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第1話 軍議

 長年続いてきた国境付近での魔物との小競り合いは、父祖の代から常に一進一退だったがここ数年、カロン王国は一戦ごとに確かな勝利を積み上げてきた。着実に魔物たちの勢力を削ぎ、彼らを追い詰めつつある。 「陛下。ついに魔物どもを北の川以北に退かせました」  そんなある日、掃討任務から戻った剛剣の騎士アルバートが若き国王に報告した。 父王の病死によって数年前、王位に就いたカロン王国の王ラインハルトはそのとき成人して間もなかったが、それ以来、父の悲願である国を脅かす魔物たちの討伐を引き継ぎ、遂行している。 「ご苦労。今はゆっくり休むがいい」  ラインハルトが言い、アルバートは一礼して踵を返した。 「……ベネディクト。魔物たちの本拠地に総攻撃を掛けることを、どう思う?」  北の川以北には岩山があり、その岩山にある入り組んだ洞穴が魔物たちの棲み処になっていた。岩山の向こう側には海が広がっていて、実質、魔物どもは“もはや後がない”状況だった。 「良いお考えだと思います。ここで安心して放っておけば、魔物がまた勢いを盛り返す恐れがあります。内政が落ち着いており、国が潤っている今こそ行動を起こすべきです」 「私も同じ考えだ。早速、軍議にかけることとしよう」  王の傍に仕える、彼が最も信頼する騎士・ベネディクトの答えにラインハルトは玉座から立ち上がった。      そして急遽、開いた軍議では圧倒的多数で総攻撃することが決まった。出発は十日後。それまでに人選や物資の準備などが進められることとなった。 「兄上……」  ラインハルトが作戦会議室を出ると、通路にはまだ十代の妹姫・シャルロッテが心配そうな面持ちで兄を待っていた。 「ロッテ。どうした?」 「……魔物との決戦に、赴かれるのですか?」 「ああ。何年も民たちを苦しめてきた奴らを今こそ殲滅するのだ」 「……必ず、生きて帰ってくださいね。私の家族はもう兄上しかいないのですから」  母も、父の後を追うように既に亡くなっていた。ラインハルトは微笑んで妹の頭を撫でた。 「必ず戻るさ。私がいない間、城を守っていてくれ」 「……はい」  憂いを帯びた目を伏せ、王妹シャルロッテは小さく頷いた。

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