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act:驕傲 【キョウゴウ】②

 いつものように理子さんの自宅へ、朝のお迎えに行ったときから、彼女の様子がおかしかったことには気がついていた。口数が少なかったし何より、いつも腕を組んでくる彼女が、この日はしてこなかったから。  女性特有の気持ちの浮き沈みかなと、そのとき思ってはいたが――  夕方で仕事を一区切りし、会社へ迎えに行って顔をつき合わせた途端、刺すような視線で訊ねられてしまった。 「克巳さん、私に何か隠してることない? 三日前のことなんだけど」 「三日前……?」  思わず口ごもるしかない。何故ならばそれは、稜と逢っていた日だからだ。 「髪の長い女の人と、仲良さそうに歩いてるトコを、稜くんが見てるんだけど」  顎に手を当てて考え込む俺を見て、理子さんがイライラした口調で教えてきた。 「な、んだ……そのことか」 「なんだって、何その言葉。私、すっごく怒ってるのに」 (しまった、安心してしまってつい――)  頭を掻きながら、理子さんの怒りを鎮めるべく謝ってみる。 「悪かった、誤解をさせるようなことをしてしまって。その女性のことなんだけど、理子さんを送り届けて直ぐ傍のあの道路で、すれ違っただけの人なんだ」 「……稜くんから写真を見せてもらったから、場所は分ってる」  ――写真なんて撮っていたのか!?   もしかして、彼が仕組んだ計画の可能性がある気がしてきたが、そんな考えは後回しだ。とにかく彼女の誤解を、今すぐ何とかしなければならない! 「理子さん、聞いてくれ。あのとき写真の女性とすれ違った瞬間に、俺に向かっていきなり倒れ込んできたんだ。慌てて抱き起こしてあげながら足元を見たら、ヒールの踵が壊れていて。歩きにくそうにしていたから腕を貸して、靴屋まで連れて行っただけなんだよ。彼女とはそこで別れたし、その後も逢っていない。信じてほしい」  今考えると、どうも出来すぎたシチュエーションだった。理子さんと早く別れさせたい彼が、第三者を使って罠を仕掛けていたなんて、かなりショックだ。  このときは何とか誤解を解き、彼女をしっかりと送り届けてから、稜のマンションへ向かう。勿論、この件に関して文句を言ってやろうと、勇んで行ったのに――

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