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第13話

「それで、明櫻にはなに用かな」と、悪鬼王が聞いた。  明紅はこめかみを抑えていた手を下ろし、明櫻を見る。 「明櫻、君は私の……兄弟なんだろう?」  明紅の言葉は想定の範疇だったらしく、明櫻はにこりと笑った。 「はい」  穏やかで優しい声色だった。初めて会ったときの雰囲気とはだいぶ変わり、おとなしく穏やかな雰囲気を纏う。 「君と少し話がしたい」 「なぜ?」 「……私はずっと一人だと思っていたから」 「……喜んで」と明櫻が言った。 「清陽殿、私は明櫻と話してきます」 「ああ」  明紅は清陽に丁寧にあいさつをしてから明櫻を自宅の応接室へと招いた。  朱亮も途中までやってきて、茶を出して去っていき二人きりになる。 「明櫻、何歳だ? いや、何年生きているのかと聞いた方がいいかな」 「もう数えることはやめたけれど、あなたを兄さんと呼ぶべき年齢かと」 「そうか。年下か」 「兄さんは、あの男と会っているの?」 「父親だから?」と聞くと、明櫻はうなずく。  明紅は鼻で笑った。 「あり得ない。あいつはクズだから。それに、居場所なんてわからないし」 「兄さんも、そうなの?」  不安げな顔をする明櫻は、少しだけ幼い雰囲気だった。  兄を心配する弟。  その言葉がふさわしいかもしれない。そんな様子に守らなければいけない存在だと認識させられる。  きっと守らなくてもいいかもしれない。それでも、彼は明紅の弟だ。 「あの男は……ただ性におぼれてたまたま子供ができたから女をそばに置いた。そして女が子供を産めば、女は稀に逃げてしまう。私たちは母親に逃げられた側の存在だ」 「あの男は、女も子供も捨て、子供を女に育てさせる。それが明一族の神聖な子供でも」 「そう。あの男はまともに子供も育てられない。だから、私たちを虐待し、そして捨てる。君は死に、私は死にかけていたところを清陽に引き取られた」 「そして鬼なった私も、今の主の元に引き取られた」 「育ちは違うけれど、歩んできた道は一緒だね」  明紅はそう言って笑う。  その笑みに明櫻も小さく笑顔を向けた。 「仲良くしましょう。私の主が嫌いでも、私は嫌いになることはできないでしょう?」 「その通りだ」  眉を下げて困ったなと明紅は笑う。  結局のところ嫌いだと避けていても、悪鬼王とは協力関係になってしまった。それが縁というものだ。仕方あるまい。 「私もなにか兄さんの手伝いができるかもしれない。今回の祈祷の依頼はとても大変なはず。力を貸しますよ」 「ありがとう」  明紅は今分かっていることを話し始めることにした。

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