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第8話 俺だけがいい
ねぇ、聞いて?
俺の彼氏。
冬馬って、俺が思ってたよりずっと俺のこと好きみたいなんだ。
いや。
少しまえから、なんとなく分かってはいたよ?
俺がいないと寂しがるし。
俺の匂いで安心するし。
最近じゃ、自分から欲しいものだって言ってくれる。
でもさ。
冬馬って、それでもまだ隠してたことがあったんだ。
たぶん。
今までで一番、俺に知られるのが怖かったこと。
こないだなんか……
****
その日。
冬馬が、自分から両手を後ろに回したんだ。
それから俺に紐を差し出した。
「……縛って」
って。
一瞬、冗談かと思った。
でも。
冬馬の目、全然笑ってなかった。
「いいの?」
って聞いたら。
まっすぐ俺を見て、
「うん」
って。
だから、いつでも解けるようにして、冬馬の手を後ろでまとめた。
いつもなら、ここで恥ずかしがって、
「見るな」
とか言うはずなんだけど。
その日は違った。
冬馬は俺だけを見てた。
それから。
「……他の誰にも触れさせないで」
って言った。
俺、ちょっと驚いた。
「冬馬?」
「お前だけがいい」
声が、少し震えてる。
それなのに。
言い始めたら止まらなくなったみたいで。
「俺だけ見て」
「うん」
「……俺だけにして」
「……俺だけを使って」
そこまで言って。
冬馬は急に俯いた。
たぶん。
自分でも言いすぎたと思ったんだろうな。
「……今の、忘れろ」
って。
でも。
俺には分かった。
忘れてほしいんじゃない。
怖いんだ。
こんなこと言ったら、
重い。
面倒くさい。
って思われるんじゃないかって。
だから俺は、冬馬の顔を上げさせた。
「忘れないよ」
って言ったら。
冬馬の顔が強張った。
「……やっぱり重い?」
「そうじゃなくて」
俺は冬馬に身体を寄せた。
逃げられないようにじゃなくて。
ちゃんと、
ここにいるよ、
って伝わるくらい近くまで。
下着をずらす。
すでに硬く熱を帯びたちんぽを入り口に当てて。
少しずつ入れていく。
根元まで入ったところで、中がぎゅっと締まった。
「そんなこと考えてたんだなって」
冬馬は何も言わない。
「ずっと我慢してた?」
しばらくして。
ほんの少しだけ。
頷いた。
「……負担になりたくなかった」
その一言。
俺、かなりやられた。
だって。
冬馬がずっと隠してた理由。
自分が恥ずかしいからだけじゃなかったんだ。
俺が困らないように。
俺を縛らないように。
好きすぎる自分を、ずっと小さくしてたんだ。
だから俺は、そのまま冬馬を抱きしめた。
「言っていいよ」
「……何を」
「好きすぎるとか」
冬馬の身体が固まる。
「離れたくないとか」
「……」
「俺だけ見てほしいとか」
「やめろ」
「なんで」
「恥ずかしい」
「知ってる」
冬馬は真っ赤になって。
でも。
俺から離れなかった。
むしろ、拘束された手の代わりみたいに。
身体ごと俺のほうへ寄ってくる。
だから俺も離れない。
くっついたまま腰を動かす。
深く入るたび、冬馬もさらに身体を寄せてきた。
目元はもう潤んでる。
声も抑えきれてない。
それでも、自分から俺のほうへ腰を寄せてくる。
冬馬は何度も、
「もっと」
って言った。
もっと近く。
もっと触って。
もっと名前を呼んで。
そうやって。
まるで俺が本当にここにいるって、何度も確かめるみたいに。
「冬馬」
名前を呼ぶ。
そのたび、冬馬の顔が少しずつ緩んでいく。
中もきゅっと締まった。
「……繋がってる」
ほんと、幸せそうに言うんだ。
その顔見たら。
俺も、もう何も言えなくなった。
ただ抱きしめた。
****
しばらくして。
冬馬はすっかり力が抜けてた。
それでも俺から離れようとしない。
少し身体を起こそうとしただけで、
「やだ」
って。
すぐ言った。
俺、ちょっと驚いた。
だって。
昔の冬馬なら絶対、
「やだ」
なんて素直に言わなかったから。
「離れないよ」
って言うと。
冬馬は安心したみたいに息を吐いた。
それから。
「……もっと深く」
そう言われて、もう一度腰を寄せる。
深いところまで入ると、冬馬がほっとしたみたいに息を吐いた。
「俺から離れられなくなるくらい、ちゃんと残して。印をつけて」
って、泣きながら頼んでくる。
「……ちゃんと残して」
って。
「何を?」
「お前がここにいたって分かるもの」
そう言って。
「ここ」
冬馬が首を差し出してくる。
まだ身体はくっついたまま。
「見えるよ?」
「うん」
「隠せないぞ」
そう言ったら。
冬馬が、ようやく少し笑った。
「隠したくないから」
って。
ねだるように首を差し出し。
まだ繋がったまま。
冬馬が腰を寄せるたび、中もぎゅっと締まる。
その言葉。
たぶん前の俺だったら、
冬馬、重いなあ。
って笑って終わってたと思う。
でも。
今はちょっと違う。
俺がいない夜に寂しがってたことを知った。
俺に見せるために、こっそり秘密を作ってたことを知った。
怖くても、俺となら試してみたいって思ってくれてることを知った。
俺には全部預けて、甘えてみたいって思ってることを知った。
欲が強い自分まで、嫌われるのが怖くて隠してたことを知った。
それで今。
やっと分かった。
冬馬が一番隠したかったのって。
変わった趣味でも。
欲の強さでも。
甘えたい気持ちでもなかった。
俺のことが、
自分でも困るくらい好きだってことだったんだ。
奥でびくびくと脈打つちんぽから。
熱い精液を大量に注ぎ込む。
白濁が溢れ出し。
太ももを伝ってとろとろと落ちていく。
「……これで、お前の中にも俺が残った? これで俺のもの……」
なんて聞くの。
「逆じゃない?」
って笑ったら、
「どっちでもいい」
って。
溢れた精液を指で掬う。
また押し戻すようにしながら、満足げに微笑む。
「冬馬」
「……何」
「俺、それ嫌じゃないよ」
冬馬が俺を見る。
「でも、本当に俺を縛ったりするのはなしな」
「……分かってる」
「俺が誰かと話しただけで怒るのもなし」
「分かってるって」
ちょっとむっとした顔。
いつもの冬馬だ。
だから笑って。
その首元に、そっと口づけた。
「でも、そう思っちゃうことまで隠さなくていいよ」
冬馬の目が、少しだけ揺れた。
「俺には言っていい」
「……重くても?」
「うん」
「面倒くさくても?」
「冬馬だからな」
それ聞いたら。
冬馬、しばらく黙ってた。
それから。
ものすごく小さな声で。
「……好き」
って。
俺、たぶん。
その日一番びっくりした。
だって冬馬。
「もっと」は言えるようになった。
「怖い」も言えるようになった。
「任せる」も言えるようになった。
でも。
こんなふうに。
何の言い訳もなく、
ただ「好き」って言ったのは。
たぶん初めてだったから。
「俺も好き」
って返したら。
冬馬は恥ずかしそうに顔を伏せた。
でも。
今度は隠れなかった。
そのまま俺に寄りかかって。
首元についた小さな印を指で触って。
なんか。
すごく満足そうに笑った。
また一つ。
冬馬のことを知った。
しかも今回は。
あいつが一番、
知られたくなくて。
でも本当は一番、
知ってほしかったところ。
……そんなの見せてもらったらさ。
そりゃ、もっと好きになるよね。
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