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本編サンプル①※成人向け描写あり

1 せめて、この男にだけは心を渡すものかと誓っていた。 どんなに身体を蹂躙されても、同様に口づけだけは許したくない。 「ほんっとう、わからせたくなるなぁ」  勇者とは思えない悪魔のような言葉が上から降ってくる。  ココロニクスは、きゅっときつく眦と唇を閉じた。  しかし、唾液をたっぷりと含んだ舌がれろ、と自分の造作の薄い口唇を舐めた。 「ほら、魔王さま、クチ開けて……んっ、ちぅっ、ちゅっ、ちゅっ……くっ……♡」 「ん……やぁ……っ♡けしてっ、貴様などに唇を許すものか……んっぐっ!?」  頑なな態度に焦れたのだろう。  アーデルハイドが、いきなり、鼻をつまんできた。 「むぎゅっ、うぅううううっ、んー……んー……っ♡」 (息、ぐるじ……これ、呼吸できませ……っ、ふ、うっ♡ふぅっ♡)  ココロニクスは、可哀そうにふきゅふきゅと鼻を鳴らして、酸素を求めた。  突然、ぱっと手が離され、反射的にクチを開く。  その瞬間、ぬるりとしたものが咥内に滑ってきた。 「んっ……は……ココロニ……かわいい……ちゅむっ、ちゅっ、れるぅ~……れろっぬろっ、ぢゅるるるるるぅうううっ!」  熱く湿っぽい吐息。  とかく熱い口唇と舌の感触。 (今、かわいいっていわれたような……気のせい、か……それよりも……) 「んふぁ……んぢゅろっ、ずるるるぅっ、れろ、れろぉ~……ん、はっ♡きすっ♡きすっ♡も、やれすぅ……♡」 「んー? それっておれとキスがしたくないって意味?」 「は、ふっ……♡そんなの、当たり前れ、すっ……♡んっ、んふうー……うぅううううっ!?」  ざらりとした味蕾が、舌を擦りあげて、触れあっている箇所がただただ、熱い。 それにも関わらず、次第に頭がぼーっとしてくる。 「ほら♡ココロニからもキスして……イヤらしいとこ、見せて?」 「むりぃ……そんなのはしたな……んんっ♡んぢゅっ、れろぬろっ、むぅっ、んむぅううううううううっ♡♡♡」  たっぷりと唾液を送り込まれて無意識に嚥下してしまう。  粘ついたそれがゆっくりと喉を滑りおちていく。 「ん……ぢゅるぅっ、ごくっ、んぐっ、ふー……っ、ふっ♡からだ、熱い……♡」  口元をどちらのものか分からない唾液でべとべとにしながら、ココロニクスは喘ぐ。  いつの間にか身体が火照っていた。  きっと、自分の貌も赤くなって……そう思うといたたまれなくて、俯いた。 「こーら♡」  アーデルハイドが、ココロニクスの華奢な頸を戒めている首輪のその先――鎖を引っ張った。  じゃらっという音がして、強制的に鎖が引っ張られる。 「んぐえっ♡」  ひっくり返ったカエルの鳴き声のような無様な声を出していた。  それだけでも耐えがたい屈辱だった。 (この男は徹底的に暴力で解決しようとしている……なんて野蛮なんでしょう……しかし、力を奪われてから抗う術がないのも事実……)  ココロニクスはくたり、とアーデルハイドの腕にもたれた。  ふと、アーデルハイドがココロニクスに聞こえないように小さく舌を打った。 「えっろ……魔王さま、煽りすぎでしょ……」  彼の腕の中で大人しくしているとなぜか、犬猫のように頭を撫でられた。  実際、この男は自分のことを犬猫のようにでも思っているのかもしれないとココロニクスは訝しんだ。 「魔王さまは敗国奴なんだから、おれを愉しませなきゃだめでしょ? ま、そっちも満足させてあげるけどー?」  そう言って薄絹の着衣超しに手が伸びた。 「え、あ……?」  てんで、頭が役立たずで抵抗はおろか、思考すらおぼつかない。  ココロニクスは、アーデルハイドの腕に手を添えた。 「ん? 魔王様も一緒にやってくれるの? えっちなこと……」 「な――っ、そ、そんなことは言ってな……んっくふぅ……あ、ぁっ、はぁああ……あんっ♡」  まるで、自分のクチから女人のような甘い声がこぼれおちてくる。  もうこの男に触れられてしばらく経つが、自分の身体の変化に慣れない。  否、慣れたくない。 「そこ、やらぁ……やらからっ♡」  ココロニクスは、切りそろえた薄氷の髪を振って、嫌々をした。  そこに――乳首に触れられると身体がびくんっと反応してしまう。  まるで、脳髄から背を激しい電流で撃たれたように、けして、逆らえない快楽に身体が苛まれてしまう。  おまけにむずむずとした掻痒感のような感覚がこみあげてきて、キリがないのだ。 だから、そこに触れられるのが苦手だった。 「えー、ほんとにやなの?」  軽薄な物言いで、アーデルハイドが問うてきた。  これ以上、淫虐にあいたくない一心で、必死に頷く。  懸命な様子のココロニクスを見て、アーデルハイドは笑みを深める。 (魔王さま、怯えた子猫みたいでかぁわいい……もっと声、聞きたい……)  アーデルハイドは、細い猫っ毛を撫でながら、柔肌の透ける着衣の上から乳首を摘まみあげた。 「ひぁあああああぁああああああああああ……んっ♡♡♡」  アーデルハイドの腕の中で、ココロニクスが、華奢な顎をのけ反らせて激しく感じ入る。 「ひ――っ、ひいっ♡ひいぃいいいいいいっ♡しないっ♡しないって言ったのにぃ……♡この嘘つきがっ……♡んんうー……♡」  今度は手管を変えて薄布の上からゆっくりと円を描くようにその箇所を撫でまわされる。  するとざらついた薄布の感触と乳頭が擦れあい――むくむく♡とそこが硬くなっていく。 「いんらん♡」  アーデルハイドが耳元にそう囁きを落とす。  呼気が擦れて耳朶が熱を帯びる。 「あ……っ、あぁ……ち、ちが、私はそんなのではっ!」  けして、ココロニクスが認めたくない事実をこの男はあけすけにしてしまう。  心も、身体も。 「まーだわからないかなぁ? 敗国奴のよわよわ魔王さまはっ! おれに負けたのは国だけじゃないの♡ 乳首も感じて仕方ない恥ずかしいお前もなんだって」 「ち、ちがうっ、ちがうぅ……っ!」  その高い矜持からココロニクスがちがう、ちがう、と男の発言を否定する。  アーデルハイドから見れば、いじらしいが、ともすれば、思い通りにならないこの魔王が憎らしくも感じる。  スッと彼の目が据わった。  強い力でウエストを掴まれ、身体をひっくり返された。 「な、なにを……あ、ひぎぃっいぃいいいいいいいいいいいいいい♡♡♡」  ぱあん。  強か、尻を打擲する音が寝室に響いた。 「あ、ぐッ♡こんな幼子にする仕打ちのようなぁ……ふ、ふざけ……んひぎぃいいいいいいいいいいいいいいっ♡♡♡」  ぺちん、ばち、んっ。  部屋に折檻の音が響く。  アーデルハイド曰く新妻にするにはあまりにも酷な仕打ちである。  白桃のように小ぶりで形のいい尻は真っ赤に腫れあがり、ずきずきとした疼痛に苛まれた。 「……言うことを聞かないなら次は鞭で打ち据えるが?」  背後から告げられた冷たい言葉に、ココロニクスは目を見開いた。 「おれの愛を受け入れるか、折檻されて無意味に身体を傷つけるか10秒数えるうちに選ぶがいい」  いつもの軽薄な物言いとは打って変わって、皇子然とアーデルハイドが告げる。  そして、背後から無慈悲なカウントダウンが始まった。 「10……9……8……」 (この男の寵愛を受けるだなんて屈辱……絶対に厭だ……それだけは耐えられない……だが、拒否でもすれば……)  あの背筋がぞっとする痛みがまざまざと蘇って、ココロニクスは顔を青ざめさせる。 「……5……4……」 (あああ……もう時間がない……私が女人のようにこの男に媚びるなど、厭だ、厭だ……でも、でもっ!) 「3……2……」 (痛いのはもっといやぁ……)  ココロニクスはぎゅっと強く目を瞑った。  そうしないとはらはらと涙がこぼれ落ちてしまいそうだったから。  ただでさえ敵国の勇者にあられもない姿を見られて、嘲られているのに、これ以上、嬲り者にされるのは耐えがたい。  ひくっとココロニクスの口元が卑屈に歪んだ。 「ア……アーデルハイドさまの……寵愛を……いただきたいです……」  ふと、アーデルハイドと視線が出会った。  嗜虐の色を含んだサファイアのような瞳。  それが冷笑を含んでいた。 「それが敗国奴の頼む態度か?」 「え……?」  言っている意味がよく分からない。 「頭が高いと言っているのだが?」  その言葉にさあっと血の毛が引く。 「魔王さまはおれに愛されたいのだろう? 頭を下げるくらい簡単なはずじゃあないか? おれからの寵愛を望んでいるんだもんな」 (それを言わせたのは誰だとっ!)  かっと頬が熱を持つ。  ココロニクスは、目の前の男をねめつけた。  軽蔑をこめて。  すると、がっと強い力で銀の髪を引っ張られる。  頭皮を無理に引っ張られ、ぶちぶちと頭髪の抜ける痛々しい音がした。 「ひっ!」  即座に暴力は抵抗を試みる意思を奪う。  アーデルハイドは、淡々とセリフのような命令をそらんじた。 「ココロニクス。頭を下げろと言った。そして、おれに寵愛されたいと乞え」 「……どうした? 泣きそうな顔をしているが。おれの寵愛を求めたのはお前だろう」  ココロニクスはのろのろと寝台の上で、頭を下げた。 「お、お願いしますぅ……アーデルハイドさまの……寵愛を……敗国奴の私めにくださいぃっ!」  半ば、叫ぶように目の前の仇に懇願した。  無論、恥辱はあった。  一応、エヴァンテの王族に属する自分が敵国の皇子にこんな醜態を晒している――。 はらわたが煮えくり返りそうな怒りがあるが必死に堪える。  今は、力を奪われ、人間以下に退化した身。  振る舞いが気に入らないという不条理な理由だけで暴力を振るわれるかもしれない……ただただ、それが怖かった。 「ココロニ、」  柔和な声が、愛称でココロニクスを呼ぶ。 「……確かに、おれへの忠義と愛を受け取った……ほら、続きを」 「は……はいぃ……」 ……どうして、理不尽を命じておきながら、そんなに傷ついたような貌をするのだろうか。  だが、今ばかりは安堵ばかりが勝る。  これ以上、暴力を振られなかったことに。  一瞬でもそんな恥ずべきことを考えた自分にも、この状況を強いるアーデルハイドにも毒づきたい気持ちだった。

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