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14.Epilogue-エンディングの先

 城を出て数分もしないうちに2人は、突然木陰から現れた大きな人影に呼び止められた。 「よう、おまえら!」 「え! サガン?!」  それは使い古した巨大アックスを背中に担いだ、鎧姿のサガンであった。重厚なローブを羽織ったエウロに、物々しい杖を手にしたチタまでいる。 「僕たちを置いてくつもり?」 「我々は勇者一行ですよ」 「だ……、だって君たちは、王国で要職に就くことになってたでしょ? これからは悠々自適に暮らせるって、あんなに嬉しそうだったじゃない」  完全最終装備の出で立ちで勢揃いしている3人に、キオは目を丸くして言い返した。昨夜のうちに別れの宴だって開いてもらったはずなのに。  しかし彼らは銘々に、首を振ったり腕を組んだりと、何だかばつが悪そうにしている。 「……んー、そう思ってたんだけど、なんっか性に合わないんだよねー」 「刺激が無えっつーか。あとキオと王子だけで行かせるのも、やっぱ心配だったしな」 「ええ。キオが王子にあまり無体を働かないよう、見張っておく必要もありますから」 「ええー……、2人っきりで良かったのにぃー……」  キオが下心を手折られて分かりやすくガックリと肩を落としたとき、一方ムーは黒い瞳をキラキラと輝かせていた。前のめりになって、興奮を隠し切れない様子で3人に尋ねる。 「……また、全員いっしょに旅ができるのか? ひょっとしておまえたちも、オレ様を守りたいのか?!」  ギクリ、とキオの額に冷や汗が浮かんだ。いやいや待て。守りたいとか守られるとか、それは互いの愛情に由来する崇高な行為であったはずだ。2人の絆ゆえの話だ。  こう見えてキオは、お父さんとお母さんそれぞれの前で「息子さんをください」「僕が守ります」のプロポーズイベントを、成り行きながらもクリアしてきた身である。ムーを守るのはキオだけに許された役割だ。  しかしムーは頬を赤く熱くテカらせて、高揚の身震いに加え足踏みまでしている。 「すごいぞ! こんなにたくさん友達ができるなんて……!」  未だかつて無いほどの満面の笑みで、ムーは両手の拳を上下左右に振り回した。クネクネと拙く全身を揺らし、踊っているようにさえ見える。大喜びが過ぎる。  嘘でしょ? そんな1番カワイイ笑顔を、今?? 「……友達?」 「お……、おお! 友達、だな!」 「友達ですとも友達!」  幼少期からこれまで友達など1人もいなかったであろう王子を思い遣り、やや年の離れた友達一同は急いで頷き合った。多方面から断じて納得がいかないのはキオである。 「ちょっとムー!! 皆にそんなカワイー顔見せないでよ!! 僕にももっと笑って!! 僕だけに笑って!! あと僕は友達じゃないよね?! 違うよね?! 僕だけはもっとずっと特別だよねえ?! 」  この先はもう、すべてキオの知らない冒険になってゆく。何もかも悟った顔で、余裕綽々カリスマムーブをかましていた周回旅とは訳が違うのだ。きっと思い通りになることのほうが少ないだろう。  現に今ももう、死にそうな血相でムーにしつこく齧りつき、呆れた仲間たちに引き摺られながら、イケメンとはほど遠い惨めな格好で喚き散らしている。 「友達じゃヤダよお!! 愛してるよムー!!」 「ハイハイ」 「うるさっ」 「先へ進もうぜ」  さて、一行はこれからどこへ向かうのか。  地下宝物庫の古い文献を見た限りでは、地中に隠された幻の文明、深海に沈む海底神殿、雲の上にそびえる天空城、さらには裏ボスとやらが君臨する謎の裏世界などなど、幸い行き先には事欠かない。  そして魔王とは別体系のモンスターたちが、それらの彼方ではいくらでも湧いて出ているのだとか。おかげで体がなまる心配も無さそうだ。 「ふひひ。……オレは幸せだ」  彼はとても楽しそうに笑っている。9回目にして勇者は、初めてトゥルーエンドを手に入れた。  エンディングの先に「悪役王子」はもういない。 Fin.

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