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第19話 ジンジャーティー。

「おはようございます、ラファエル殿下」  その日の早朝ラファエルはいつもよりベッドから出ることを躊躇っていた。 「殿下、お加減が悪いのですか?」  最近ではほぼレイモンドがラファエルの身の回りのことをするようになっていたし、体調のことを聞いてくる執事も彼だった。 「……悪くはない」  むしろ体調は良いほうだった。  しかし、都合が悪かった。  レイモンドを揶揄うつもりで、自分自身がその罠にかかったような気分だった。  『何故、昨晩の痕跡を隠しもせず眠ってしまったのだろう』、と、ラファエルは後悔をしていた。  ベッドの中で自慰行為をしたことにより、余韻と日頃の疲労でそのまま眠りについてしまった。  しかもこの今自分の身の回りの世話をしている執事レイモンドが、ラファエルにとって都合の悪いことだ。 「今日の身支度は私自身でする。アラン、レイモンド、後ろを向いていろ」  今日もまたアランが託してくれた手帳には記入されていないことをしている、殿下は人を振り回すことが好きなのだ、と、レイモンドは疑問もなく素直に従った。  しかし、長年仕えていたアランはラファエルのその言動で全てを察し、微笑ましく思った。 「レイモンド、ジンジャーティーをお願いします。殿下、寝間着は私が預かります」 「わかりました」  いよいよ朝の紅茶も自分が淹れることを許されたことに、レイモンドは内心で歓喜した。  彼の視線のないところで、ラファエルは早めに身支度を整え寝間着をアランに手渡した。  アランは微笑みながら、ラファエルに耳打ちをした。 「私が専属を引退する前には、それを直してくださいね」 「……わかっている」  アランはラファエルの気持ちに気付いていた。  執事は守秘義務がある、だからこそレイモンドも汚れた衣服に関して発言することはないのだ。  『無能王子』で自分は穢れている、ラファエル自身そう思っているが、レイモンドにはその穢れすら少しでも隠したかった。  『今更取り繕ったとしても……、今更仕方がないのだが』、と、世間では誰にでも股を開く身持ちの軽い第三王子と思われているのだが、けしてそうではないことをレイモンドは知ってくれているからこそ、隠したかった。 「ラファエル殿下、ジンジャーティーをお淹れしました」  その朝はじめて淹れたジンジャーティーは互いにとって忘れられない一杯になった。

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