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Day1-1

「別れたいって‥どうして急に?」 「正直、想像と違ったって言うか‥」 一日の始まりから、最悪な気分だ。 「朝からこんな話してごめんね。じゃあ」 「ちょ、まっ‥」 通話は一方的に切られてしまい、部屋には静寂が訪れる。 ベッドに腰掛けたまま呆然と床を見つめていると、スマホのアラームがけたたましく鳴り響いた。 「はぁ‥」 予備のアラームを止め、重たい腰を上げる。 付き合って半年とは俺の中ではよく持った方だな、と山瀬(やませ) 志乃(しの)は思った。 朝イチの電話で‥なんて、これまでで一番ひどい振られ方ではあったが。 “想像と違う” そう言われたのは何度目だろう。 もちろん、思い当たる節がないわけではない。 いわゆる“オスらしさ”が足りないのだ。 昔から主導権を握るのが得意ではなかった。 学生時代の友人との付き合いを思い出してみても、いつも誰かについていくばかりで、どちらかといえば内気な方だった。 他人に期待される自分と本当の自分のギャップに気づいてはいるが、今でも自分を偽ることができずにいる。 洗面所の鏡に映るのは、電動シェーバーで髭を剃るいかにも“タチらしい”男だ。 180センチという長身なだけでなく、筋肉質ということもあり、クラブやアプリなどの出会いの場ではモテる方だった。 20代前半の頃は有り余る性欲を手軽に発散していたが、最近はそういうこともめっきり減ってしまった。 数分前に別れを告げられた男も、友人と行ったゲイバーでたまたま知り合った相手だ。 交際まで至ったのだから、それなりに好きだったのだと思う。彼の明るさや優しさに支えられたのも事実だ。 しかし、こんなにも簡単に別れが受け入れられてしまう理由もまた、自分の中で答えは出ていた。 「っ‥」 剃り残しがないか確認しながら、顎から顎下へと手を滑らせる。首に手のひらを這わせると、思わず吐息が漏れた。 こんな姿をした男が、まさか_そんな欲望に駆られているなんて。 きっと誰も気が付くことはないだろう。 「朝っぱらから何してんだ‥俺」 我に帰った男は 慌てて顔を洗い、朝の身支度を済ませた。

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