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これからどうなるの…

「リズト、行ってきます」 「……いってらっしゃい、母さん」 それが、母と交わした最後の言葉だった。 十五歳のリズトは、母子家庭で育った。 父親の顔は知らない。名前すら、母はほとんど口にしなかった。 「俺の父さんって、どんな人?」 昔、一度だけ聞いたことがある。 そのとき母は少し困ったように笑って、 「リズトがもう少し大人になったらね」 そう言った… だから、いつか教えてもらえると思っていた。 ――その「いつか」が来ることはなかった。 母が仕事へ向かった数時間後。 一本の電話が、リズトの日常を全部壊した。 交通事故だった。 病院へ駆けつけたときには、もう母の声を聞くことはできなかった。 「……母さん?」 何度呼んでも返事はない。 「ねえ……起きてよ」 母の手を握る。 いつもなら温かいはずの手が、ひどく冷たかった。 「やだ……」 涙が落ちた。 「俺、一人になるじゃん……」 十五歳のリズトには、その現実を受け止めることなんてできなかった。 葬儀から数日 リズトは親戚の家のソファに小さく座っていた。 大人たちが自分のこれからについて話している。 けれど、何も頭に入ってこない。 「リズトくん」 知らない男の声がした。 顔を上げる。 黒いスーツを着た男が、こちらを見ていた。 「……誰?」 男は少し黙ってから答えた。 「君の父親だ」 「…………は?」 冗談だと思った。 今まで一度も会ったことがない。 母が死んだ途端に現れて、父親だと言われても信じられるわけがない。 「嘘」 「嘘じゃない」 「じゃあ、なんで今まで来なかったの」 男は答えなかった。 その沈黙だけで、リズトの目にまた涙が溜まる。 「母さんが死んだから来たの……?」 「リズト」 「俺、あんたのところなんか行かないから!」 涙を拭いながら立ち上がる。 けれど、十五歳のリズトに選択肢はほとんど残されていなかった。 ⸻ 数日後。 車から降りたリズトは、目の前の建物を見上げた。 「……学校?」 巨大な校舎。 正門の向こうには、リズトと同年代の少年たちが行き交っている。 ただの学校ではなかった。 歌。 ダンス。 演技。 そして芸能活動。 アイドルを目指す少年たちが全国から集まる、全寮制のアイドル養成学校。 その経営者こそ――リズトの父親だった。 「今日からここで暮らしてもらう」 「聞いてない……」 「今、言った」 「そういう問題じゃない!」 リズトの目にじわっと涙が浮かぶ。 父親はため息をついた。 「寮の部屋も用意してある」 「俺、アイドルになんかならないから!」 「それは好きにすればいい」 「……え?」 「ただし、学校には通え」 意味が分からない。 母を亡くしてまだ何日も経っていないのに。 知らない父親。知らない学校。 知らない世界。 何もかもが怖かった。

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