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第6章 専属になりました
「専属?」
教官から渡された書類を見て、リオは顔を上げた。
「正確には、期間限定の専属実地研修だ」
書類にはリオとカイルド、二人の名前が並んでいる。
「前回の結果を踏まえて、しばらく団長を中心に研修を続けることになった。継続して問題がないか、経過を見る」
「団長も了承してるんですか?」
「ああ」
それを聞いて、リオはほっとした。
王国騎士団長ともなれば忙しい。研修生一人のために定期的に時間を空けるのは、簡単ではないはずだ。
「本当に、俺でいいって?」
「団長からも継続して問題ないと回答をもらっている」
「……よかった」
小さく息を吐く。
これで、また研修ができる。
今度こそ途中で終わらずに済めば、卒業に必要な精気充足率まで届くかもしれない。
「頑張ります」
「普段通りやれ」
「はい」
リオはもう一度書類を見る。
専属実地研修。
今まで何度試験に落ちても届かなかった卒業が、ようやく近づいてきた気がした。
ところが。
一週間経った。
研修はなかった。
二週間経った。
やっぱりなかった。
「……専属になったのに」
昼休み。
リオは机に頬杖をつき、小さく呟いた。
書類はとっくに提出した。
精気提供を伴う実地研修は、当面カイルドを中心に行うことになっている。
なのに、肝心の相手と予定が合わない。
原因は、カイルドの多忙だった。
訓練。
会議。
遠征。
王族の護衛。
一つ終われば、また次が入る。
一度は研修日まで決まったのに、急な任務で延期になった。
もちろん、文句なんて言えない。
王国騎士団長なのだから、忙しくて当然だ。
分かっている。
分かってはいるけれど。
「……いつできるんだろ」
前回は途中で終わっている。
次こそは最後まで研修できると思っていた。
それが二週間も先延ばしになれば、さすがに少しくらい残念にもなる。
結局、リオの生活は以前とほとんど変わらなかった。
朝は学校。
授業が終われば、食堂のアルバイト。
帰宅して、風呂に入って、寝る。
起きればまた学校。
専属実地研修生という肩書きだけが増えて、本人は相変わらず学校とアルバイトを往復している。
ただ、一つだけ変わったことがあった。
最近、身体が落ち着かない。
成人した淫魔なのだから、性欲があるのは当たり前だ。
以前から自分で処理することはあった。
けれど、このところ明らかに頻度が増えている。
その夜も、布団に入ってからなかなか眠れなかった。
右を向く。
左を向く。
目を閉じる。
しばらくして、また開ける。
「……寝れない」
身体の奥が疼いている。
明日も朝から学校だ。
このまま眠れないより、さっさと発散して寝たほうがいい。
リオは諦めて身体を起こした。
ベッド脇の収納を開ける。
取り出したのは、実習に備えて以前から使っているディルドだった。
本物はまだ知らない。
学校の実技に備えて買ったもので、使うこと自体には慣れている。
小さなピンクのディルドを掌に乗せた。先が丸く、根本にハート型の台座がついている。
性欲は、精気の空腹と少し似ている。
腹の奥が熱い。身体が、それを使えと催促している。
リオはまず、ディルドを顔の前へ持ってきた。舌先で先端を試し、ぺろりと舐める。味はしない。ぬるいシリコンの匂いだけがした。
それでもリオの舌は、相手の身体を覚えるときと同じ丁寧さで動いた。先をちろちろと舐め、カリに見立てた段差を一周し、平たい舌で側面を下から上へ丁寧に塗り上げる。
「んっ…」
唇で先を包み、ちゅう、と吸い上げる。技術は、道具相手でも真剣だ。唾液を絡めて根本まで濡らし、そのまま深く銜える。
小さいサイズだからこそ、喉の奥まで難なく沈んだ。鼻が台座に触れる。ディープスロートを、リオは息を止めずにこなした。
「んむっ…」
咥えたまま片目を細め、空いた手でローションの蓋を開く。指先に冷たい液を受け、膝を開いて後ろへ回す。入り口にローションを塗ると、指がひとつ、ゆっくり沈んだ。
浅く出し入れする。
慣れた動きだった。
知識はある。身体のほうは、ほぐし方を覚えてしまっている。
一本が滑らかに出入りするようになると、二本目を添えた。
「んっ…あっ」
ディルドを銜えた喉が小さく鳴る。二本で内側を開き、屈伸するように抜き差しする。ローションが糸を引いた。
三本目を入れたとき、リオの腰がわずかに浮いた。
きつい。
それでも止めない。
入れて、抜いて、また入れて。三本が根元近くまで収まるまで繰り返した。
準備ができた、と自分で判断して、リオはディルドを口から離した。糸を引くほど唾液で濡れそぼっている。
ベッドサイドに背を預け、大きく足を開いた。膝が外側へ倒れ、入り口が空気に触れる。
濡れた先端を当てる。
ゆっくり押し込む。
小さな道具でも、奥は狭い。輪が一つずつ開かれていく感覚に、リオの指がシーツを掴んだ。
「んっ…はい、る…」
根本まで沈めた。
ハートの台座が肌に当たる。そこで一度止める。
身体がなじむのを待った。熱を持った内側が、入り込んだ形を少しずつ受け入れていく。
なじんだら、抜き差しを始める。
ゆっくり。
奥まで入れて、半分まで引いて、また奥へ。
きつい奥の方を開かれるたび、腰が甘く震えた。大きく開いた足の指に、ギュッと力がこもる。
「あっ…んっ、そこ…」
片手はディルドの台座を持ったまま、もう片手を自分の先へ持っていく。すでに立ち上がっていた。ゆっくりと、優しくしごき上げる。
精気をくれる相手を少しでも喜ばせるために、リオは自分の身体で気持ちいい場所を探し続けてきた。弱点も、当然わかっている。
睾丸を掌で優しく揉みしだきながら、茎だけを少し強めに擦る。先端は敏感なので、あまり触らない。
先を避けた刺激が、逆に奥へ溜まっていく。ディルドは同じリズムで、きつい場所を繰り返し開いた。
快感がだんだん強くなっていく。
腰が射精を求めて、かくかくと動いた。足の指が反る。ディルドを奥に埋めたまま、茎を扱う手が速くなる。
最後に、避けていた先端へ、かり、と爪を立てた。
「あああん」
短い鳴きだった。
白濁した液が、勢いよく掌の中へ溢れた。指のあいだから垂れて、開いた腿を伝う。アナルはディルドを根元まで咥えたまま、小さく痙攣していた。
終わってしまえば、身体はちゃんと落ち着いた。
リオはディルドを片付け、ベッドへ戻った。
さっきまでの疼きもない。
これなら眠れそうだ。
なのに、布団をかぶって目を閉じても、妙な物足りなさが残った。
「……?」
気持ちよくなかったわけではない。
いつもと同じだ。
ちゃんと発散できた。
それなのに、何かが足りない。
しばらく考えて、ようやく気づいた。
「……精気か」
当たり前だった。
玩具を使ったところで、精気は入ってこない。
今までは、それを物足りないと思ったことなんてなかった。
けれど、一度知ってしまった。
精気を受け取りながら満たされる感覚を。
リオは枕に頬を押しつけた。
次の研修予定は、まだ決まっていない。
カイルドの仕事が落ち着けば連絡が来ることになっている。
「……早く研修したいな」
ぽつりと呟いて、目を閉じる。
欲しいのは精気だ。
卒業するためにも必要なのだから、早く続きをしたいと思うのは当然だった。
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