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第10話

「言っただろ? 可愛いって思ってるって。あれ、本心だから」 「可愛くなんてないですよ。自分でも捻くれてるって知ってます。もっと素直になれれば良いのにって」 「よし、じゃあ裸の付き合いしようか」 「え?」  桐江は立ち上がると、浴室へと移動する。  少しして帰ってくると、一緒に風呂に入ろうと雪乃の手を取った。 「温泉なら雰囲気出たけど、今日のところは裸の付き合い(仮)で」 「あはは。温泉とラブホテルじゃ全然違うじゃないですか」 「でも裸の付き合いって本当に効果あるんだよ。身に纏うものがなくなれば、人は誰だって素直になれる」  言いながら、雪乃の髪をくしゃくしゃに撫でる。汗ばんで湿った髪は元通りにはならない。それを見て桐江は笑った。 「一人で入るは禁止だからね」  雪乃の手を引いて脱衣所へ連れて行く。ガラス張りの浴室は既に湯気で曇っている。  中に入れば羞恥心は消えるのか、しかし桐江の目の前で服を脱ぐのは憚れた。  対する桐江は躊躇いもせずシャツを脱ぎ、引き締まった腹筋を露わにした。服越しには分からないものだ。思わず見入ってしまう。 「何かスポーツでもされてたんですか?」 「学生の頃はバレーやってたけど、社会人になってからはたまにジムに行くくらいかな」  自分の体は見られたくないと思っているのに、桐江の割れた腹筋から目が逸せない。 「触ってもいいよ」くっくっと喉を鳴らして笑われてしまった。 「いえ、大丈夫です。すいません」  慌てて自分のシャツのボタンに手をかける。逆に見られるかと警戒したが、桐江はさっさと脱いで浴室へと入っていった。 (僕の裸なんて興味ないよな)  どことなく自意識過剰だったと肩を落とした。  ドア越しにシャワーの音が聞こえる。  これが本当に温泉なら、ここまで意識しなくて済んだはずなのだが、場所が悪い。  頭の片隅にずっと“ラブホテル”というのが引っかかっている。  シャワーを浴びる桐江を想像しただけで、その色気に当てられそうだった。 「でも、早く入らないと不自然だし……」  一つ息を吐いて気合いを入れる。そっとドアを開け、壁際に身を寄せた。  静かに入室したにも拘らず、桐江はこちらを振り返り手を伸ばす。一緒にシャワーを浴びようというのか。妙に体を隠すのも不自然で腕は下ろしていたが、桐江のように筋肉のないひ弱な体が恥ずかしかった。  桐江は雪乃の頭からシャワーをかけ、後ろを向かせるよう促した。  シャンプーを手に取り、ある程度泡立てると雪乃の頭を洗い始めた。 「自分でできますから」 「いいの、俺がやりたいから。もう少し上向ける?」 「はい」  身を委ねて洗ってもらう。気持ちいい。  美容室でやってもらってるみたいで、立ったまま寝られそうだ。心地よい圧に、雪乃は目を閉じた。

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