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第1話

「一緒に帰る?」 放課後の廊下で声をかけると、湊は一瞬だけこちらを見て、小さくうなずいた。 それだけ。いつも通り。 「大輝も帰るよな?」 俺が何か言う前に、湊がそう言った。 言い方は確認みたいで、でも決定事項みたいでもある。 「おー。帰る帰る」 大輝は軽く手を上げて、当たり前みたいについてくる。 三人で並んで歩くのも、もう見慣れた光景だ。 校門を出て、坂を下る。 俺が話題を振る。 「今日の英語、だるくなかった?」 湊は少し考えるように視線を落として、それから曖昧に笑った。 答えない。 「だよな。あの小テスト無理ゲー」 代わりに答えるのは、いつも大輝だ。 湊は横で聞いてるだけ。 うなずいたり、たまに小さく笑ったり。 それが嫌なわけじゃない。 大輝は話しやすいし、話も合う。 ただ―― 俺が湊の方を見るたび、目が合わない。 合っても、すぐ逸らされる。 俺、何か変なこと言ったかな。 誘い方、間違えた? 「じゃあ俺こっちだから」 分かれ道でそう言うと、大輝が「またな」と手を振った。 湊は小さく会釈しただけ。 数歩歩いて、なんとなく振り返る。 少し距離が空いた瞬間、湊が大輝の方を見て、何か言った。 声は聞こえないけど、大輝が笑う。 その笑いにつられるみたいに、湊も笑った。 ――あ、笑うんだ。 俺といるときより、ずっと楽しそうだ。 胸の奥が、ひっかかる。 言葉にならないまま、歩き出す。 ……まあ、そうだよな。 どうせ俺のことなんて、好きじゃない。

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