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第9話 僕も欲しかった
ねぇ、聞いて?
俺の彼氏。
冬馬のこと、ここまでいろいろ知ったけどさ。
欲張りだったり。
寂しがりだったり。
俺に甘えたかったり。
思ってたよりずっと俺のこと好きだったり。
そういうの全部、可愛いと思ってる。
でも。
結局、一番俺が惚れてるところって。
めちゃくちゃ優しいところなんだと思う。
こないだなんかさ……
****
仕事でくたくたになって帰った日。
玄関開けた瞬間。
冬馬が俺の顔をじっと見たんだ。
「……お前、今日すごく疲れてる」
って。
「そう?」
「そう」
「大丈夫だよ」
そう答えたら。
冬馬、ちょっと眉を寄せて。
「僕には分かる」
って。
それで鞄を受け取ってくれて。
上着も持っていって。
水まで出してくれた。
別に大したことじゃないのかもしれない。
でも。
そういうところなんだよね。
俺が大丈夫って言っても。
本当に大丈夫なのか、ちゃんと見てる。
しばらくして。
冬馬が俺の前に膝をついた。
ちょっと恥ずかしそうな顔して。
「今日は僕に任せて」
って。
俺、思わず笑った。
だって。
ちょっと前までは自分が、
「任せる」
って言うだけでもあんなに恥ずかしがってたのに。
今日は逆なんだ。
「何してくれるの?」
って聞いたら。
冬馬は顔を赤くしながら、
「……楽にしてあげる」
って。
それから。
冬馬なりに、一生懸命俺を喜ばせようとしてくれた。
ズボンを下ろして。
すでに半勃ちのちんぽを両手で包み込み。
熱い吐息を吹きかけて。
それから、ゆっくり口に含んだ。
慣れてるわけじゃない。
途中で何度も顔を離して、息をする。
それでもまた口に含んで。
少し深くしようとして、今度はむせた。
それでも、すぐにはやめない。
俺の顔を見て。
「……気持ちいい?」
って聞く。
ちんぽをできるところまで深く咥える。
そこからゆっくり口を離して。
今度は舌で下から上までなぞっていく。
自分のことより、俺の反応ばっかり見てる。
ほんと、冬馬らしい。
でも。
しばらくして。
ちょっと頑張りすぎてるのが分かった。
だから頬に触れて。
「もう十分だよ」
って止めた。
そしたら冬馬は首を振る。
「まだ」
って。
よだれまみれの唇。
ちんぽをねっとりと吸い続けながら。
「冬馬」
「まだできる」
その言い方で、俺には分かった。
できる。
であって。
したい。
じゃない。
俺、今まで冬馬のいろんな顔見てきたからさ。
無理して平気そうにしてるとき。
恥ずかしくて誤魔化してるとき。
本当に欲しがってるとき。
少し怖がってるとき。
全部、前より分かる。
だから冬馬の手を取った。
「俺さ」
「……何」
「冬馬が無理してくれると、全然休まらないよ」
冬馬が黙った。
「僕は、お前を楽にしたいだけ」
「うん。それがもう嬉しい」
「……でも」
「帰ってきて、冬馬がいて」
手を握る。
「顔見ただけで疲れてるって気づいてくれて」
「……」
「水出してくれて」
「それくらい普通だろ」
「俺には効くの」
そう言ったら。
冬馬が、少し困った顔をした。
たぶん。
何かしてあげなきゃ。
ちゃんと役に立たなきゃ。
って思ってたんだと思う。
でもさ。
俺が冬馬に惚れてるのって。
そういうことじゃないんだよね。
何かしてくれるからじゃなくて。
俺のことを見てくれてる。
気にしてくれてる。
そばにいてくれる。
それが嬉しい。
「だから」
って言って。
俺は冬馬を抱き寄せた。
「今日は一緒に楽になろうよ」
冬馬は俺の胸元で、しばらく黙ってた。
それから。
「……ずるい」
って。
「何が」
「そういうこと言われたら、僕まで甘えたくなる」
それ聞いて。
俺、笑っちゃった。
「いいじゃん」
「お前を休ませるつもりだったのに」
「二人で休めばいいよ」
「……バカ」
でも。
冬馬も笑った。
それから少し迷ったあと、自分から俺の手を取って。
「もっと……僕にして」
って。
服を脱ぎ。
自分のアナルに指を伸ばして。
ゆっくりとほぐし始める。
一本、二本と入れて、ぬるぬるにし。
脚を大きく開いて俺に見せつける。
「ここに出して……」
顔は真っ赤なのに、今度は逃げない。
****
それからは。
どっちが相手を喜ばせるとか。
どっちが尽くすとか。
そういう感じじゃなくなった。
俺が冬馬に触れれば。
冬馬も俺に触れる。
俺が抱き寄せれば。
冬馬もぎゅっとしがみついてくる。
俺のいきり勃ったちんぽ。
ほぐれて蕩けたアナルのふちにそっと触れる。
もうそれだけで。
一組の鍵と鍵穴のように、自然と合わさっていく。
いつものように距離がなくなっていって。
入っていく途中。
冬馬が一瞬、息を止めた。
だから俺も止まる。
昔なら。
冬馬が「大丈夫」って言えば、そのまま信じてたかもしれない。
でも今は違う。
「まだ待つ?」
って聞いたら。
冬馬は俺の肩に額をくっつけたまま。
「……少しだけ」
って言った。
だから待った。
背中を撫でながら。
冬馬の呼吸が落ち着くまで。
少しすると。
今度は冬馬のほうから腰を寄せてきた。
もう少し。
さらにもう少し。
自分から、最後まで入れてくる。
「……もう大丈夫」
「ほんと?」
「うん」
「無理してない?」
「してない……気持ちいい」
それから。
小さな声で続けた。
「今は……僕もしたい」
「お前が楽になるなら、僕も嬉しい」
その言葉。
なんか、すごく嬉しかった。
だから急がず。
冬馬の呼吸に合わせて。
二人とも気持ちよくいられるよう。
ゆっくり距離をなくしていった。
「もう大丈夫」
って言われてから、腰を動かし始める。
最初は小さく。
それから少しずつ深く。
深く入るたび、冬馬の声も少しずつ大きくなった。
冬馬は俺の肩にしがみついて。
ときどき甘い声を漏らして。
それでも、すごく幸せそうだった。
俺も。
さっきまで身体の奥に溜まってた疲れが。
少しずつほどけていく感じがした。
行為そのものだけじゃない。
冬馬がいるから。
冬馬の体温があって。
俺の名前を呼んで。
俺のことを心配してくれて。
俺も冬馬のことを気にしながら。
一緒にいられる。
たぶん。
それ全部なんだと思う。
最後まで深く入ったまま。
そこで俺も限界になる。
冬馬がぎゅっと抱きついてくる。
中も強く締まった。
そのまま中に出す。
冬馬は離れず、全部受け止めてた。
****
しばらくして。
冬馬は俺の肩にしがみついたまま。
目元を少し潤ませてた。
でも。
笑ってる。
「……ねえ」
「ん?」
「少しは、楽になった?」
俺は冬馬を抱きしめた。
「すごく」
って答えた。
冬馬の顔が、ふっと緩む。
「……よかった」
そう言って。
俺の胸に顔を埋めた。
精液が少しずつ外へ垂れてきても。
冬馬は気にしない。
そのまま俺の胸にくっついて。
満足そうに笑ってた。
俺は髪を撫でながら、
「冬馬は?」
って聞いた。
「何が」
「嬉しかった?」
冬馬はしばらく黙ってた。
たぶん昔なら、
「知らない」
とか。
「別に」
とか言ってたと思う。
でも。
今の冬馬は。
ちょっと恥ずかしそうにしながら。
ちゃんと言った。
「……僕も、こうしたかった」
って。
「俺を楽にしたかったから?」
そう聞いたら。
冬馬は少し考えて。
首を横に振った。
「それもある」
「うん」
「でも……」
それから。
俺の服をぎゅっと掴んで。
「僕も、お前に触りたかった」
って。
また少し黙って。
「僕も、くっつきたかった」
もう一回。
「僕も……欲しかった」
って。
俺さ。
その言葉聞いた瞬間。
なんか全部つながった気がした。
最初の冬馬は。
「嫌い」
って言いながら。
俺が離れると掴んできた。
「もう少し」
って言うだけで、真っ赤になってた。
それが今は。
怖い。
待って。
もっと。
任せる。
好き。
そういうことを、少しずつ言えるようになって。
最後には。
俺のためだけじゃなくて。
「僕も欲しかった」
って言えた。
優しい冬馬は。
たぶんこれからも、人のことを先に考えるんだと思う。
でも。
俺の前でまで、自分を後回しにしなくていい。
俺は冬馬がしてくれることも嬉しいけど。
冬馬自身が、
嬉しい。
寂しい。
甘えたい。
欲しい。
って言ってくれるほうが、もっと嬉しい。
「冬馬」
「……何」
「それ、これからも言ってよ」
「何を」
「僕も欲しい、って」
一瞬で顔が赤くなった。
「……調子に乗るな」
「じゃあ言わない?」
「……」
「冬馬?」
しばらく黙ってから。
また俺の胸に顔を隠して。
「……言えるときは」
って。
可愛いよね。
俺。
冬馬のこと、最初は全然分かってなかった。
おとなしい奴だと思ってた。
ちょっと素直じゃないだけだと思ってた。
でも。
知っていくたび。
全然違う顔が出てきた。
欲張りで。
寂しがりで。
甘えたがりで。
ちょっと変わったことも好きで。
思ってたよりずっと俺のことが好きで。
それで。
ものすごく優しい。
たぶん。
これからも俺の知らない冬馬は、まだいっぱい出てくる。
でもさ。
もう分かってるんだ。
たぶん俺。
新しい冬馬を一つ知るたびに。
また一つ、好きになる。
……そういうのって、かなり幸せじゃない?
** ねぇ、聞いて? 俺の彼氏がさ… ~秘密を知るたび、もっと好きになる~
(完)
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