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第1話

1話【現在】話がしたい 医務室付近で人だかりができている。なんだろう。少年アシェは今日の朝の仕事を終えて、執務室にいるヴァルドのもとへ行こう……そう思っていたところで、人だかりを発見する。執務室へと行く前に、やっぱり興味があるので覗いてみることにする。 「仕組みはよくわからねえけどすごいな!」 「街に張り巡らされている魔石の力の応用だよ。この魔石に健康状態を見るための魔導回路を組み込んだんだ。 今後は魔石に魔力を補給するだけでいい。健診の時期に自分で入ってもらえれば、僕の仕事も減るというわけだよ」 「やっぱりよく分からないけどすごいな」 「……もう無理に理解しなくてもいいよ。ともかく改築してくれて助かったよ。そういうわけだからみんなに伝えておいてくれ」 ルシアンとザナックがなにやら部屋の前で話をしている様子だった。アシェは人だかりの隙間から顔を覗かせる。ルシアンはそれだけ伝えると医務室の方へと向かっていってしまったようだ。その小部屋は一見普通の小さな部屋に見えるけど……。 「アシェくん。入ってみるか?凄いぞ」 「ザナックさん?」 アシェはザナックに腕を引かれて小部屋へと案内される。他にも見ていた人がいたのにいいのだろうか。しかし並んでいたわけではないのかもしれない。遠巻きに見ているだけだ。 アシェは小部屋に入り扉を閉めると、左手につけられた魔石が反応し、身体を優しく光が包む。身体中の光が消えるのを待ってから再び外に出る。すると左手に装着された魔石から、身体の健康状態が映し出された。 「わあ……!」 「すごいだろ!って俺はこの小部屋の改築をしただけだけどな」 「ザナックさんもルシアン先生もとってもすごいな」 「こんなの見たことねぇよ。さらっととんでもないもの作るんだよな。あいつは」 アシェの後に続いて、安心したかのように健診をする時期が近づいてきた者や興味がある者たちが次々と中へと入って行く。 これも定期的に健診のデータを渡すよう上からの指示が増えたため、面倒になったルシアンが作り出したものだ。 いつも忙しそうにしている姿を見ていたからか、アシェは尊敬の眼差しで医務室の方へと目を向けるのであった。 __ ルシアンは若干いつもより上機嫌であった。 大仕事を終わらせ、いつもより自分の時間を増やせる。溜め込んでいた魔導書を読もうか、先日手に入れた薬草を使って何か試してみようか。 目についたものに手を伸ばそうとすると――ノックの音がする。 大抵の人物は、先ほどの陣の布かれた部屋で足止めすると思ったけれど……。 顔を向けると、そんな予感はしていたが、見慣れた人物であった。 「あの部屋凄いっすね。みんな驚いてましたよ!」 にこにこと笑みを浮かべて入ってきたのは第三騎士団副団長である、リオットだ。 第三に来て早めに打ち解けられたのは、彼のおかげでもあるかもしれない。 積極的に誰かと打ち解けたいわけでもないが、こんな性格だ。平穏であるに越したことはない。 「……ありがとう。君も見に行ったらどうだい?」 「人だかりがなくなったら見に行きます」 「それで。何の用?」 「冷たいっすね!出て行けオーラを出さないで下さいよ」 「分かっているじゃないか」 こんなに頻繁にやってくるのも、雑にあしらうのもリオットを相手にする時くらいである。 感謝の気持ちはあるものの、それとこれとは別である。 そして、もう1つ。 ずっと返事を保留にしている事が、あるのだ。 「それで、何の……」 何となく毎回気まずさを覚えて追い出そうとしてしまう。こんなの、ただ返事を先延ばしにしているに過ぎない。 「今日は見回り前に、あの部屋を作った功労者を褒め称えに来ました!」 予想外の返答に思わずルシアンは目を丸くする。 ごちゃごちゃと考えていた自分が馬鹿みたいだ。それに今回は自分のためにやったことなのに。 返答のないまま、ルシアンは椅子から立ち上がり、医務室の奥の小部屋へと向かっていく。 「ルシアンさん?」 「……コーヒー飲むかい?」 「飲みます!」 今日は一仕事終えて気分がいいから。 少しくらいなら話に付き合ってもいいんじゃないか。そんな気分になるのであった。  

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