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第8話
「あっ…あ…、衛、やあっ」
稔さんの声が艶っぽさを増し、充分に解して緩んだところで、自分のモノを当てがいながら彼をうつ伏せにし、腰を抱えた。襞をかき分けながら、ゆっくりと彼の中に自分を収めていった。稔さんはこれ以上はしたない喘ぎ声を僕に聞かせたくないのか、枕に顔をうずめている。白い背中には肩甲骨と背骨がくっきりと浮かびあがり、痩せた身体を強調していた。
稔さんを激しく突き上げながら、以前彼が、さらっとして少し冷たくて気持ちいいと言った僕の手のひらで、背中から脇腹、胸へとマッサージするように撫でていく。陶器のような滑らかな肌は、僕の手のひらに吸い付くようだ。
稔さんの背中に覆いかぶさるように僕の胸を付け、きつく抱きしめると僕たちは同時に果てた。
稔さんを胸に抱いて横になり、気持ち良さそうに寝息を立てている彼のさらさらした茶髪を指で梳いていた。
稔さんは、今日のカフェでの待ち合わせで30分遅れた僕を、そんなに待っているようには見えない態度でいたことでも分かるように、日頃、僕に対して特に熱い気持ちがあるようには思えない。まあ、世の中全般に対してそんな態度なので、僕を嫌いなわけではないだろうが、大好きかと言われるとそれは疑問だ。だが、そんな淡白な稔さんがセックスには貪欲で、僕はいつも戸惑うのだ。
稔さんが好きなのは僕なのか、僕とのセックスなのか、そんなことを考えながらしばらく髪を梳いていると、彼が目覚めたようで寝息が止まった。
「稔さん、初めてセックスした時のこと、覚えてますか?」
彼はまだよく目覚めてないのか、僕のそばでモゾモゾしていた。
「稔さん?」
「…うん、覚えてるよ。俺を君が襲った日のことだろう?」
「や、そんな…」
明らかに動揺している僕を見上げて、稔さんは面白そうに笑った。
「僕はあの日、確かに君に襲われた」
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