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第23話 雨の火曜日2 ★
電話を切ってしまったら、次は繋がらないような気がする。泣き声を聞きながらコンビニで買い物を済ませた。
雨が傘に当たって、バタバタと激しく鳴る。肩やズボンに水が跳ねるのがうっとうしいが、のんびりする事態ではなかった。
スマホの向こうのしゃくり上げる声が、ようやく落ち着いた。
「木之内、オートロックを開けて」
「……」
音が鳴って、エントランスの扉が開く。
中庭を右に進み、階段を上がって突き当たりのドアに着いた。
多分、ドアのそばにいるだろう。
インターフォンは押さずに、ドアをノックする。
しばらくの後、ドアがゆっくりと開いた。
あの甘い香りが漂ってくる。
ノブを引いたら、想定外にゴンと衝撃音が響く。ドアガードがかかっていて開かない。
「上の鍵も開けて」
「…ほんと…」
ぐずぐずと鼻を鳴らしながら、布団にくるまった木之内が話す。
「…ほんと、ごめん…」
無いことにしたのに、と言って、大粒の涙が溢れた。
「謝るなよ」
これからも謝らなくていい、と伝えたら、小さくうなずいて、ドアが閉まった。
香りをかいでも、前のような衝動は起きなかった。
再度、ドアが開く。お邪魔しますも言わずに入って、視点の少し下にある頭に口付けた。
バッグを床に置くと同時に、木之内がぎゅっとしがみついてくる。
両腕のリーチすべてで、木之内を強く抱きしめた。
木之内の顎を上げ、上気した顔に口付ける。額も頬も、瞼も熱い。
薄い唇を撫でて、食らいつく。舌で口腔を確かめていく。木之内の舌に絡ませる。
そうしたらもう木之内は体を大きく震わせたけど、吐精はしなかった。
「ああっ、もうっ、つらい…」
「出ないのか」
「そう…。ずっと出せなくてつらい」
先週、自分でしなかったからかな、と言う。
しばらく通常運転の様子だったのは、自己処理していたからか。それを言ってしまうところがまた可愛いらしい。
可愛いらしい?
まあいいか。
「自家中毒みたいなもんか?」
「わかんない…う…」
木之内の腰をホールドして、またキスをする。そのまま靴を脱いだ。
木之内を連れてキッチンに入り、キスをしたまま、コンビニの袋からハーゲンダッツを出し、冷凍庫に投げ入れた。
冷蔵庫を開けて、残りを袋ごと突っ込む。
熱い息も絶え絶えに訴えかけようとするのをまた塞いで、木之内の部屋に向かった。
ベッドに座らせる。
濡れたシャツとズボンを脱いで、横にかけたら、木之内が頭をもたせてきた。
シャツを脱がせて、下も引き下ろしてやる。
腫れ上がったようなものがぱんと弾けて、木之内がイッ…と叫んだ。
「これは…辛そうだな」
「う、うぇっ、う…」
子供のようにしゃくり上げる。
手で触ったら、痛い…とぐずった。
「なるほど…」
木之内の首筋をかいで、それから下に跪く。
え、という表情になるのを見てから、口に含んだ。
「まっ、まって! あ! あ!」
汚いから、嫌だ、止めてと叫ぶのを聞こえないふりして、少しずつ深く咥えていく。
木之内の足があまりに跳ねるので、上に腕を置いて押さえつけた。
「あっあっ、あ! 違う、したい! 欲しいんだって!」
直球で止められる。
それをなお無視して、水音を立てて、根本からしっかりと舐め上げる。
「いや、ああっ、いやだあ…」
そうは言っても、腰が揺れてしまっている。過敏に叫んでいた声が、段々と甘くなる。
「あっ…あっ…んっ、やだあ、あ…」
先端に舌を沿わせて舐めると、痺れるような嬌声を上げた。
顔を上げたら、お、お願いだから…と言ってから、目を硬くつぶった。
震える足をベッドに上げ、覆い被さる。でも動かないまま、紫に染まった瞳が見えるのを待った。
雨の音はどんどん強くなっていく。
窓やベランダにバチバチと当たる音が、室内に響いていた。
香月があまりに動かないから、不安になって目を開けた。
静かな表情で見下ろされている。
品の良さそうな、綺麗な形の口が開いた。
「でも、無かったことにはしないからな」
「……」
「今度は無かったことにはさせない」
2ヶ月前のことを言っている。睦月が助けてと叫んだ夜。
「いいな」
念を押される。
つらいから早くしてとばかり思っていたけど、涙が引っ込んだ。
香月をよけて、制御のきかない体をどうにかこうにか起こす。
香月の目が揺れていた。不安そうな心を湛えているようだった。
「あれは…」
「うん」
「無かったことには、しない…」
「うん」
「こないだは…ありがとう…」
少しだけ、ホッとしたように顔が緩む。
「色々と、助けてくれて、ありがとう」
それはいいんだ、と言われる。
拙い言葉しか出てこない。
「香月、したい」
ベッドに置いた手に、大きくて厚い手が重ねられる。
「俺も、お前が欲しい」
この関係性はどう表現されるのだろう。
クラスメイトというより少し近くて、友達というほどまだ知らない。セフレというには助けられすぎていて、まだこの呼び名を知らない。
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