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第4話
【アルベルト視点】
部屋にぐちゅぐちゅと卑猥な音が響いている。
「ぁっ……俺、もうっ……」
さらに竿を握ってこすり上げると、素直な反応が手に伝わってくる。
「"もう"、なんだ? いやか?」
無理をさせていないか確かめる。
ナオトは黙ったあとに、「やじゃない。……もっと、好きにして」と朱に染まった顔を枕にうずめた。
うぶなのに、素直なのがナオトらしくて、思わず口元が緩む。
つい、また抱きしめようと、手を伸ばして止めた。
コイツは心底憎んだ相手だったはずだ。
俺のすべてを奪おうとしたやつ。
なのに、中身が変わった――ただそれだけで、なぜか惹かれ始めている。
こいつがリュシアンに戻る可能性は?
すべてが、俺の都合のいい夢だったら?
(そうしたら、俺は……)
「なに……? 俺、何かした?」
ナオトが心細そうに見上げてきた。
同じつくりの顔なのに、見たことのない表情だ。
躊躇していた腕を伸ばし、胸元へ引き寄せた。
「お前の名前は?」
「え? ナオトだけど……」
腕の中から見上げられ、いたたまれず腰の動きを再開する。
幾度も身体を重ねた。
気を失い、そして、目覚めれば、名を確かめた。
「お前の名は?」
「……ナオトだって」
その答えを聞くたび、胸の奥がほどけた。
リュシアンではないから――最初は、そうだった。
だが、いつしか、ナオトがまだここにいること自体に安堵していた。
また、名前を聞くと、抱きしめられた。
「ナオトだよ。大丈夫」
その気遣いが、妙に胸に沁みた。
腕に力を込め、抱きしめ返した。
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【ナオト視点】
「ひどい……」
やっと、寝台に横になると、そんな言葉が出てきた。
指一本動かすのも億劫だ。
「アンタが元気になったんなら、いいんだけどさ……」
初めてなのに、めいっぱい感じさせられ、変な体位もあれこれされて、穴があったら入りたい心境だった。
「すまない。可愛くて」
綺麗な笑顔で、こめかみにキスしてくるので、シーツの中に逃げ込んだ。
「それ、アンタの顔でやめなよ。勘違いするだろ」
「勘違いしてもいい」
と、シーツの上から抱きしめてくる。
「なんだ、それ」
「はじめは正気を疑ったが……それが素なんだな」
「それって、……やっぱりバカっていってる?」
「いや」
アルベルトは少し考えて笑った。
「お前は、いい国で育ったんだろう」
その言葉が、妙に胸に引っかかった。 いったいどんな顔で言っているんだろう。
シーツから顔を出すと、すかさず唇が重なった。
離れても息が混ざるほど近い。名残惜しげに下唇を食まれ、また軽く唇が触れる。
もう何度もキスしたはずなのに、なぜか今のほうが落ち着かない。
さっきの情事よりもエロい。
「……何てキスするんだよ」
「何度もしただろう?」
「そう、だけど、……なんか違う」
「違いが分かって何よりだ」
また笑われる。
その笑い方には、大人の余裕が滲んでいた。
初めて会ったときの虚ろな表情が嘘のようだ。
こんなふうにも笑うのかと、つい見とれた。
目が合って、取り繕うように口を開く。
「……呪い、解かないと。呪術師を集めるよう言っといたから、もうすぐ来るはずだよ」
「必要ない。もう解けている」
「え? なんで? いつ?」
「俺がお前の名を呼んだ頃には、とっくに」
そんなにあっけらかんと言われては、何も言えない。
「あれ? じゃあ……そのあと何回もしたのは?」
「俺がお前を抱きたかったからだ」
なんでもないことのように言われ、ナオトは口をパクパクとするしかなかった。
「……いやだったか?」
今度は少し心配そうに聞かれ、慌てて枕に顔を埋める。
「そういうことじゃない」
「なら、よかった」
当然のように頭を撫でられ、気持ちのよさに目を閉じる。
「……何が解除の鍵だったんだろ……」
呟いたところで、ふと思い出した。
「……『互いに向ける好意』だ。リュシアンは魔術師にそう言った……」
アルベルトが露骨に顔をしかめた。
「あいつの話はもういい」
「そうなんだけどさ……」
アルベルトには悪いが気になる。
そこに入れ替わりのきっかけがあるんじゃないだろうか。
『互いに向ける好意』
リュシアンは、なぜそんなものを鍵にしたのか。
絶対に叶わないと考えていたからか。
それとも、どこかでそれを願っていたのか。
考えても、答えは出なかった。
リュシアンはいつかこの身体に戻ってくるのだろうか。
ナオトに死んだ記憶はない。
なら、ある日また突然、戻ってしまうことだってあるはずだ。
でも……今は、彼の横にいたい。
シーツからこっそり手を伸ばすと、気づいたアルベルトが指を絡めてきた。
枕で顔を隠しながらも、その手を握りしめた。
(完)
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