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第16話

16話 割ってみた 午前の任務を終わらせて昼食を運びつつ部屋に戻る。帰ったら部屋にルシアンがいるのは、なんだか落ち着かない。 団員たちに儚い女神だと噂されている事実を思い出して少しおかしな気分になる。 女神だなんていうのなら、ベッドの件も『一緒に寝る?』とか言ってくれてもいいのに―― 「戻りましたー」 「う、わ……」 帰宅早々なんだかドン引きするような声が聞こえて、思わず思考が漏れたのではないかと身体をびくりと硬直させる。いや、さすがにそんなはずはない。 部屋に入っていくとルシアンはベッドの上で両手を粘液まみれにさせていた。 ……どういう状況? 「あ、あぁ。おかえり。暇だったから君が好きに使っていいと言った魔石を割ってみたんだ。そうしたら中から粘液が出てきてしまって」 「割ったんですか……」 暇つぶしにと思って、自身で作っておいた魔石をルシアンに渡していた。好きに使っていいとは言っていたが、まさか割られることになるとは……。 「本も全部読み終わってしまったからね。 魔石に魔力を通してみたけど蒼い炎は見られなかったから、割ってみることにしたんだ」 「そうですか……」 割っても構わない、構わないけども、大事に取っておくなんてことはしないようだ。 そんな期待はしていなかったけど。 「……手を洗いたいんだけど、手伝ってもらえるかな」 「はいはい」 身体を支えろということだ。ベッドの方へ向かい、肩を貸す。本当にまだなかなか力が入らないようだ。洗面台に連れて行く途中で、力の抜けた手がリオットの服に触れる。 「わっ。ちょっとつけないで下さいよ!」 「ごめんね。わざとじゃないよ。それにこれは君の魔石から出たんだから、君の粘液でもあるんじゃない?」 「そ、……な、ち、違いますよ」 「何だい?冗談だけど」 意味のわからない紛らわしい冗談なのかよくわからない発言はやめてもらいたい。洗面台に連れて行き、なんとなく扉を閉める。 しばらく経って水音が止まったかと思うと、ドサリと音がした。急いで扉を開ける。 「えっ、大丈夫っすか!?」 「うん。……でもまだ足の力が入らないみたいなんだ」 扉の中には尻もちをついたルシアンの姿があった。 まだこんなに回復しないだなんて。 不摂生にもほどがあるような……。 「ありがとう」 再び肩を貸すと素直にお礼を言われる。 常にしおらしければいいのに。なんてリオットは思うのだった。  

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