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01 愛して、愛される

世界はこんなにも色鮮やかだっただろうか。 目につくもの全てが煌めいて見える。 窓辺のカーテンも、床に落ちた俺のシャツも、無造作に放り出されたヨゼフの靴も、俺の自室に比べて質素なこの部屋の何もかもがまるで王に献上された至上の品のように思えてくる。 ああ、今俺とヨゼフの体が国元にあるのなら、聖歌隊を呼びラッパを鳴らして象に跨りそのまま王都を行進し、王国中にヨゼフが俺のものだと知らしめて回るのに! 残念ながら、今俺は留学中の身で到底叶わない。否、ヨゼフとこうして結ばれることが出来たのだから全く残念ではない。寧ろ僥倖だ。俺をこの国に送ってくれた父上には百回口付けてもまだ感謝したりない。 あまねく我らを天より見守る太陽神、ソールよ。 あまねく我らを天より支える月光神、ルーナよ。 ああ、どうか。聞いてほしい。驚かずに聞いてほしい。驚いても良いから聞いてほしい。 ――ヨゼフが、俺を好きだった。 ヨゼフが俺の首筋に顔を埋めて、震える声で「好きだ」と言った。一度だけではない。何度も。 「かわいい」とも言われた。俺が、かわいいと。 『卒業後は俺の国に来い! 俺のそばで働け! 俺はお前が欲しい!!』 『行かねえよ、しつけえ……いやまじでしつこいなお前追いかけてくんなよ足早いな!?』 何度口説いても素っ気なかったあのヨゼフに。 俺がこの国に留学してから早八年、故郷を恋しがり泣いていた俺を慰めてくれたあの日から、追いかけては躱されることが常だったあのヨゼフに。 「お前が欲しい!」と言う度に脱兎の如く俺から逃げ続けていたあのヨゼフに。 「俺の国に来い!」と誘う度に「行かねえ」と拒み続けていたあのヨゼフに。 あのヨゼフに! 『アレクセイ、好き、……かわいい、俺の、俺のアレクセイ……っ、俺のだ、……ッおれの』 信じられないことに、何度も、何度も、乞うように、甘やかすように囁かれた。 思い出すたびに、頬が緩むのを止められない。 隣で寝息を立てているヨゼフの横顔を見る。ただ寝ているだけなのに、睫毛の一本一本まで愛おしい。 手を伸ばして触れたい衝動を、なんとか堪える。 「……ヨゼフ」 呼びかけると、ヨゼフが億劫そうに瞼を開けた。その瞬間、俺の中で何かが弾けた。 「体はつらくないか!?」 がばりと起き上がる。途端に先ほどまでヨゼフがはいっていたナカが少し収縮して、背筋が震える。 思わずシーツをぎゅうっと握りしめてしまった。ヨゼフの指で丁寧に解されたそこは、その後散々可愛がられたこともあってか、痛みが後を引いている。 『よ、ぜ……っ、ヨゼフ、ッひあぁ、やっ! あぁ、ん……ッ、ひぅ、ぁ……』 『っは、好き、好きだっ、……ッふ、ッアレクセイ、気持ちいい?』 混ざり合いながら室内に響く、耳を塞ぎたくなるようなひどい水音と肌がぶつかる乾いた音が、まだ耳の奥に残っている。 『ア、ひあ、ぅ……っ! ん、っれも、俺も、すき、……っ、きもちい、……ッすき、よぜふ、あ、あ、あァ……っ』 『ん、……ッなあ、アレクセイのこと気持ちよくしてんの、俺だよ、……っ俺だけ、俺の、……アレクセイッ、アレクセイ、誰の? 言える? なあ』 『ヨゼフっ、よぜ、ヨゼフの……ッ、やっ、ァあっ』 きつく締まった肉襞をかき分けるように挿入された熱は、硬く滾っていた。くるしくて、きもちよくて、頭がおかしくなる。これまで知らなかった弱いところを突かれればもう意味のある言葉を紡ぐことが出来なくて、情けない声ばかりが上がった。 伝えたいことが、伝えなければならないことが山程あるのに、上手くいかない。ヨゼフへの恋心が詰まった雫が、言葉の代わりにぼろぼろと溢れては頬を伝ってシーツに落ちていく。 必死に手を伸ばすと、整った鼻梁の下にあるしっとりとした唇が綻んだ。繋がったまま体を起こされて膝に乗せられる。自重で更に奥まで押し入られ、背中が弓なりになった。 『ひあっ、あ、ああ゛――ッ』 『ッ、はぁ、ッ、くそ、っ、かわい、どうにかなりそ、……力抜いて、っアレクセイ、あれくせい、すき、……っあれくせい、かわいい、可愛い、好き』 耳元で、聞いたことのないような甘い声がした。ぞくぞくと感じ入ったナカが、逃がさない、とでも言うように咥えたそれにしゃぶりついて、さらなる快楽を強請る。 過ぎる刺激から逃げようとしても、ヨゼフのそれがイイところに押しつけられたままで動けば動くほどそこへ擦りつける形になってしまう。前立腺を押し上げる動きと、それに合わせるように外側から押し込むヨゼフの動きに腰が勝手にくねる。 絶頂の最中も突き上げる動きを止めてくれないせいで身体は悲鳴を上げていたのに、ヨゼフが俺の体で快楽を得てくれていることが嬉しくて、唇が勝手に「もっと」とはしたない欲を口走る。 ヨゼフは下から俺を見上げている。蜂蜜色の眸が、とろりと熱っぽく潤んでいた。 『うあ、ぁああっ、んッ、ああ、あっ、きもちい、きもちいい……っ、よぜふッ、も、っと、すき、……ッ好き、っよぜふ、ッ』 『はっ、アレクセイ……ッ、すき、好きだよ、……ぁっ、俺もイイ、……ッはぁ、すげえ、きもちい』 はあ、と熱い吐息が肌に触れる。腰を強く掴んだ手に力強く引き寄せられ、狭い媚肉に押し入った熱が奥を叩く。同時にヨゼフが、俺の首元へ噛みついた。ぞくぞくとした痺れにも似た快楽が全身を巡り、かくん、と力が抜けた拍子に、ずぶっと更に奥へ肉棒が入り込む。 『ぁああっ、んッ、ァアっ、――…ッ』 ナカに感じた熱い飛沫に身を震わせながら、とろりと体液を漏らした。 「………」 体の痛みで、つい今夜の素晴らしい出来事を思い出してしまった。 俺の十八年の人生の中で、間違いなく最も充実した時間だった。 繋がって、融け合って、愛して、愛される。 恋して、愛したヨゼフが、俺だけを呼んで、俺だけを見つめていた、夢のような時間。 気恥ずかしい。くすぐったい。そしてそれ以上の幸福感に酩酊していた。 尻の痛みすら、ヨゼフが俺を愛してくれた証明のようで胸が疼く。どこか現実味がないふわふわとした心地の中で、あれが夢じゃないと示してくれる。なんていとおしいのだろう! 「ヨゼフ!!」 ああ、朝の陽光に照らされるヨゼフを、こうして同じベッドの上で見られるなんて! 溢れそうな感情を乗せて名前を呼ぶと、ヨゼフが「うるさ……」と唸った。 だが構ってなどいられない。そんな余裕はない。ウキウキと弾む胸を持て余しながら、その肩に触れ顔を覗き込んだ。

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