6 / 7

第6章 専属になりました

「専属?」  教官から渡された書類を見て、リオは顔を上げた。 「正確には、期間限定の専属実地研修だ」  書類にはリオとカイルド、二人の名前が並んでいる。 「前回の結果を踏まえて、しばらく団長を中心に研修を続けることになった。継続して問題がないか、経過を見る」 「団長も了承してるんですか?」 「ああ」  それを聞いて、リオはほっとした。  王国騎士団長ともなれば忙しい。研修生一人のために定期的に時間を空けるのは、簡単ではないはずだ。 「本当に、俺でいいって?」 「団長からも継続して問題ないと回答をもらっている」 「……よかった」  小さく息を吐く。  これで、また研修ができる。  今度こそ途中で終わらずに済めば、卒業に必要な精気充足率まで届くかもしれない。 「頑張ります」 「普段通りやれ」 「はい」  リオはもう一度書類を見る。  専属実地研修。  今まで何度試験に落ちても届かなかった卒業が、ようやく近づいてきた気がした。  ところが。  一週間経った。  研修はなかった。  二週間経った。  やっぱりなかった。 「……専属になったのに」  昼休み。  リオは机に頬杖をつき、小さく呟いた。  書類はとっくに提出した。  精気提供を伴う実地研修は、当面カイルドを中心に行うことになっている。  なのに、肝心の相手と予定が合わない。  原因は、カイルドの多忙だった。  訓練。  会議。  遠征。  王族の護衛。  一つ終われば、また次が入る。  一度は研修日まで決まったのに、急な任務で延期になった。  もちろん、文句なんて言えない。  王国騎士団長なのだから、忙しくて当然だ。  分かっている。  分かってはいるけれど。 「……いつできるんだろ」  前回は途中で終わっている。  次こそは最後まで研修できると思っていた。  それが二週間も先延ばしになれば、さすがに少しくらい残念にもなる。  結局、リオの生活は以前とほとんど変わらなかった。  朝は学校。  授業が終われば、食堂のアルバイト。  帰宅して、風呂に入って、寝る。  起きればまた学校。  専属実地研修生という肩書きだけが増えて、本人は相変わらず学校とアルバイトを往復している。  ただ、一つだけ変わったことがあった。  最近、身体が落ち着かない。  成人した淫魔なのだから、性欲があるのは当たり前だ。  以前から自分で処理することはあった。  けれど、このところ明らかに頻度が増えている。  その夜も、布団に入ってからなかなか眠れなかった。  右を向く。  左を向く。  目を閉じる。  しばらくして、また開ける。 「……寝れない」  身体の奥が疼いている。  明日も朝から学校だ。  このまま眠れないより、さっさと発散して寝たほうがいい。  リオは諦めて身体を起こした。  ベッド脇の収納を開ける。  取り出したのは、実習に備えて以前から使っているディルドだった。  本物はまだ知らない。  学校の実技に備えて買ったもので、使うこと自体には慣れている。  小さなピンクのディルドを掌に乗せた。先が丸く、根本にハート型の台座がついている。  性欲は、精気の空腹と少し似ている。  腹の奥が熱い。身体が、それを使えと催促している。  リオはまず、ディルドを顔の前へ持ってきた。舌先で先端を試し、ぺろりと舐める。味はしない。ぬるいシリコンの匂いだけがした。  それでもリオの舌は、相手の身体を覚えるときと同じ丁寧さで動いた。先をちろちろと舐め、カリに見立てた段差を一周し、平たい舌で側面を下から上へ丁寧に塗り上げる。 「んっ…」  唇で先を包み、ちゅう、と吸い上げる。技術は、道具相手でも真剣だ。唾液を絡めて根本まで濡らし、そのまま深く銜える。  小さいサイズだからこそ、喉の奥まで難なく沈んだ。鼻が台座に触れる。ディープスロートを、リオは息を止めずにこなした。 「んむっ…」  咥えたまま片目を細め、空いた手でローションの蓋を開く。指先に冷たい液を受け、膝を開いて後ろへ回す。入り口にローションを塗ると、指がひとつ、ゆっくり沈んだ。  浅く出し入れする。  慣れた動きだった。  知識はある。身体のほうは、ほぐし方を覚えてしまっている。  一本が滑らかに出入りするようになると、二本目を添えた。 「んっ…あっ」  ディルドを銜えた喉が小さく鳴る。二本で内側を開き、屈伸するように抜き差しする。ローションが糸を引いた。  三本目を入れたとき、リオの腰がわずかに浮いた。  きつい。  それでも止めない。  入れて、抜いて、また入れて。三本が根元近くまで収まるまで繰り返した。  準備ができた、と自分で判断して、リオはディルドを口から離した。糸を引くほど唾液で濡れそぼっている。  ベッドサイドに背を預け、大きく足を開いた。膝が外側へ倒れ、入り口が空気に触れる。  濡れた先端を当てる。  ゆっくり押し込む。  小さな道具でも、奥は狭い。輪が一つずつ開かれていく感覚に、リオの指がシーツを掴んだ。 「んっ…はい、る…」  根本まで沈めた。  ハートの台座が肌に当たる。そこで一度止める。  身体がなじむのを待った。熱を持った内側が、入り込んだ形を少しずつ受け入れていく。  なじんだら、抜き差しを始める。  ゆっくり。  奥まで入れて、半分まで引いて、また奥へ。  きつい奥の方を開かれるたび、腰が甘く震えた。大きく開いた足の指に、ギュッと力がこもる。 「あっ…んっ、そこ…」  片手はディルドの台座を持ったまま、もう片手を自分の先へ持っていく。すでに立ち上がっていた。ゆっくりと、優しくしごき上げる。  精気をくれる相手を少しでも喜ばせるために、リオは自分の身体で気持ちいい場所を探し続けてきた。弱点も、当然わかっている。  睾丸を掌で優しく揉みしだきながら、茎だけを少し強めに擦る。先端は敏感なので、あまり触らない。  先を避けた刺激が、逆に奥へ溜まっていく。ディルドは同じリズムで、きつい場所を繰り返し開いた。  快感がだんだん強くなっていく。  腰が射精を求めて、かくかくと動いた。足の指が反る。ディルドを奥に埋めたまま、茎を扱う手が速くなる。  最後に、避けていた先端へ、かり、と爪を立てた。 「あああん」  短い鳴きだった。  白濁した液が、勢いよく掌の中へ溢れた。指のあいだから垂れて、開いた腿を伝う。アナルはディルドを根元まで咥えたまま、小さく痙攣していた。  終わってしまえば、身体はちゃんと落ち着いた。  リオはディルドを片付け、ベッドへ戻った。  さっきまでの疼きもない。  これなら眠れそうだ。  なのに、布団をかぶって目を閉じても、妙な物足りなさが残った。 「……?」  気持ちよくなかったわけではない。  いつもと同じだ。  ちゃんと発散できた。  それなのに、何かが足りない。  しばらく考えて、ようやく気づいた。 「……精気か」  当たり前だった。  玩具を使ったところで、精気は入ってこない。  今までは、それを物足りないと思ったことなんてなかった。  けれど、一度知ってしまった。  精気を受け取りながら満たされる感覚を。  リオは枕に頬を押しつけた。  次の研修予定は、まだ決まっていない。  カイルドの仕事が落ち着けば連絡が来ることになっている。 「……早く研修したいな」  ぽつりと呟いて、目を閉じる。  欲しいのは精気だ。  卒業するためにも必要なのだから、早く続きをしたいと思うのは当然だった。

ともだちにシェアしよう!