自分に許されるのだろうかと飛鳥は思う。
しかし、誘われたのを断るのも失礼かとも思ってしまうし、驕ってくれるなら行きたい気もする。
「それでは、私でよければお願いします」
飛鳥が承諾すると、佐吉は「そうかそうか」と満足そうに笑った。
佐吉に誘われて入ったのは、庶民が訪れるような高価なわけでもない居酒屋だった。
飛鳥に気を遣ってくれたのかもしれないが、敷居が高い店ではなく実際に飛鳥は安堵する。
「こうやって君と二人で飲むことは珍しいからな。色々な話をしようじゃないか」
飛鳥が来てくれたことが嬉しかったのか、佐吉は妙に上機嫌である。
「はい。そうですね」
飛鳥も、佐吉のことは商売の師として慕ってきているし、何も警戒心もなく手にした盃を口に運んだ。
商売を始めて間もない飛鳥にとって、佐吉の話は興味深いものだった。
今は和音がいなくても、いつか戻ってきた時のために自分がしっかりと店を守っていかなければならないと考えていた。
そのため飛鳥は、熱心に佐吉の話に耳を傾けたのである。
飛鳥の話を聞く姿勢に気を良くしたのか、佐吉は上機嫌で飛鳥に酒を勧めた。
「ほらほら、どんどんと飲みなさい」
香煌楼でそれなりに酒は飲めるようになっていた飛鳥。
彼がいける口だと分かると、佐吉の煽りが加速し飛鳥の酒の進む速度も早くなっていく。
佐吉に促されてどんどんと酒を飲んでいき、飛鳥は泥酔状態になってしまった。
その店の店主さえも、まだ若い飛鳥に次々と飲ませる佐吉を不審に思ったらしい。
「お客さん。そろそろ終いにしたらどうなんだい?これ以上飲ませたらまずいと思うがね」
「あぁ、そうだね。それじゃ帰るとするか」
そう言うと、佐吉は会計を済ませてから自力では立てなくなっている飛鳥を何とか立たせて店を後にしたのだった。
辛うじて意識はあった飛鳥だが、眠りに落ちてしまった。
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