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白熱する選挙戦に、この想いを込めて――㉝

「それはベストな判断だと思う。二階堂も彼のためによろしく頼む」 「貴方に頼まれなくても、陵さんを支えます」 「俺はスタッフと一緒に鳴っている電話に出て、釈明会見について説明するが、それでいいだろうか?」  陵のために、自分ができることを考えた結果だった。 「……ありがとう、相田さん。たくさん鳴っている電話に出るのは大変だろうけど、みんなと一緒に頑張ってください」  一瞬だけ言葉に詰まらせた恋人の様子に心配したが、それどころじゃないのが分かったので軽く頷いてみせてから、電話の置かれているデスクへと身を翻した。  選挙戦の終盤で明るみに出た陵の過去の出来事が、少しでも悪いイメージにならぬよう、ひっきりなしにかかってきた受話器の向こう側に向かって懇切丁寧に対応したのだった。

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