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1 雨の裏通り①
1 雨の裏通り
その夜、ユリアン・フォン・ヴァレンハイトは三度求婚され、二度商談を持ちかけられ、一度だけ毒を盛られかけた。
いずれも退屈だった。
千の|燭台《しょくだい》を吊るした大広間では、誰もが彼を見ていた。正確には、ユリアンの後ろにある爵位と金と土地を。ユリアンはそれを知りながら、完璧な角度で微笑んでいた。
銀に近い淡い髪、美しい|金糸雀《かなりあ》の瞳、十六で公爵位を継いだ男の、噂どおりの美貌。人々はうっとりと目を細め、扇の陰でささやき、そして順番を待つ。順番というのは、この男から何をもぎ取れるかを申し出る順番のことだ。
「閣下、末の娘がぜひご挨拶を」
ブルーメ伯爵夫人は末娘を連れてきた。娘は十七で、青白い顔で震えていて、母親の袖を掴んだまま一言も喋らなかった。
「閣下、東部の鉱区の件ですが」
レーヴェンタール侯爵は東部の鉱区の話を三十分続けた。
「閣下」「閣下」「閣下」
ユリアンは相槌の位置を完璧に守り、内容は一言も聞いていなかった。
三つ目の|杯《さかずき》に指を触れたとき、香りがわずかに甘すぎた。
ユリアンはそれを窓辺の鉢植えにそっと空け、給仕に新しいものを頼み、何事もなかったように会話へ戻った。二刻後、その鉢植えの葉が縁から茶色く枯れはじめるのを、誰も見ていなかった。
誰が盛ったかは、だいたい見当がついていた。
『見当がつく』ということ自体が、もう何年も彼を退屈させていた。
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