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「じゃあ、今すぐそれやめてもらえます?」
「あ?」
徐に指し示され、視線の先にて佇む自分の出で立ちを、何とはなしに思い浮かべてみる。
黄金色に輝く短髪、耳に幾つも連なるピアス、緩く着崩された制服、手に嵌められた指輪までを順に思い起こして、真っ直ぐに彼を見つめる。
「ああ、そりゃ無理だ。残念だったな」
「あのさァ、オレ一応風紀委員なんすけど」
「はなから仕事する気もねえんだろうが。諦めろ」
未だ野放しにされている時点で、きちんと仕事をしているかどうかは一目瞭然である。
日頃から口うるさく注意するわけでもなく、ただ単に付きまとわれているだけなので、いつまで経っても身だしなみが整う事はない。
まあ、コイツに何言われたところでやめる気なんて更々ねえけどな。
「やれやれ、やっぱ俺に掘られるしか道はなさそうっすね」
「だからお前、なんでそうなる。しかも何か、今サラッと怖いこと言ったよな? 俺がなんて?」
「え、何のことすか」
「確かめる勇気ねえわ……。こっち見んなバカ」
何だか今、とてつもなく不吉な事を言われたような気がするも、再度聞いて確かめる気にはならない。
眉を顰め、じんわりとした危機感を覚えながら困惑していると、何事も無かったかのように北見が近付き、馴れ馴れしく肩に腕を回してくる。
「何さりげなく近付いてんだよ、お前は。張り倒すぞ」
「風紀委員としては、この着衣の乱れを放っておくわけにはいかないんですよねえ」
「話噛み合ってねえし、今まで散々放っておいた奴が今更何言ってんだ」
「今までは見逃してやってただけ。俺もそろそろちゃんと仕事しないとマズいんすよね」
「ああ、そうかよ。俺がお前の言うことを大人しく聞くわけねえだろ」
「まあ、ですよねえ」
「ん……? おい、どこ触ってんだお前!」
肩に触れていた手が下がり、背中から臀部までを撫でられて仰天すると、足を掛けられていとも容易く体勢を崩される。
あ、と思った時には背中を打ち付け、痛みに苦悶の表情を浮かべていると影が降り掛かり、満足そうに見下ろす北見と視線が合う。
「お前なァッ! 何にんまりしてんだ、気色悪ィなッ!!」
「いやだって、嬉しいし」
「おっ……、犯される……!」
「はい。だからさっさと諦めてもらって」
「ちょっとした冗談に乗ってくんじゃねえ! どけコラ!!」
「冗談言う余裕はあるんすね。はいはい、お行儀良くしてくださいねえ」
どうにかして絶体絶命な危機を脱しなければ、このままでは確実に北見の餌食となってしまう。
いや待て、つうか何だこの状況、意味が分からねえ。
考えるだけ無駄なんだろうな、とは思いつつも、北見に押し倒されている状況を誰か分かるように説明してほしい。
可愛くて積極的な女の子ならまだ救いもあるが、飄々としてわがままな男子生徒の姿しか今のところ見えない。
なんかの罰ゲームかコレ……?
「つうかボタン外し過ぎなんすけど。俺から楽しみ奪わないでもらえます?」
「はあ……? 何のことだよ」
「やっぱ上から順にボタン外して、先輩の肌を少しずつ剥き出しにしていきたいじゃないですか。先輩、肌キレイっすよね」
「おっ……、お前って奴は……。て、やめろやめろ! 何をやってんだテメエは!」
「あ、なに今日に限ってきっちりボタン締めて。そんな上まで留めてんの見たことないんですけど」
「お前はいい加減そこをどけ……!」
「はい、いやです」
「俺も嫌なんだよ、分かるだろ」
薄ら寒い気持ちを味わうも、憎たらしい後輩といえば至って平常心を保っている。
北見から繰り出された薄気味悪い言葉の数々に疲弊するも、現状は変わらず窮地に陥っており、我が身の情けなさを嘆いたところで事態は好転しそうにない。
「まあ、お互い分かり合えたところで早速」
「分かり合ってねえんだよオォッ!!」
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