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#1 媚薬
とろりと滴る液体で、小さな瓶を満たしてゆく。
淡い光源を受けてキラキラと輝くそれの向こう側から、引けを取らない美しさを誇る双眼がじっとこちらを見つめている。
「こんなの飲んで腹壊さん?」
夢蜂の蜜、夜咲花の花弁、火照り鳥の綿羽、黒蜥蜴の涙……とってもファンタジーな材料で作ったこの薬は、ファンタジーなこの世界ではそう珍しいものではない。
「大丈夫、上手にできたはず……匙とって、アビ」
けれども作るのは面倒なのだ。
鍋にこびりついた薬液まで利用してしまおう、という意地汚い魂胆は、普段は上手く隠している。
ゆったりとした動作で立ち上がり、長い指先で銀の匙を手渡してくれる彼以外には。
「せめて椀に入れや」
「洗い物が増えるの嫌だからね、ほらピンク色で可愛いよ」
細かな泡の炭酸水を注ぎ込み、くるくるとかき混ぜれば、それはまるで魅惑の美酒。
氷で満たしたグラスに注いで、発光の魔法をかけて、花を飾って……そこまですれば視覚からも興奮できそう。
でも生憎、これは自分用なので。
調薬用の鍋に唇を寄せて、一気に飲み干す。
「うえぇ、まっずい」
それが見掛け倒しの色と匂いだと、口に含んで気づいた時にはもう遅い。
渋みと酸味で吐き出しそうな味なのに、誤認した脳がそれを強制的に飲み込ませるのだ。
呆れ顔の彼、同居人のアビシェラは大げさに溜め息をついてみせる。
「洗い物より自分の足腰の心配しとり」
「そこまで乱れちゃうかな?」
それでもオレの口元に付いた媚薬を、指先で拭い取りながら。
彼は心底楽しそうに笑う。
そして見せ付けるように、赤い舌でペロリ、と濡れた指を舐めた。
「20年ぶりのセックス、しっかり楽しませてもらうけぇね、ルル」
「どうぞ御手柔らかに……」
するりと頬を撫でる手の冷たさと相反する、熱っぽいアビシェラの瞳。
薬毒の一切効かない彼は、ヒトの感情を機敏に読み取って同調する。
つまりその美しい瞳を潤ませているのは、紛れもないオレだ。
「綺麗な色だね」
「直に触るのやめや」
アビシェラに掴まれた指先から、じわじわと焦らすように帯びてゆく熱。
それに気付いた彼は、浮世離れした妖艶な表情を浮かべてみせる。
「待ち切れんわ、ここでしていい?」
「隣で寝てるからダメだよ。アビのベッドで抱いて」
いかにも不満、と言わんばかりに、彼の柔らかな唇が額に優しく押し付けられた。
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