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第37話 夜の向こう側

十二月の終わり。 凪隼人と月城玲士は、仕事帰りに駅から少し離れた通りを歩いていた。 冷えた空気の中を、店の灯りが歩道へ細く落としている。 月城はコートのポケットへ手を入れ、凪はその隣を歩いていた。 「寒い」 「君が薄着なんじゃない?」 「これ以上着たら動きづらい」 「冬に言うことじゃないね」 凪は少し笑った。 信号を渡り、角を曲がる。 その先にある店の前を通りかかったところで、凪の足が止まった。 聞き覚えのあるギターが流れていた。 店内のスピーカーから、音が外へ漏れている。 『夜の向こう側』だった。 凪は何も言わず、そのまま聴いた。 自分のギター。 月城の声。 何度も聴いたはずなのに、外で流れていると少し違って聞こえる。 歩道を人が通り過ぎていく。 誰も二人を見ていない。 曲のことを話している人もいない。 ただ、街の音に混ざって流れている。 凪は隣を見た。 月城も店の方を見ていた。 「やっぱいいな、これ」 月城が少し笑った。 「そうだね」 曲はそのまま続いている。 凪はもう一度だけ聴いてから、歩き出した。 月城も隣へ戻る。 二人の後ろで、『夜の向こう側』がまだ鳴っていた。

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