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第1話
俺の恋人兼同居人の嶋根 宝 はめちゃくちゃモテる。
だから、恋人は1人ではない。
それは俺が彼と出会った高校のころからそうであった。
自分で公言していたし、俺も皆(ほかの恋人)もそれを分かった上で付き合っていた。
高校卒業、大学卒業、転職。
そういう節目で関係が一掃されるタイミングがあったけれども、俺だけは自分から振ることはなかったので、最古参として彼の横にいる。
「颯也 、一緒に住まね?」
今から3年前の23歳の夏。
嶋根にそう言われて俺はブンブンと首を縦に振った。
彼にダメ元で告白してから早6年…
ようやく俺は、彼の中で唯一になれた、と思った。
高校生になって初めて嶋根を見たとき「こんなバチクソイケメンが同級生にいていいのか」と思った。
それと同時に嶋根と同じ中学校だった奴らが噂を流し始めた。
”嶋根宝は誰とでも付き合う。ただし、関係はほかの彼女と並行する”
”誰とでも付き合う”か…
いやいや、でも俺は男だし…
そう思って自制していたのだけれども、同じクラスで過ごしていて彼を意識しないなんて器用な真似はできなかった。
1年生の3月。
クラス替えで教室が離れてしまったら、嶋根と関わることはなくなるだろう。
そう思ったら居ても立っても居られなかった。
嶋根を呼び出し、震える声で「実はずっと好きで…、嶋根くんが良ければ付き合ってほしい、んだけど」と告げた。
彼は驚き、少し考えた後に答えた。
「男か…、男と付き合ったことはないんだけど。
まあ三木くんなら抱けないこともないと思うし、いいよ」
抱けないこともない。
今思えば割と失礼なんだけれど、そもそもダメ元だった俺は天にも昇る気持ちだった。
その日はスキップして帰った、と思う。
それから1週間くらいで早速嶋根と性的な関係を持った。
一応調べて準備はしていたものの、めちゃくちゃ痛くて苦しかった。
それは嶋根も一緒だったようで、それから手を出されなくなってしまった。
このままでは恋人を解消されてしまうと焦った僕はたくさん練習して慣らして準備した。
「たくさん練習したのでもう一度チャンスをください」と再戦を要求した。
嶋根は目を見張った後、大爆笑していた。
「君みたいな子初めて。
いいよ、俺はいつでも」
そう言ってほほ笑んだ顔があまりに美しくて、今でも俺の網膜に焼き付いている。
俺と嶋根が付き合ったという話は瞬く間に校内に広まった。
ニヤニヤとした顔の男子生徒が、教室中に聞こえる声で「嶋根って男もいけたのかよ」と嶋根に話しかけた。
「うん。いけたよ」と嶋根は平然と答えている。
俺はその先を聞くのが怖くて教室から逃げ出したかった。
「っていうか三木ってホモなん?おもろ」と男子生徒が言った。
僕は頭が真っ白になる。
指が震えて持っていたシャーペンを落とした。
「んー…、三木くんの恋愛対象がどうとかは知らないけれど、男ってだけで切り捨てるのは勿体ない考え方じゃない?
まあ、颯也くんの可愛さは俺だけが知っていれば十分だけど」
嶋根が飄々と言ってのけた。
クラスの女子からは黄色い悲鳴が上がる。
「なっ、き、きもいんだよ!男同士でとか!!」
そう言い捨てて男子生徒が教室を出る。
嶋根は俺と目が合うと困ったように笑ってから手を振った。
俺はなんだかわからないドキドキで胸がいっぱい過ぎてそっと教科書で顔を覆った。
あとから友達から聞いたけれど、そのやりとりでも黄色い悲鳴が上がっていたらしい。
そんなことをされて、彼を忘れるなんてことできるだろうか。
できなかった。
だから、俺は今でもずっと彼の隣をキープし続けている。
彼の恋人が入れ代わり立ち代わりをしているうちに、俺はおそらく彼の中のトップオブ恋人になったのだと思う。
さすがに彼と同棲を始めた恋人は俺だけだと思う。多分。
学生のころと違って、社会人の今はそれほど彼の出会いも多くないようで、聞いたところによると今の恋人は俺1人らしい。
そういうところは包み隠さない人なので本当だと思う。
まあ、いつまで続くかは知らないけれど。
でも…、いつか彼も家庭や子供が欲しくなり、俺を切り捨てて誰かと結婚するのだろう。
ずっと前から覚悟していたから別にいい。
俺なんかを受け入れてくれた彼にはとても感謝しているし、幸せになってほしい。
でも、叶うならこんな幸せな生活ができるだけ長く続いてほしい。
将来のことを考えると息が詰まるので、俺は今のことだけを考える。
『飲み会になったから飯いらない。
鍵かけておいていいよ』
19時にそんなメッセージが届く。
せっかく2人分の夕食の買い出しをしたのに…、なんて思わない。
まだ作ってなかったし、セーフ。
明日に回そう。
そう切り替えていかないと彼の恋人兼同居人は務まらない。
恋人は俺だけとはいえ、行きずりの相手がいないわけではないし、それを止めさせることもできない。
嶋根宝の恋人になるということはそういうことなのだ。
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