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義兄弟の災難*
ティルの部屋のベッドで、リュートと肩を寄せ合って眠った。寝る前も触り合って、達して、どれだけ重ね合っても足りないと互いを求め合った。疲れ果てて二人で寝落ちしたのは、いつだっただろうか。
スマホのアラームの音。微睡みの中で昨夜のことを思い出しながら、ティルはのっそりと半身を起こした。掛け布団をしっかり握って丸くなって眠るリュートにまたしても、可愛いと欲情するめちゃくちゃな感情を抱いたまま、ティルはリュートを揺すった。
「起きろ。準備すんぞ」
「ん……」
鼻にかかった声。朝勃ちに響く。悪戯心で、布団を捲り上げ、リュートの朝勃ちしたそれに手を這わす。びく、と身体が揺れて、ん、と鼻にかかる声が甘くなっていく。パジャマのズボンのゴムを伸ばして直接触れてやると、
「あっ」
流石に声が出て、すぐにぱち、と目を開ける。慌てたように自分の下半身とティルを見て、リュートが唇を尖らせた。
「もう!何してるの!」
「お前が起きないから」
「だからって触らなくても」
「寝てるときにどんな反応するのか気になってな」
握ったままのそこを、上下に擦る。リュートがじわじわと目に涙を溜めて、小さく、だめ。と呟く。
「何が駄目なんだ?」
「出社……」
「もう休もうぜ。副会長が許可してんだからいいだろ」
ティルの家が経営する商会。会長はもちろん父だが、ティルは副会長である。強権でそう言うと、リュートは快楽の波を漂いながらも、首を横に振った。
「だめ……今日から、1Q決算だかっ、あっ」
「じゃあこのままお預けでもいいのか?」
「……触らなきゃこんなことにならないのに。我慢します……」
断腸の思い、と顔に書いてある。そっとティルの手首を掴んで引き離すリュート。いじらしいなぁと思いながら、ティルは手を伸ばして、リュートの頭に、ぽん。と手を置いた。
「じゃ、起きるか」
「急がないと。普段の準備の時間より遅くなってる」
二人で慌ただしくベッドから下りて、リュートが自室に向かう。流石にクローゼットの中身までは入れ替えできなかった。リュートの服はまだ前の部屋に残っている。
ティルもクローゼットを開けて、パンツ、ワイシャツ、ネクタイと取り出してベッドに放り出す。ささっと服を脱いで、着替えて。ネクタイを結んだ、そのときだった。
「あんっ」
何故だかリュートの部屋から艶めいた声がした。何事かとネクタイの結び目を慌てて締めて、リュートの部屋へ。一応ノックするが返事はない。仕方がないので、入るぞ、と一声かけてから中へ。
下に着るシャツに袖を通した姿のまま、ぺたんとへたり込んでいるリュートがいた。
「何してんだ?」
「ティル……」
潤んだ瞳。完全に発情した顔だ。ティルが触れてもいないのに何がリュートをそんな顔にしたのかと何となく腹が立ってくる。だが考えても犯人が思いつかない。なので、
「オナってたんか?」
と尋ねた。だってそれしか思いつかない。先程まで触れていたことだし、耐えられなかったのかと。するとリュートは首を横に振って、ちがう。と小さく言った。
「じゃあ何でそんなになるんだよ。誘ってんのか?」
「ちがう……その」
リュートは言いにくそうに言葉を切って、それから言った。
「シャツが、」
「はあ」
「胸に擦れて……ずっと触れてるものでしょ?もう無理で」
「……いや、おかしくね?お前これまでそんなことなかったじゃん」
昨日を境目に、何かが変わってしまったというのだろうか。そう思ってへたり込んだリュートの前にしゃがみ込み、シャツを捲りあげる。また、あっ、とエロい声がしたので、もうそろそろ自分も限界かもしれないとティルは思った。
そして、
「あー……」
ティルが、納得したと、そっとシャツを戻す。
初めて通じ合った嬉しさで、昨日は何度も互いを貪った。食事、排泄、睡眠、それ以外の時間は互いの身体のどこかを触っていた。
中でも胸は、確かに必ずと言っていいほど触れていたような気がする。だってリュートが本当に気持ちよさそうに悦がるから。可愛い顔と声が聞きたくて、舐めて、摘んで、何度もリュートを鳴かせた。イカせた。
結果、胸の先端が腫れた。見ただけでわかる。薄いピンク色だったそれが、誘うような朱色に染まっていて、ぷっくりと存在を主張するように立ち上がっていた。そりゃあ擦れれば声が出るだろうし、堪らなくて発情したように顔も色付く。
「しかしどうすんだよ。体調不良で休むか?腫れが落ち着くような薬買ってくるから」
「だから……」
「あー。1Q決算な。お前固定資産担当だから、役員会の資料もあんのか」
「そう……シャツ着るの、やめておこうかな。少し服と肌の間に空間ができれば、ちょっとは」
「……」
肌に直接ワイシャツを着るということか。夏なら肌が透けてとんでもないことになるだろうが、今はスーツを上に着ている。それなら何とかなるだろうか。
「……」
どうにも、それで解決するとは思えない、ティルであった。
出社は車を回してもらった。普段ならリュートの希望で一緒に公共交通に乗っていくが、万が一を考えて今日は二人で車で出社した。
(電車なんて乗せられるか)
部屋にいたときよりは落ち着いているが、まだどこか頬に色が残っているし、散々潤んだ瞳はまるで情事の後のような切なさが浮かんでいる。
正直この顔のリュートを経理部に放り込むのは嫌で仕方がないのだが、本人が決算作業を放り出せないと意気込んでいるので諦めるしかない。
「ほら」
ティルが渡したのは、冷やしたペットボトルだった。
「顔に当てとけ。んなエロい顔して出社すんな。俺が会社燃やすぞ」
「燃やさないで」
ふふ、と笑って、リュートが頬にペットボトルを当てる。きもちー……と呟いているのを見ると、常時熱をもったままというのも大変なのだなと頭の悪いことを考えた。
車が会社のエントランスに着く頃にはリュートも落ち着いていて、これなら大丈夫そうだなとティルは一安心した。ペットボトルを回収して、じゃあ、また。と手を振って離れる。
すると、すっと横から秘書が現れる。非常によくできた、影にもなれるし前にも立てる、そんな秘書だ。彼はティルの横に並んで歩き出すと、
「本日の予定ですが」
と話し出す。一時間刻みのスケジュールだ。今日もこの後、取引先の社長とクロージング商品に関する打ち合わせ、製品の原材料の変更に伴う価格改定に関する社内会議、などなど。午後からはほとんど来客対応ばかりだ。
「俺の机の上に積んである稟議や決裁以外の書類は代理で捌いておいてくれ」
「かしこまりました」
「……クロージングの件の後、少し時間あっかな」
「三十分ほどでしたら」
「……そうか」
その間に、一度経理部に顔を出そう。そう思って少しだけ口元を緩ませる。秘書がじっとティルを見ていたので、ジト目を向けて黙らせた。
予定どおりに打ち合わせを終えて、ティルは経理部の扉を開けた。副会長の来訪に驚く――ということはない。リュートのことが心配でちょくちょく様子を見に来る義理の兄というのはすっかり知れ渡っている。
部屋を見回しても、リュートがいない。どこに行ったのだろうか。
「なあ」
ティルは、近くの席に座っていた社員に声をかける。
「副会長、お疲れ様です」
「お疲れ。リュートどうした?」
「ああ……体調不良ということで、休養室行きましたよ」
「体調不良?」
「ええ……顔もすっかり上せてましたし、目もすっかり潤んで……かなり高熱なんでしょうね。辛そうでした。帰るように部長からも声はかけたのですが、少し休めば大丈夫だからと」
「……」
駄目だったらしい。
ティルは痛む頭を押さえて、教えてくれた社員にありがとうと一言告げ、経理部の部屋を出た。廊下を早足で歩いていると、影のように秘書がついてくる。
「どうされましたか」
「急用だ。お前はここで待ってろ。ついてくんな」
「かしこまりました」
秘書の気配が遠ざかる。ティルは早足から駆け足になって、休養室に駆け込む。
いくつか並んだベッド。扉から見て一番奥に、リュートが横になっていた。
「リュート」
声をかけると、びく、と肩を揺らして、そろそろとティルの方を向く。リュートの顔はすっかり蕩けきっていて、何が起こっているのかを語らずとも伝えてくる。
「駄目だったか」
「ん……だめ、だった」
目尻に溜まった涙を指で掬い取る。ティルの方を向いたときにまた胸が擦れたのか、ズボンのファスナー辺りの染みがじわりと広がった。
「もういっそトイレで抜いてこいよ。その方が楽なんじゃね?」
性的快楽で頭から爪先までおかしくなりそうだというのなら、出してすっきりするというのは現実的な解決策だ。ティルは至って真面目にそれを提案すると、うるっとした瞳が、ティルを見上げた。
「……ティルじゃなきゃ、やだ」
「は?」
「ティルの手と身体以外で、イキたくない」
何ということを言い出したんだろうか。俺を殺す気か?こちらもまた至って真面目にそう思う。ほら、俺だって勃つだろうが。
「……会社で言うことじゃ、ねぇよな?経理のホープが」
嘲るように言うと、リュートがぶるっと身体を震わす。はぁっと熱っぽい吐息が零れて、もぞっと身体を揺らす。
「ごめ……なさぃ」
「その顔で数時間でも仕事したのか?一体何考えて仕事してたんだよ」
「っ……」
羞恥に視線を逸らし、ズボンに染みを広げ、リュートが言った。
「もう帰ろう?――抱いて」
「帰るか。俺も無理だわ」
スーツを脱いでから、歩けなさそうなリュートを横抱きにする。それから脱いだスーツをリュートの腹の辺りにかけてやる。これで社内で見られても、濡れたあられもない下半身を見られることはないだろう。
足で休養室の引き戸を開けて、少し歩くと、秘書が律儀に待っていろと言った場所に立っていた。
「おい」
「はい、なんでしょう」
「今日のこの後の予定、全部リスケしておけ」
「承知いたしました」
「それから車回せ。帰る。リュートも調子悪いみたいだから、経理部長に言っとけ」
「……副会長も、お帰りに?」
「そうだよ。弟が調子悪いんだ。看病したっていいだろ」
「……そうですか。わかりました」
ちら、とリュートを見て、それから秘書が去っていく。歩きながらスマホで電話をしていたので、もうすぐエントランスに車が入ってくるだろう。
「……あの秘書さん」
「あ?」
リュートが、少し不安そうに、呟いた。
「ティルのこと、好きなんだね」
「はあ!?」
何を言い出したんだリュートは。意味がわからず、どういうことかと視線で問うと、リュートはふふ、と小さく笑った。
「見てたらわかるよ」
「男だろ、あいつ」
「俺も男だよ」
「……」
何も言い返せない。そうだった。俺達の恋愛に、性別なんて関係ないんだった。
しかしまあ、どうしたものか。有能な秘書だったのだが、そういった私情を持ち込まれるとやりづらい。これまでリュート以外目に入らない生活をしてきたから、そういう他者の視線は、考えたこともなかった。
「秘書課長に言っとくわ。外せって」
「そんなの可哀想だよ」
「お前誰の味方なんだよ……」
自分にとって横槍に当たる相手を庇うなんて、本気でリュートの考えていることがわからない。普通、排除されるなら喜ぶのではないのか?
車がエントランスに停まる。一旦それは棚上げして、ティルはリュートを連れて車に向かった。
家に着く。リュートを下ろすと、玄関の鍵も閉めずに首に腕を回し、キスをしてきた。本当に限界なんだな、俺も限界だよ、と内心で応じて、その唇を受け止める。その間に後ろ手に鍵をかけて、くちゅ、と水音をさせながら唇を貪る。濡れてぬらりとした唇を今度は深く咥え込んで、舌を差し込む。リュートから差し出された舌を吸い上げて、抱き締める。腰から尻をまさぐると、ふぅっ、と愛らしく声が漏れた。
唇を離して、鼻先で問いかける。
「ここですんのか?」
「やだ……ベッド行こう?」
「はいはい。襲ってきたくせに」
「だって」
リュートから腰を押し付けてくる。硬い質量を感じつつ、ひょいともう一度横抱きにする。
「重くないの?」
「軽い。もっと食え」
むぅ。とリュートが唸る。どうして俺の恋人はこんなに可愛いんだろうなと思いながら、自室のベッドにリュートを転がす。きて、と両腕を伸ばすリュートを、押し潰すように抱き締める。そのまま首筋に舌を這わしてやると、リュートから、あっ。と甲高い声が漏れる。どこもかしこも感じる身体で、これまでどうやって生きてきたのだろうか。ちょっと触れられただけで熟れたさくらんぼのようになるくせに。
ティルは、リュートの骨盤の上に跨って上体を起こす。ワイシャツを脱いで、下着も脱ぎ捨ててベッドの下へ。リュートのワイシャツのボタンを外して、はだけさせる。今日の一番の問題――胸の、先端。そこが赤く立ち上がって主張していた。
「……ティル」
「何だ?」
「いっぱい焦らして……ね?俺、」
可愛いお願いもあったものだ。弟の望み通りにしてやろう。
乳輪の形に添って、人差し指でなぞる。先端に触れないように、じわりと触れる。両手でそうしていると、リュートが切なげに顔を歪めて、
「あ……ぅう、やあ……っ」
喘ぐ。身体を捩らせ、腰を揺らし、柔い刺激にのたうつ。
「どうした?焦らしてって頼んだの、お前だろ?」
「っ!あ、だ、ってぇ」
ほんの一瞬、爪を先端に引っかける。
「ああっ!」
リュートから甲高い声が漏れる。可愛い。焦らされて、余計に集中したせいで、またそんなことに。
頬を上気させ、はっ、はっ、と短く呼吸を漏らし、欲望に染まった視線をティルに向けてくる。何をして欲しいのか、どうされたいのか、全部がその視線に乗っていて、一度キスをする。
「そんな目で見んなよ。突っ込みたくなる」
「あ……」
「でもこんなの、勿体ないしな。俺も楽しみたい。お前が狂ってるところ」
胸に顔を寄せ、口に含む。舌で包むように舐めとりながら、片方の手で摘まむ。
「ひぅっ……!」
息を呑み込むような悲鳴を上げて、びくん、と腰が跳ねた。ああ、イったのか。そのまま舌で嬲り、指先で捏ねる。リュートは、
「まっ、ああっ、まだっ……!」
苦情は無視する。だってイイんだろう?
「いあっ……!てぃ、るぅ……!」
首を横に振って、来る波を逃そうとする。そんなことでどうせ逃げられないのに。
「あっ、ああああああっ!?」
リュートの腰が再び跳ねる。射精したのか、ドライオーガズムを迎えたのか、ちょっとわからないが。どこか弛緩したリュートを感じて、胸から離れる。
「あ……」
空気の抜けたような声を零して、リュートがティルを見上げる。
「とりあえずズボン脱ぐか?気持ち悪いだろ」
「ん……」
リュートが小さく頷いたので、ベルトを引き抜き、ズボンとパンツを下ろす。先走りと、精液とでぐちゃぐちゃのそれを見て、洗うの大変だろうな……と他人事のように思った。
自分もズボンとパンツを脱ぎ捨て、リュートの太ももの裏を持ち上げる。もう限界なんだよ。
「……入れる?」
きょとん、と尋ねてくる。
「駄目か?」
嫌だっただろうか。無理矢理致すのは本望ではない。ティルがそう尋ねると、リュートは首を横に振った。
「俺、壊れるんじゃないかな……」
「心配すんな。壊れても俺が引き取るから。安心して堕ちろ」
「ふふ……」
その笑いは合意ってことでいいんだな?と自分に言いながら、ティルはリュートの穴に、押し当てる。昨日からずっと解しっぱなしのそこは、最初ほど抵抗することなく、ティルのそれを受け入れる。
「はぅっ……」
リュートから息が漏れる。こちらも最初ほど苦しそうではない。慣れってすごいな。
「くっ……」
慣れたとはいえ、相変わらずきつい内部。すぐに持っていかれそうなのを堪えて、抽挿。リュートの腰を掴んで上下に揺らすと、
「あああっ、あ、ああ!?」
「ここが、いいんだよ……な?」
「いっ、いあああ、イく、いっちゃ ……ああっ」
身体を何度も痙攣させ、あ、あ、と悦楽に染まった息を吐く。本当、何回でも達するのは、羨ましいんだか、何なんだか。
「まだ、イケるよな……?」
「あっ、は、い……っおねが、ぃ」
何で急に律儀に、はい、なんて言い出したんだろう。ちょっと混乱してんのかな、と考えながら、再度、リュートがイイと言った箇所を擦る。
「ああああああああっ!」
もう喘ぎ声もバリエーションがないのか、声を上げて、また達して、ぐったりと首を横向きに倒す。
「何回イクのか、一回試してみたいよな」
ぐ、っと腰を押し付けると、また、あう、と呻く。
「お、れ……死んじゃ」
今ですらいっぱいいっぱいなのに、といいたげな瞳。腰を一度止めて、頬を手の平で撫で、腰を屈めてキスをする。
「いっぱい、気持ちよくなりたくね?」
「……なりた、い。かも」
「じゃあそのうち試すか」
言うだけ言って、ティルは前後にリュートを揺する。そろそろ自分も出し切ってしまいたい。
「あっ、あっあああ!ティルぅ……!」
「い、くぞ……!」
ぱん、と身体同士がぶつかる音。ぐっと奥の奥まで押し込んで、吐精した。
「つーわけで、これ塗っておけ」
「……なにこれ?」
ベッドで二人、腰掛けながら、ティルは先程、会社から帰る前に薬局で買ったそれをリュートに手渡した。
「馬油だ」
「……?」
「乳首が腫れて擦れて感度も上がってるお前を見るのは正直堪らんが、日常生活に支障出るしな。それ塗っとけばよくなるから」
薬局に車をつけて、どうしたらいいかスマホで調べた結果、授乳する女性が使うと書いてあった。まあある意味リュートも同じ状況か……?と考えたことを、彼に伝えると、心底複雑な表情をした。
「……まあ、同じかもしれないけど」
「女性用ってわけでもないし。使っとけ」
「……はぁい」
ティルが差し出すそれを受け取って、暫く眺める。蓋を開けて、においを嗅いでみて。そして。
「塗って」
「は?」
「ティルが俺に塗って」
「何で?自分でやれよ」
「ティルにやってもらわないと使わないから」
「いや、それで困るのお前じゃあ……?」
リュートの言い分に疑問を感じつつも、ティルは馬油を受け取って、指先につける。胸に塗るという作業自体が、何だか背徳的に思えて、妙にどきどきしてしまう。
そろそろと指先を近づけ、円を書くように塗ると、
「あっ……」
当然のようにリュートが声を上げた。ですよねぇ!と思いながら雑念を何とか横に追いやって、もう片方に指を伸ばす。
「んっ!」
……
「お前なあ!」
「てぃるぅ……」
「こんなん無限ループだろ!今日は駄目!もう駄目だかんな!」
「やだあ!抱いて!」
リュートが腕を伸ばしてくるのを躱して、ティルはベッドから下りる。リュートが追いかけてきて、部屋の中を裸で走り回る。
――俺、何してんだろうな。
と、心のどこかで、思った。
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