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:魔王さまを理解させたいっ! プロローグ!
ぎ、とベッドが軋む嫌な音がした。
青白い両手は、男の容赦のない力で掴まれ――そのまま、拘束具でぎりぎりと縛められていく。
ココロニクスは、眼鏡の奥……薄氷の瞳で目の前の男をねめつけた。
アーデルハイド・ハインライン。
ハインラインの名を冠する通り、この国の皇子である。
この国を救った英雄にして、生まれながらの勇者――。
忌み子として生まれ、魔王になるべくさだめられた自分とは真逆の立場の存在。
(まるで、私たちは光と影のようだ……)
場違いな考えがココロニクスの頭を過る。
1か月ほど前に自国であるノクシア王国に、敵国であるアルメリア帝国が攻めいってきた。
アルメリア帝国を率いるのは、ハインライン皇族であり、まさに目の前のこの男……アーデルハイドだった。
もちろん、ココロニクスも魔王という立場上、前線に立ち、応戦したが結果は敗戦を余儀なくされた。
ココロニクス・ド・エヴァンテは敗国奴としてアルメリア帝国に捕らえられた。
運がいいのか、悪いのか。
通例である聖剣による斬首と火刑はまぬがれたものの――。
「ココロニ。まだ自分の立場をわかっていないのか? お前は我が妻として嫁いだ身……もう少し愛想良くしてくれないか。こんなんじゃあ、勃つものも勃たない」
国民を救う代わりに、アーデルハイドの手に堕ちた。
「げ、下卑たことを……っ! 貴様が私を敗国奴として慰み者にするまでは受け入れたでしょう。それさえも屈辱なのにっ、妻など冗談じゃありません」
こうして、慰み者……いわば、性欲処理の道具として扱われることになった。
どうして、自分を討伐した男の妻などという酔狂な提案を受け入れなければならないのか(第一、ココロニクス自身、立派な成人男性である)
悪趣味な役割には甘んじているというのに何が不満なのか。
ははっ、とアーデルハイドが軽やかに笑った。
「いいな。上品な顔と物言いに似合わずじゃじゃ馬だな」
「じゃじゃ馬……!? 貴様、元魔王である私に無礼をっ……!」
「でもさ、」
にこっとアーデルハイドが笑みを浮かべた。
「そういう勝気な態度っていうの? そういうの見せられると虐めたくなるんだよなぁ」
とんでもない発言に、思わず、ココロニクスは、身を捩る。
しかし、拘束具がぎっぎっと鳴っただけで、腕はビクともしない。
冷たい眼差しで、目の前のアーデルハイドを見た。
――この男が憎くてたまらない。
無邪気然とした笑顔で、ココロニクスを踏みにじるこの男が。
毎晩の褥で自分の身体を嬲るように弄ぶこの男が。
現に男は、はっと呼気をひとつ吐いて唇を奪おうとしてきた。
咄嗟に自由な足で蹴りをいれようとしたが、なぜか、足は宙を掻いただけだった。
(ここまでまじないがきいて、弱体化しているとは……!)
自国を襲撃し、あまつさえ、ココロニクスの自由と力を奪ったアルメリアに、この男に怒りが募る。
そんな反感に気がついたように、アーデルハイドは言った。
「魔王さま、どうやら、躾が必要みたいだな」
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