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Day1-2

職場までは電車で15分。 乗り換えがないのが楽で、今の1LDKのアパートを選んだ。外干し派の志乃にとって、日当たりがよく、ベランダがついているのは絶対条件だった。 最寄り駅周辺は不便がない程度に栄えており、そこから徒歩5分と駅近なのも嬉しい。 「おはようございます」 ロッカーで着替えていると、一つ後輩の九重(ここのえ)に声を掛けられた。 「ここで山瀬さんに会うなんて珍しいな」 「今日はちょっと‥寝坊して」 まさか“朝から電話で付き合っている男に振られて傷心していました”なんて言えるはずがない。 「まぁ、僕としては朝からリハ室で筋トレしてる先輩を見て、自己嫌悪せずにいられて有難いですけどね」 ユニフォームのボトムスに乗ったお腹をつまみながら、九重はへらへらと笑う。 朝の筋トレは3年前から始めた。 ゲイのコミュニティでは肉体の美しさが重要視されがちだ。 いざ“そういう”場面になった時に、相手にげんなりされたくはなかった。 「九重くんも鍛えたくなったら指導してあげるよ」 消毒液が入ったポーチを腰にかけ、ロッカーの鍵を閉める。 九重の肩をぽんぽんと叩き、「じゃあお先に」とロッカー室を後にした。 * 「おはよう。あれ、今日のトレーニングはお休み?」 リハビリ室に向かう途中に出会ったのは、同期の小森(こもり)だ。五人いた同期も次々と転職していき、ついに残ったのは俺と彼女の二人だけだ。 「さっき九重くんにも言われたよ」 「だろうねぇ。志乃くん真面目だと思われてるから」 「はぁ‥急に恥ずかしくなってきた」 小森はふふっと笑い、「気にしない気にしない」と男の背中を叩いた。 「そういえば、例の人とはあれからどうなの?」 彼女は職場の中で唯一カミングアウトしている相手でもある。 その後も特に態度を変えるわけでもなく、相談に乗ってもらうこともしばしばであった。 「‥‥」 何も答えないのが答えだと知っている小森は、「まぁ、続いた方ね」と目を細める。 「またすぐ良い人が現れるよ。そうだなぁ‥」 人差し指を顎に当て、少し考えてから彼女は続けた。 「小森占いによれば、今夜だね」 「また‥適当言いやがって」 「ははっ、まぁとにかく行動あるのみだよ」 あっけらかんとした態度が今は心地いい。 何も彼女の言葉を本気にしたわけではないが、今夜は夜の街へ繰り出してみようか。 「おはようございます」 リハビリ室のドアを開け挨拶をすると、今日という一日が始まる。

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