7 / 9

第7話 欲しがりすぎるの

ねぇ、聞いて? 俺の彼氏。 冬馬ってさ。 思ってたより、かなり欲が強いみたいなんだ。 いや、それ自体は全然いいんだけど。 問題は本人が、それをものすごく恥ずかしがってること。 俺にまで、 こんな自分見せたら引かれるかも、 って思ってたみたいでさ。 それ知ったとき、ちょっと寂しかった。 俺、そんなことで冬馬を嫌いになったりしないのに。 こないだなんか…… **** 部屋に入ったら。 冬馬がベッドの上で、一人で何かしてたんだ。 俺に気づいた瞬間、 「……っ!」 って身体を跳ねさせて。 ものすごい勢いで顔を隠した。 「冬馬?」 「見るな」 「もう見たけど」 「忘れろ」 無理だよね。 だって、冬馬の後ろ。 さっきまで自分で使っていたディルドが、まだ半分入ったまま。 周りもすっかり濡れてる。 何してたかなんて、だいたい分かる。 でも。 俺が驚いたのは、そこじゃなかった。 冬馬の顔。 本気で恥ずかしそうだったんだ。 いつもの、 見られた、恥ずかしい。 って感じより。 もっと、 知られたくなかった。 みたいな顔。 だから俺も、からかうのをやめた。 「待てなかった?」 って、なるべく普通に聞いた。 冬馬は答えない。 顔を隠したままなのに。 腰だけは止まらない。 入ったままのディルドを、自分で浅く動かしてる。 しばらくして。 指の隙間から俺を見て、 「……もう、準備してるから」 って。 「うん」 「……だから」 そこから先が言えない。 でも。 前なら、そこで黙って終わってたと思う。 冬馬は何度か息を整えて。 それから、ものすごく小さな声で、 「……早く、こっち来て。もう入れてるから……お前のも……入れて……」 って言った。 小さい声だったけど。 ちゃんと俺に言った。 だから近づいた。 急がずに。 ディルドで塞がった冬馬の入り口。 その周りを優しく撫でると。 俺のを招き入れようとくぱっと開く。 「いっしょに?」 「……そう、早く」 入ったままのディルドを少し奥へ押す。 その横に、俺もゆっくり入っていく。 冬馬の背中を撫でたら、すぐ俺の服を掴んでくる。 「遅い」 って。 「さっきまで隠れてた人が言う?」 「うるさい」 「はいはい」 それでも手は離れない。 むしろ、俺が近くに来た途端。 さっきまで一人で何とかしてたくせに。 急に安心したみたいに身体を預けてきた。 そのまま少しずつ距離をなくしていくと。 ディルドが埋まったままなのに。 さらにちんぽもゆっくりと収まった。 二輪差し。 冬馬のお腹の中は、もういっぱいだ。 ところが途中で。 冬馬の腰がぴたりと止まった。 「……待って」 「嫌だった?」 って聞いたら、ぶんぶん首を振る。 「違う」 って。 目まで潤んでる。 それで、俺の肩を掴みながら、 「動かないで……動かれたら……もう無理……イっちゃう……」 って泣きながら言う。 「なんで?」 って聞くと、 「今、動かれたら……もう無理」 って。 中がきつく締め付ける。 ディルドとちんぽを同時に絞ってくる。 ほんの少し腰を動かしただけ。 それでも冬馬の腰が何度も跳ねる。 「もう無理」って言いながら、声も止められなくなってた。 俺、そこでちょっと思ったんだ。 冬馬が欲しかったのって。 一人で満足することじゃなかったのかもしれない。 待ってる間、どうしていいか分からなくて。 でも俺に、 早く来て。 なんて言うのも恥ずかしくて。 だから一人でごまかしてたのかなって。 「冬馬」 「……何」 「俺が帰るの待ってた?」 冬馬の動きが止まった。 「……知らない」 出た。 冬馬の、 言いたくないときの「知らない」。 「そっか」 それ以上は聞かなかった。 ただ、抱き寄せた。 すると冬馬のほうから、ぎゅっと服を掴んでくる。 しばらくそうしてたら。 冬馬が俺の肩に顔を押しつけたまま、 「……もう少し」 って。 「うん」 「……ゆっくり」 「分かった」 まえから思ってたけど。 こういうところ、冬馬は本当に変わった。 待って。 ゆっくり。 もっと。 ちゃんと自分から言える。 だから俺も、それに合わせた。 冬馬が落ち着くまで待って。 大丈夫そうなら少し進んで。 また余裕がなくなったら止まる。 そのたび冬馬は、 「待って」 とか、 「もういい」 とか。 小さい声だけど、ちゃんと教えてくれた。 まずは小さく腰を動かす。 一度。 また一度。 それだけで冬馬の声が上がった。 身体が大きく跳ねる。 そこから少しずつ続けると。 冬馬は何度も限界を迎えてた。 **** 冬馬は俺にくっついたまま、すっかり力が抜けてた。 でも。 俺、どうしても気になって。 「冬馬」 って呼んだ。 「……何」 「こういうこと、一人でも結構するの?」 その瞬間。 また身体が固まった。 しまった。 聞き方間違えたかな、と思った。 「ごめん。責めてないよ」 って言ったら。 冬馬はしばらく黙って。 それから、 「……する」 って答えた。 「そっか」 「……引いた?」 その一言。 俺、かなりびっくりした。 冬馬がそんな心配してたなんて思わなかったから。 「何で?」 「だって……」 冬馬は俺を見ない。 「こんなの、普通じゃないだろ」 「何が?」 「……欲しがりすぎるの」 ようやく分かった。 冬馬は、一人でしてたことを隠したかったんじゃない。 欲が強い自分そのものを。 俺に知られるのが怖かったんだ。 そんな冬馬を見たら。 なんか。 笑うとか、引くとか。 そういう気持ちには全然ならなかった。 むしろ。 今までずっと一人で隠してたんだなって思った。 「冬馬」 「……何」 「別に、それで嫌いにならないよ」 冬馬が、少しだけこっちを見た。 「ほんとに?」 「うん」 「……気持ち悪くない?」 「全然」 俺は冬馬の髪を撫でた。 「むしろ、教えてくれたらいいのに」 「無理」 即答だった。 「なんで」 「恥ずかしいから」 「じゃあ、見つけるしかないな」 そう言ったら。 冬馬がちょっとだけ笑った。 ほんの少し。 でも。 安心した顔だった。 それで俺、続けた。 「でも次から、隠れなくていいよ」 冬馬は黙った。 「待てないなら待てないって言って」 「……無理」 「早く帰ってきて、でもいいし」 「絶対無理」 「一緒にしたい、でも」 「言うわけないだろ」 「じゃあ俺が聞く」 「……バカ」 言いながら。 冬馬は俺の胸に顔を押しつけた。 でも今度は。 恥ずかしくて隠してるだけじゃなくて。 ちょっと安心して甘えてるのが分かった。 また一つ。 冬馬のことを知った。 こいつは、俺が思ってたよりずっと欲張りで。 そのことを知られるのが、ずっと怖かった。 でも。 別にいいじゃん。 欲が強くても。 変わったことに興味があっても。 一人で楽しむことがあっても。 二本いっぺんに欲しくなっても。 それも冬馬なんだから。 むしろ俺は。 俺の知らなかった冬馬がまだいたことのほうが嬉しい。 たぶん、これからも出てくるんだと思う。 冬馬が、 こんなの見せたら嫌われるかも、 って隠してるところ。 でもさ。 そういうの見つけるたびに。 俺、たぶんまた好きになるんだよね。 ……だから次は。 もう少し早く教えてほしいんだけどな。

ともだちにシェアしよう!