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第1話
人間を拾った。
正確には狩りをしていたら青年が森の中で倒れていたのを発見したため保護をした。
彼は一目でこの世界の人間ではないと分かった。
大きな木の幹の元で目を閉じて凭れ、まばゆい太陽の光を浴びて柔らかな心地よい風にさらさらと揺れていたのが美しい銀髪だったからだ。
私たちの住む世界に銀髪は存在しない。
もしそのような人間を見かけたら―異界の旅人<プラネース>—だと言われているのだ。
「……うーんと、これは夢?」
客室の寝台で目を覚ました彼が最初に発した言葉がそれだった。
それよりも銀の髪とは対照的な吸い込まれそうな漆黒の瞳と男性にしては少し高めの柔らかな音色の声に興味が惹かれた。
傍に控えていた宮仕えの治療師が青年を診ると、栄養不足以外は問題なさそうです、と言って去って行った。
メイドに簡単な食事の用意を頼み彼を見ると上半身を起こしてゆっくり首を動かし部屋を見ていた。
「ねぇ、ここどこ?」
「クレール、という都市だ」
「くれーる……?」
こてんと首を傾げている。初めて聞いた都市名のようだ。
大陸一大きい大都市クレールを知らないとなると……やはり信じがたい事だがこの世界の住人ではないのか?
「君はどこから来たのだ?」
「んー……日本ってわかる?」
今度はこちらが首を傾げなければならないようだ。
「だよね」
青年は何かを納得したようだった。
「私はシャルル。君の名を教えてくれないだろうか」
「貴族っぽい名前だね。僕は佐藤静臣だよ」
さとう……しず……口の中で絡まりそうな名前だ。こちらではない並びの名前で言い淀んでしまう。
それに貴族っぽいとはなんだ。私は王子だ。
「佐藤が苗字で静臣が名前。言いにくいならシズでいいよ」
日本でもそう呼ばれてたんだ、と本人が言うのなら、とそう呼ばせてもらう事にした。
自己紹介も済んだ頃に扉を控えめに叩く音と、メイドの軽食をお持ちしましたの声に入室を許可する。
米をスープで柔らかく煮込んだ料理だ。
城では体調が悪い時に良く料理長が作ってくれる。
料理を必要としているのが倒れていた客人だとメイドからでも聞いたのだろう。気が利く。二人掛けの小さなテーブルに準備を終えたメイドは一礼をして静かに下がった。
彼に是非食べるように勧めると寝台をゆっくりと降りてリゾットだぁ、と少しばかり嬉しそうに目を細めて着席し食べ始めたのだが、ここまでの所作が我々王族のように美しい。
どこかで学んだのだろうか。
同じテーブルに着き、食べる姿を失礼のないように僅かに視線を外しながら観察しているとシズが不意にこちらを見てきた。
「シャルルはお金持ち?」
「まぁ、そうだな」
「そっかぁ」
またしても何かを納得したようでそれきり食べ終わるまで一言も会話はなかった。
けれどそれが何故か嫌ではなく、むしろ心地よく感じたのは彼の柔らかい雰囲気のせいだろうか。
「ごちそうさまでした」
両手を合わせて呟くと美味しかったよ、とへにゃりと笑った。
手を合わせるのは儀式か何かだろうか。折を見て聞いてみよう。
それよりも彼の今後の事を含めて色々話さなければならない。
異界の旅人<プラネース>であることは出身国や、名前、それに特徴的な髪色からして文献と相違なく間違いないだろう。
食器を片付かせた後に人払いをし、改めて彼と向き合う。
「君はどうして森にいたのだ」
「んー……どうしてって言われても困るかなぁ」
「何故だ」
「気が付いたら森で彷徨ってる内に倒れちゃったみたい?」
つまり、本人もわからないという事か。
詳しく聞いてみても森にいた経緯は覚えてないという。
ただ、日本という国にいて生活していた。お兄さんみたいな金髪碧眼のイケメンは海外にいかないとあんまりいなかったかなあ、と。
海外、ということは日本という国以外にも国があったということだ。
彼の暮らしていた世界は広いようだな。
それはそうとイケメンとはなんだ。
「驚かないの?」
「驚く、というよりは興味深い」
「ふーん?」
そういう彼も自分の住んでいた世界と違うことをあっさりと受け入れているようにも見える。
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