40 / 44
第40話
飛鳥が恐れおののいていると、佐吉はふんわりと笑った。
「そんなに警戒することはないよ。お節介な性分でね、話を聞きたいと思っただけなんだよ」
さらに彼はこう続けた。
「ところで、君は一体誰なんだい?」
「私は……士郎という者で、近くで古道具屋を始めました」
「一人でかい?」
そう問う佐吉に、飛鳥は一緒にやっていた和音がいなくなったことなどを話して聞かせた。
もちろん、和音との仲については敢えて言わなかったが……。
初対面の相手に軽々しく話すことではないかとも思ったが、佐吉が大店の店主だということもあり、信頼できると思ったのだ。
「そうだったのか……。それは難儀だなぁ。うちとは業種が違うが、支援させてもらっても良いかな?」
「え!?よろしいのでしょうか。会ったばかりですが……」
「良いんだよ。この界隈で商いをしている者同士、助け合わなければな」
親近感の湧く笑顔を向けられ、すっかり佐吉を信用した飛鳥は頷いた。
「では、お言葉に甘えさせていただきます。本当に一人で困っていたので……」
「困った時はお互い様と言うじゃないか。人手が欲しいのだろう?それでは、うちの人足(にんそく)をしている小平と庄三郎を回すこととしよう」
小平と庄三郎は、佐吉の店ではよく働く人足で、佐吉も信頼しているらしい。
「よ、よろしいのでしょうか」
恐縮する飛鳥に、佐吉は笑顔を見せながら頷いた。
「もちろんだよ。君の店に問題がなくなったなら、彼らを返してくれれば良い」
しかも佐吉は、飛鳥の店に金も幾らか用立ててくれるという。
初対面ではあるが、ここまでしてくれる佐吉に飛鳥は感謝するしかなかった。
佐吉の立場から考えても、飛鳥は彼を信頼していたのだ。
さっそく翌日になり、小平たちが資金を携えて飛鳥の店にやってきた。
受け取った資金を使い、仕入れなどができるだろう。
それに小平(こへい)と庄三郎は、店の従業員として真摯に働いてくれた。
神の助けとはこのことだろうか、と飛鳥が思ったくらいである。
小平たちと接したり、お客と会話をしたりもするので、仕事の最中は気が紛れていたし寂しさはなかった。
飛鳥は、敢えて和音のことは思い出さないようにしていたのかもしれない。
しかし寝床につくと、彼のことを思い出してしまう。
ずっと便りはないし、もしかしたらこのまま二度と会えないのではないかと思うと、心が苦しくて堪らない。
このまま、あの父親の言う通りに彼は結婚してしまうのではないだろうか……。
そう考えると気が狂いそうになるし、なかなか思うように寝られなくなるのだった。
終いには、寝られたとしても恋しさのあまり和音の夢を見る始末。
ともだちにシェアしよう!

