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第4話 ニースの丘に建つ・松永ヴィラ

 「ニース支社を作ります」って桐生さんの宣言。 確かにヨーロッパ進出なのだから拠点はいるだろうけどさ。 判断が早すぎて、俺は全く付いていけない。 いや、理事は俺だよね!? でも、これには布石があった。 俺も聞いていなかったんだけど、 「もしエージェンシーと契約が取れたら、ニースに車会社の迎賓館を作ります。 ショールームもスタッフ用の寮も作ります。 敷地が広いので、アニメプラスのスタジオや事務所、宿泊施設を作ってもいいですよ」 松永さんが電話でそう言ってくれたらしい。 ……は? この太っ腹さね。 いや、契約どころか、ただのエージェンシーを招きましたよの話だよ。 迎賓館って簡単に作れるんだ……。 女房が達也だからって、気前が良すぎるんだよ。 しかし契約を取った後、我々が日本に帰って1週間くらいで、松永さんはもう土地を見つけてきた。 「場所はニースの丘の上で、土地は広大です。 道路に面していて大きなヴィラも建っているから、どうぞ皆さんご利用ください」 「では、早速見に行かないといけないですね」と、 すぐ動いたのは桐生さん……ではなく、 達也からも聞いていたらしく、黙って行動していた立花颯太さんと旦那さんだった。 もう~……セレブの行動力はスケールが違う。 どうやら「ニースを拠点にするなら、松永さんのヴィラに甘えてばかりもいられない」と思ったらしい。 聞いた話だと、二人はすぐにニースへ飛んだ。 そして不動産屋に最初に紹介してもらったのは、大きくて古いお城だった。 中はきれいに改装されていたらしいけど、豪華すぎて広すぎたらしい。 その時の動画を颯太さんに送ってもらったんだよね。 もう北原のお兄さんや莉子と桃香がメチャメチャ興奮していた! 結局、2軒目に見た「ニースの丘に建つヴィラ」に一目惚れしたとのことだ。 その場で即決したそうだ。22億だ。 どうよ、この資金力! そこは土地が結構広くて、奥には3階建てで、8室のスタッフ用アパートメントまであるらしい。 ニースの海が一望できるらしい。 しかも、専属のシェフとメイド付きだ。 え、どういう世界なの?? 専属? 建物に人がセットなの? 向こうはそういう次元の世界なのかなあ……。 この驚きの話を兄さんや莉子、桃香にも聞かせてやった。 「うっそ―!!」と叫んだのは、もちろん莉子だ。 彼女はとにかく興奮しやすい。 「私、見た~い!」と桃香。 「へえ~、そうなんだ。面白そうだね」と静かな興味のお兄さん。 俺は調子に乗って胸を張った。 「あのさ、俺もアーティストとしてエージェンシーと契約したからさ。 今度からアニメプラスのニース支社の理事として、どんどんニースに行くから!」 すると、 「ふ~ん。そうなんだ……一人で行くんだね?」 お兄さんが、ちょっと寂しそうに冷たく言った。 あ、しまった……俺、浮かれてた。 お兄さんのいない夜を、フランスで一人で過ごさないといけないなんて……。 失敗した……。馬鹿だった。 コンサートになんて出るんじゃなかった……! 俺はお兄さんと離れるのが一番つらい。 しかし、なぜこうなったのか?はこれから順番に話すけどね。 (注・次の更新は11月2日です)

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