10 / 10
第10話
「言っただろ? 可愛いって思ってるって。あれ、本心だから」
「可愛くなんてないですよ。自分でも捻くれてるって知ってます。もっと素直になれれば良いのにって」
「よし、じゃあ裸の付き合いしようか」
「え?」
桐江は立ち上がると、浴室へと移動する。
少しして帰ってくると、一緒に風呂に入ろうと雪乃の手を取った。
「温泉なら雰囲気出たけど、今日のところは裸の付き合い(仮)で」
「あはは。温泉とラブホテルじゃ全然違うじゃないですか」
「でも裸の付き合いって本当に効果あるんだよ。身に纏うものがなくなれば、人は誰だって素直になれる」
言いながら、雪乃の髪をくしゃくしゃに撫でる。汗ばんで湿った髪は元通りにはならない。それを見て桐江は笑った。
「一人で入るは禁止だからね」
雪乃の手を引いて脱衣所へ連れて行く。ガラス張りの浴室は既に湯気で曇っている。
中に入れば羞恥心は消えるのか、しかし桐江の目の前で服を脱ぐのは憚れた。
対する桐江は躊躇いもせずシャツを脱ぎ、引き締まった腹筋を露わにした。服越しには分からないものだ。思わず見入ってしまう。
「何かスポーツでもされてたんですか?」
「学生の頃はバレーやってたけど、社会人になってからはたまにジムに行くくらいかな」
自分の体は見られたくないと思っているのに、桐江の割れた腹筋から目が逸せない。
「触ってもいいよ」くっくっと喉を鳴らして笑われてしまった。
「いえ、大丈夫です。すいません」
慌てて自分のシャツのボタンに手をかける。逆に見られるかと警戒したが、桐江はさっさと脱いで浴室へと入っていった。
(僕の裸なんて興味ないよな)
どことなく自意識過剰だったと肩を落とした。
ドア越しにシャワーの音が聞こえる。
これが本当に温泉なら、ここまで意識しなくて済んだはずなのだが、場所が悪い。
頭の片隅にずっと“ラブホテル”というのが引っかかっている。
シャワーを浴びる桐江を想像しただけで、その色気に当てられそうだった。
「でも、早く入らないと不自然だし……」
一つ息を吐いて気合いを入れる。そっとドアを開け、壁際に身を寄せた。
静かに入室したにも拘らず、桐江はこちらを振り返り手を伸ばす。一緒にシャワーを浴びようというのか。妙に体を隠すのも不自然で腕は下ろしていたが、桐江のように筋肉のないひ弱な体が恥ずかしかった。
桐江は雪乃の頭からシャワーをかけ、後ろを向かせるよう促した。
シャンプーを手に取り、ある程度泡立てると雪乃の頭を洗い始めた。
「自分でできますから」
「いいの、俺がやりたいから。もう少し上向ける?」
「はい」
身を委ねて洗ってもらう。気持ちいい。
美容室でやってもらってるみたいで、立ったまま寝られそうだ。心地よい圧に、雪乃は目を閉じた。
ともだちにシェアしよう!

