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エロゲライターの俺がメス○キみたいな性格の地雷系厄介オタクおにいさんとオフ○コする話プロローグ
それは、ある年の冬の大祭典のことだった――。
「すみませーん! まだ、新刊ありますかーっ!」
そろそろ、人も捌けてきたし、撤収するかという頃合いだった。
バタバタと勢い良くひとりの青年が、スペースにかけこんできたのは。
俺と売り子はその姿を見て、ぎょっとする。
「……あと一冊だけならありますけど」
怯えながら、そう伝える。
すると、きれいな顔をした青年がばああっと表情を輝かせた。
「よかったー! 先生の新刊が買えなかったら、ぼく、後悔のあまり死んじゃうところでしたっ!」
……その言葉にそんな大げさなと思いつつ、疑問を尋ねてみる。
「きみ、冬の大祭典は初めて? 一応、日本で一番大きな同人即売会だよ? 夏と冬は、いわばオタクにとってマストイベント」
「はいっ! 初めて来ました~」
予想通りの答えが返ってきた。
……だろうな。
と俺と売り子は目配せする。
だって、その青年は見るからに派手な見た目で……とても、冬の大祭典に来るような人種とは思えなかった。
金髪にピンクのメッシュ。
耳には大量のピアス(痛くないのだろうか)
ゴツい指輪をじゃらじゃらとつけていた。
いかにも渋谷とか新宿の猥雑な街が似合いそうなTHE陽キャといった風貌だ。
「……ぼくの顔になんかついてますかね?」
『ぼく』という一人称もなんか、うさんくさいし。
青年は、きょとんしていた。
「じゃあ、500円ね」
金銭と本を交換して、これで変わった闖入者も帰るだろうと思っていた。
青年はきゅっと唇を窄めて、なにやら、もじもじしだした。
……なぜか、顔が赤い。
「あ、あの……っ! あ、あなたが……っ、どゅんどゅん先走りマン先生ですかーーっ!?」
そして、あろうことか、クソデカ声で俺のPNを呼びやがった。
「そんな大きな声で呼ぶんじゃあないよ!」
チラチラと周囲の視線を感じて恥ずかしい。
……まあ、この名前をつけたのは他ならぬ自分なので自業自得なのだが。
それにしてもTPOというものがあるだろう……と内心で呆れる。
そんな感情をおくびにも出さずに、俺は如才なく笑う。
「うん。俺がどゅんどゅんね。きみみたいな若くてきれいな子が知っていてくれて光栄だよ」
「き、きれい……ぼ、ぼくが……っ! どゅんどゅん先生に口説かれた!? お、推しに!?」
青年は、はわわと口を抑えて、うろたえだした。
(ん? 今、推しって言ったか?)
「いや、口説いてないけど。ていうか、きみ、俺のこと知ってるの?」
「ぼく、蜜って言います。蜂蜜の蜜で蜜。昔から先生のファンっす!」
字面にすると蜜、か。
変わった名前だなーと思いつつ。
なんか、意外な情報が聞こえたような気がする。
一拍遅れて、俺は驚いた。
「え、蜜くんってエロゲとかやるの!? い、意外だな……」
俺の本職は美少女ゲーシナリオライターもとい、エロゲライターである。
「はいっ! あ、でも……せんせいの作品だけっすけど。処女作の永久監禁痴漢トレインのキララルート書いてたときから好きっす! あと、艶事の因習村とかもお気に入り。最新作でメインやってた輪廻ノエロチシズム~官能ノ螺旋~とか、エロシーンだけじゃなくてシナリオでも泣きました……ちなみに割れ厨じゃないっす。アイツらは悪なんで」
俺はほうっと息をつく。
シナリオ協力で書いたヒロインの個別ルートから、メインシナリオを任された最新作まで追っている……見た目に反して熱心なファンのようだ。
仕事とはいえ、やはり、血反吐をはきながら書いている作品である。
それもヘビーユーザーのファンに会えるなんて嬉しい。
「ずいぶんと熱心に追ってくれているんだね。嬉しいよ」
「は……はい、だからお会いできて感激してましゅ……ぐすっ、うぅっ……うわああああーん!」
いきなり、蜜くんがスペースの前で泣き出してぎょっとした。
さすがに人目が気になるし。
まるで、俺が泣かせたみたいじゃないか……!
「ど、どうしたの?」
「い、いえ……ぐずっ、長年の推しに会えて感激しちゃって……つ、つい涙が……ひっく、ひうっ」
あ、半分くらいは、正解だったんだ……。
この仕事をして長いが――エロゲライターに会って、泣き出す人間を初めて見た。
困惑はするが、職業冥利に尽きるということで片づけておいた。
「あ、あの、厚かましいんれしゅけど……サインと握手、いいれしゅか……?」
くすん、と鼻を啜りながら蜜くんが、いわゆる、ファンサービスだろうか……を求めてきた。
「もちろん。初めての冬の大祭典だって言うし、いい思い出を……ていうか、他のサークルは回れた?」
新刊にサインを書きながら世間話をしてみる。
「いえ、どゅんどゅん先生に会えればそれで充分なんで……あ、あと、握手も」
……意外とこの子、抜かりないな。
最近の子ってみんなこうなのだろうかと思いつつ――。
「はい。応援してくれて、ありがとう」
手を差し出すとしっとりとした手が、握ってきた。
同じ男の手なのに、どうして、こんなにやわらかいんだ?
それになんか、いい匂いがするし。
「やっぱ、先生ってギャルが好きなんですか」
おず……と蜜くんがそう聞いてきた。
「うん……まあ、好きかな」
……あまり、長引かせたい話題ではない。
「やっぱり! キララちゃんとか最近だと夏輝ちゃんとか! 先生ギャルフェチなのかと思ってました!」
俺の書いたヒロインたちを羅列して、一気に蜜くんのテンションがあがる。
この子もギャル男っぽい見た目だし、もしかして、ギャルが好きなのかな……?
「まあ、一応、仕事でもたくさん書かせてもらってるしね」
「はー、納得っす。さすが、プロ。それに、推しのどゅんどゅん先生とお会いできてサイコーでした。じゃあ」
蜜くんはもう泣きやんで、満面の笑みを見せた。
(そろそろ、帰るのかな……嵐のような子だったな……)
リア充故か、テンションの高い子だったけどいい子だったな。
「ねえ、せんせ?」
ぽそ、と俺に聞こえるだけの声量で蜜くんが囁いてきた。
「この後、ぼくとオフパコしませんか♡」
……え? 聞き間違いか?
今、オフパコとか言ったか? なんか、すっごいニコニコしてるけど。
それにコイツ、男じゃあ……。
「Xにオフパコ募集って書いてありましたけど」
「Twitterな!」
とっさに言い返していた。
オタク故にTwitterのことをXと表現するのは矜持が許さない。
「……なんでもいいんすけど。でも、書いてましたよね?」
そこまで見られているのか。
「……ああいうの、ネタだからね? ほ、本気なわけ――」と言いかけると。
にまーっと蜜くんが悪い顔をした。
「あ、もしかして男じゃ勃ちません? どゅんどゅんせんせ、プロのエロゲライターなのに?」
突然、人が変わったように挑発的な発言をする蜜くん。
……もしかして、こっちが本性なのか!?
「……それともオタクの人ってこーゆーワンナイト的なのに日和ったり? どゅんどゅんせんせ、THEオタクって感じだし」
盛大に煽られてむかっ腹が立った。
――そして、結論から言うと……俺は、渋谷、神泉のラブホにまんまと連れ込まれたのだ。
(どうして、こうなった……? あとで売り子に謝らなきゃな……全部、任せてきちゃったし……)
けばけばしいピンクの内装の部屋を遠い目で見ながらそう思うのだった。
隣には、蜜とかいううさんくさいギャル男がいる。
どうやら、俺は、これからこの男と『オフパコ』するらしい……。
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